あいやしばらく
異世界にもキムチがあるのか……。
勝手なイメージ、香辛料とか貴重な感じがあるんだけれど。
いやまぁ、別にあってもいいんだけれどさ。
「また美味いし」
異世界のキムチ、かなり海鮮系の出汁が効いてる感じだった。
確か、本場韓国のキムチにはエビだの牡蠣だのが入るんじゃなかったっけ?
白菜と唐辛子だけじゃないんよな。
異世界のキムチも恐らくそんな感じだと思われる。
エビや牡蠣の存在は確認出来ないけれど、味はしっかり感じるからな。
「米に合う」
で、当然そんな味わいのキムチが米に合わないはずもなく。
キムチだけでご飯一膳いけるな。
あと、味噌汁。
「お待たせしましたー、次のお肉ですー」
「ありがとうございます」
「そちら、今まで以上にしっかりと焼いてお召し上がりくださーい」
という事で持って来られたお肉は……。
「タン、だよな?」
見た目は確実にタン。
ただ、それがタンじゃない可能性があるのが異世界なんです。
まぁ、言われた通りにしっかり焼きますか。
「焼いたら反る所とかもタンっぽいなぁ」
焼いた感じもタンらしさが消えず、だったらレモンダレで頂くでしょって事でレモンダレで。
いただきます!
「……え、うっま」
美味い。
食感はしっかりタンだけど、タン独特の食感の固さはあまり感じられない。
どちらかと言うとタン元とかの食感だね。
で、まず旨味が凄い。
噛んだ瞬間に溢れる肉汁もだけど、そもそもの肉自体の味が濃いね。
そこにサッパリしたレモンダレとの相性が最高で、口に肉が残ってる間どころか、飲み込んだ後の余韻でも米が進む。
仕上げにコーラで洗い流せば、この肉だけで大満足って寸法よ。
この肉を食べた後だと、今まで出て来てたのは前菜だったのでは? と思えて来るな。
「何の肉か分からないから聞こう」
追加注文の事を考えると肉の名称は知っておきたい。
「意外と普通にタンだったりして……」
と、二切れ目を口に入れた瞬間、ちょっと嫌な想像をしてしまい食べる口の動きが止まる。
――何の舌だ?
よく分からん動物系の魔物とかならまだいい。
ただ、オークとかトロールのタンだったとしたら……?
流石に亜人系の魔物のタンだったら俺は嫌だぞ?
――頼む! せめて何かしらの動物系の魔物の舌であってくれ……。
「次のお肉を――」
来た!!
最悪の想像のせいで橋の進みが悪くなっていたところに店員さんが来た!!
「これってなんのお肉ですか!?」
「?」
急に言われて驚いただろうが、頼む! 俺にとっての死活問題なんだ!!
「ジライヤの舌ですね」
「……ジライヤ?」
……?
その名前で検索にかかる魔物の姿が、どうしても某忍者漫画のエロ仙人なんだけど?
しかも仙人モード中の。
「……あ、蛙」
そこまで想像して辿り着いた答え。
天地明察! ジライヤは――蛙の魔物です。
蛙の舌かー……。
当然ながら食べたことはないね。
でも、亜人系の魔物の舌でなくてホッとした。
ジライヤのタンは美味しいとインプットしておこう。
――今後使う情報かは分からないけど。
「そのジライヤのもも肉になります」
で、次に持って来られたのは蛙のもも肉……。
足の肉でいいんだよね?
色味は綺麗なオレンジとピンクの中間みたいな色。
うん、スライスしたもも肉って感じですが……。
「とりあえず焼くか」
網に乗せて、焼くこと数分。
お肉は火が通って綺麗な青色に。
いや、そうはならんやろ……。
なっとるやろがい。
「青……青かぁ……」
よりによって食欲減退色の青かよ。
いやまぁ、食べはするんですけど……。
「んま」
で、美味いと。
蛙の肉は鶏肉みたいとは言うけれど、このジライヤのもも肉は鶏肉よりももっといいね。
噛むとシャッキリ、ぷつぷつと肉の繊維が歯で切れていく感じが心地いい。
肉汁はあるけど溢れるって程ではなく、噛むと滲む程度。
ただ、肉汁の旨味はしっかりあって、肉よりは魚の旨味の方が近いかな。
んでちょっとほろ苦い。
なんでか分からないけど。
「ジライヤって美味いんだなぁ……」
ご飯とも合うし、キムチとも合う。
キムチの旨味に負けない肉ってだけで、どれだけ旨味が強いか分かって欲しい。
「辛みダレと滅茶苦茶合う」
キムチに負けないなら辛みダレにも負けないだろって事で付けてみたら、まーじで美味い。
というかジライヤ肉と辛みの相性がすこぶるいい。
米が! 美味い!!
「そういや、米に違和感が無いな」
海外の米と日本のソレは当然違うもので、日本の米に慣れてると海外の米に違和感を覚えるものだが……。
この異世界で食べる米、普通に受け入れられてるな。
つまりは現代二本程度には美味しいという事だ。
「香りがどうとか、その辺は分からないけれども」
結局は美味しく食べられるのが一番なわけ。
つまるところ、異世界の米は美味いって事。
「つぼ漬けスネークでーす」
……はい?
今、つぼ漬けカルビみたいなノリでスネーク言うた?
つまり蛇って事?
――で、味は?
「これも普通に焼くんです?」
「かなり長いので、魔法かこちらのハサミを使って適度な大きさにお切りくださーい」
という事で渡されたつぼから蛇肉であろう物をトングで持ち上げると……。
「なっが」
たっぷり一メートルはあろうかという肉が登場。
これを魔法かハサミで切れ、と。
断腸の思いでハサミで切るか。
魔法で切れるなら切りてぇよ、俺も……。




