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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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引っ搔き回される。

 ヤバい。

 めっちゃ楽しい。

 ちなみに二発目でしっかりワイバーンの的を撃ちぬ――けませんでした。

 というか、明らかに的が良し持ったような動きをして避けてきた気がするのは気のせいかしら?

 店員エルフを見るとあからさまに顔を逸らして口笛吹いてましたけれども。


「今の惜しかったなー」

「あの的、魔法避けなかった?」

「そら正面から魔法が来たら避けるやろ」

「生き物じゃなくて的ですよね?」


 なんてやり取りの後、再び肩に置かれる手。

 さて、次はどんな詠唱で放ってやろうか。


「天光滿る所に我は在り、黄泉の門開く所に汝在り、出でよ、神の雷!」

「何!? その術は!?」

「ぶっ放せ!!」


 某RPGでお馴染みの詠唱と、知ってか知らずか完璧な合いの手を入れてくれた店員エルフ。

 そして、


「インディ〇ネイション!!」


 術の名前を叫ぶ頃には、既に火球は俺の手から放たれていて。

 さっき外したワイバーンを無視し、ひと際大きな的のオークへと吸い込まれ……。

 爆ぜる。

 くーっ……気持ちいい……。


「おもろい呪文の詠唱やな」

「馴染みがある詠唱なんですよ」


 自分の放った魔法で的を粉砕した。

 その余韻に浸りつつ、店員さんと会話。

 まーじでストレス発散になるわ、これ。


「思ったんだけど」

「なんや?」

「これ、旅行者に人気なんです?」

「人気やで?」

「……ドワーフとかに?」


 と俺が言うと、一瞬キョトンとする店員エルフ。

 そして、


「いやいや、アイツらは魔法なんぞに微塵も興味があらへんからなぁ」


 と。

 だったら誰に人気なんだと思ったが、


「エルフにも常連さんはおるし、獣人、人間は元より、ハーピーは風魔法以外を撃ちたいと来てくれるし、同じ理由でマーメイドなんかも来てくれはるわ」


 ま、マーメイドは水魔法以外を撃つ目的でやけどな? と、補足された。

 なるほど? つまり、魔法が得意ではない種族はもちろん、魔法が得意であっても自分が得意じゃない属性の魔法を撃つために来るって事か。

 そう考えると結構需要ありそうだな。


「あと、エルフには的変更のオプションが人気やわ」

「ほう」

「自分の上司や嫌いなやつの似顔絵にするんよな」

「ぶっ!!」


 やってることが酷すぎる。

 ……でも、現代に同じサービスがあったら絶対に人気出るんだよな。

 流石に射撃体験で的を変更したい、しかも標的には嫌いな相手の写真を使いたい、なんて言って認められることは無いと信じたいけど……。

 エルフにとっては有りなのか、それは。


「中には的を持参するお客さんもおるで」

「マジすか……」

「無駄にプロテクトかけててな、何度も魔法を直撃させないと壊せないようにしてるんよ」


 やってることがサンドバッグ過ぎて草なんだ。

 エルフだけは怒らせちゃいけないってハッキリわかんだね。


「異世界の呪文詠唱ってのも新鮮でええな。他になんか無いん?」

「俺もそこまで覚えてるわけじゃないんですよねぇ……」


 ゲームとかやってて、確かに色んな詠唱とかは聞いてるかもしれないけど。

 別に記憶に残ってるとかは少ないからなぁ……。


「風よ起これ、サッと吹いてサッと切れ、とか?」

「なんやそれ。ほんまに詠唱?」


 詠唱なんだよなぁ。

 まぁ、作中どころかシリーズで見てもかなりの適当詠唱の部類に入るとは思うけど。

 決める時はカッコいいんだけどねぇ、彼。


「次はどれ狙うんや?」

「んー……今度こそワイバーンですかねぇ」


 という事で自発装填済み。

 次なる狙いはさっき避けられたワイバーン。


「……俺が何狙うか聞いて、的を動かしたりしてませんよね?」

「なんのこっちゃろ?」


 絶対にそうじゃん。

 この反応。

 となると、こっそり手の向きを微調整して……。

 狙いは残った小物のコボルトの方――。


「招雷弾!!」


 と思っていたのか?

 俺は、放て、という前に手の向きを再度調整させて貰うぜ!


「なっ!?」

「放て!!」


 狙いは当然ワイバーン。

 俺がワイバーンを狙うと見せて、コボルトに照準を合わせてることに気が付いただろう店員エルフ。

 だが、俺はそうであることを読んでいたのさ。

 これで、俺が狙っている的を意図的に動かし、火球を避けさせるという行為は出来なくなった。

 どうだ?

 ――まぁ、普通に火球は外してるんですけどね。


「発射する直前に手を動かしたら狙い定まらんで?」

「ソウデスネ」


 そりゃあ、そう。

 次からは大人しく狙う事としよう。


「ちなみに、意図的に的を動かしてたりは?」

「してへんしてへん。前にちょろっとやっとったらクレーム来てな。結構な賠償金払わされたんや」


 過去にやってたんかい。

 そしてしっかり賠償金まで払わされてて草。

 んじゃあ、さっき避けられたのも偶然か。


「ほいほい、どんどんええで」

「んじゃあ、今度こそワイバーン狙いますね」

「ん。ワイバーンをこの地へと追い込んだ。必ず、奴を討伐して欲しい」


 お、雰囲気出してくるじゃん。


「古より伝わりし浄化の炎……撃て!!」


 その言葉を受け、詠唱し、叫ぶ。


「あ、まだ手、置いてへんよ?」

「俺の詠唱返してもらっていいですかねぇ!?」


 ……たく、この店員エルフは……。

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