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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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俺だけの景色

 ……ハッ!? 

 今はどこ? 私はいつ? ここは誰?

 ……当たり前に睡魔に負けたわね。

 今何時……?


「八時か……そんなに時間経ってないな……」


 スマホで時間を確認し、安堵。

 ――ん? 待て待て。


「時間の引き延ばしがもう行われてるなら割と寝たか?」


 感覚が分かんないな。

 ちょっとスマホのストップウォッチを起動してっと……。


「うっわ。こうしてみるとマジで引き延ばされてるのが分かるな」


 起動したストップウォッチ、小数点以下の時間の進みもハッキリ分かるくらいには動きがゆっくり。

 という事は、しっかりと時間が引き延ばされているという事。


「んー……さて、何をするか」


 大きく伸びをして体を起こし、何をするかを考えて……。


「おー……これが異世界の星空か」


 とりあえず、頭上に広がる満天の星空を眺めてみる。

 月は満月、星は散りばめられているものの、当たり前に俺が知る星の配置ではない。

 オリオン座の特徴的な三連星は見つからないし、かと思えば五連星くらいのは見つかるし。

 冬の大三角じゃなく、どう見ても四角形とか五角形とか見つかった。

 やっぱ異世界の星空は違うんだねぇ。


「そういや、夜用のビュッフェがあるとか言ってたな」


 意識が沈む前の記憶を辿り、ビオラさんの言葉を思い出す。

 

「何があるかな♪」


 とりあえず寝起きのホワイトコーヒーはマストでしょ?

 で、軽めに何か食べたいな。お腹はそこまで減って無いから。


「メレンゲにドーナツ、チョコレート……」


 どれも重いスイーツが並ぶ中、


「ん、クラッカーとコンフィチュールとかいいじゃん」


 ジャムよりも果肉感の残るコンフィチュール。

 それとビスケットの組み合わせを手に取りまして。


「白桃のコンフィチュールか」


 クラッカーに乗せて、パクリ。

 ……んー。サッパリ、そして瑞々しい白桃の果肉が、程よい甘さでしっとり作られていますわね。

 ヨーグルトとかにも混ぜたいかも。

 クラッカーでも十分美味しいけどね。


「そしてコーヒーが美味い」


 安定のホワイトコーヒーの美味さよ。

 マジでいつ飲んでも挽きたててでいい香りなんよな。

 異世界のコーヒー、侮れないね。


「……ん?」


 で、ビュッフェで他に何かないかなーと見ていたら、スイートクラス以上のお客様限定というコーナーを見つけた。

 もちろん確認。

 なんてったって特スイートクラスですからね、ははは。

 ――ミステリーツアーに選んだら勝手に割り振られてただけなんですけれども。


「あー、ワインか」


 で、その限定コーナーに置いてあったのはワイン。

 名前はヴァエリス・ニマリス。

 ……ちょっと初めましてですね……。


「まぁ、限定って言われてるなら飲むか」


 日本人を釣るための三つの言葉、『期間限定』、『数量限定』、『今、一番売れてる』、『有名人絶賛』。

 後はご当地限定とかもか。

 ……全然三つじゃないな。


「えーっと……」


 ビオラさん召喚の為に指パッチン。


「お呼びでしょうか?」

「このワインを今から飲むんですけど、何と合わせるのがいいです?」

「……そうですね。生ハムやチーズ、あと、チョコレートケーキも合いますよ?」

「じゃあ、無難に生ハムとチーズでいただきますか」


 という事で生ハムとチーズを取り……。

 なんか、生ハムだけでかなりの種類があるんだけど……。

 とりあえずプロシュートと、ハモンセラーノもらお。

 これ多分あれだよね? プロシュートやハモンセラーノそのものってわけじゃなく、異世界的に総分類されるような生ハムって事だよね?


「チーズはどれが良いとかあります?」

「んー……難しいですね」


 難しいんだ。


「おすすめはこれですね」

「ゴルゴンゾーラチーズ……ですね」


 まぁ、ビオラさんが言うならあってるんでしょうよ。

 いただきますか。


「ちなみにですが」

「?」

「そちらのワインは星空を投影しながら飲むのが一般的です」

「???」


 なんて? 星空を投影する?

 どういうこと?

 と、俺がビオラさんの言葉を理解出来ずにいると。


「失礼します」


 ビオラさんがグラスを取り出し、ワインを注ぎ。

 空へと向かってワインをかざす。

 そして、


「このように、星空にかざすと、かざした時の風景をそのまま投影します」


 見せられたワインには、しっかりと謎の五連星が浮かんでおり。


「まろやかでしっかりとした渋味を感じられる良いワインです。チーズに合いますね」


 と、グイとワインを飲み干して感想を言うビオラさん。

 なんというか、エルフって何でもありなんだなぁと。

 注いだ時の空の風景を表す飲み物だったり、星空を投影するワインだったり。

 ははーん、さてはもしかしなくてもロマンチストだな?


「星空を投影した後、気に入らなければスワリングを右回し、左回し、それぞれ二回行えばリセットされます」

「ほう」

「さらに、投影は何度も重ねられるため、ワインの中に天の川を作ることも可能です」

「ほほう」

「ぜひ、自分の好みに合う星空を創り出してください」


 では、失礼します、と客室を出ていくビオラさん。

 ……ちょっと、いやかなり面白そうじゃん。

 それじゃあ、自分だけの星空ワイン、作っちゃいますか!!

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