神様「次はアイスワインを取り寄せさすかのぅ」
一応……一応ね?
交流イベント、というだけあって、他の乗客が俺の近くの席に座ってくれたよ。
――グリムダさんだけど。
「何したらそんなに気に入られるのよ……」
「お菓子寄越せって言われたからあげただけですよ……」
マジでそれしかやってない。
ちなみに席にはとりあえずという事で、乾杯用のビールが置いてある。
大ジョッキで。
酔い潰す気かな?
「これの寄越すお菓子、美味しい。好き」
これて。
仮にもお菓子をくれた俺に対してこれて。
ちょっとだけ不機嫌になっちゃうぞ? いいのか?
「何あげたの?」
「普通にお菓子ですけど……食べます?」
「食べる」
「食べる」
あの、ガーディアンさんには言ってませんよ?
というか、前に渡してそれ食べたでしょ?
11号チョコでも食べてなさい。
「……へぇ。美味しいわね」
「コクコク」
「普通にどこでも売ってる商品ですけどねぇ……」
値段の差異はあれど。
「高級品とかではなく?」
「まさか。子供の小遣いでも買える値段ですよ」
「……それがこんなに美味しい?」
まぁ、値段に対して……と言うと失礼かもだけど、安くて美味しいは確かに思う。
それはそれとして……、ガーディアンさんは何をしておられるので?
「いひゃっ!」
「?」
「舌噛んだ……」
「何やってるんですか」
「ピンクと茶色い部分を綺麗に分けたくて……」
ああ。
11号チョコの色の境目で割りたかったのか。
それに悪戦苦闘してたら舌を噛んだ、と。
子供か。
やる事が。
「……轟龍様が乗ってきたのも驚いたけど、その轟龍様とそんなに仲良くなってるミクリヤにも驚くわね」
「翠の導き」
「翠って……ああ、翠龍様?」
「そう」
「つくづく、人間なのに変な縁があるわね……」
それは思う。
でもまぁ、その縁もお菓子が作ったものだからなぁ……。
俺自身が縁を作るのに動いたってより、お菓子あげたら縁が出来たというか……。
「スマン、ちょっと良いか?」
「? どうぞどうぞ」
と、見知った顔の三人で話していたら、男性ドワーフが一人、声をかけてきた。
「ちと話を盗み聞きしてたんじゃが、お主は遠い国か、異世界の出身のようじゃ」
「まぁ、そうですね」
堂々と言うじゃん。盗み聞きって。
まぁ、変に隠されるよりはストレートに言われた方がいいけどさ。
普通はもっと隠すもんじゃないの?
「お主しか知らん、珍しい酒の話とかないか?」
「酒の話ですか……」
別にお酒に詳しいってわけではないんだよなぁ。
飲むのは好きだけど。
でも、お酒好きだからってお酒に詳しいとはまた違う話になるわけで……。
う~ん……。
「特には思いつきませんねぇ」
「そうか……」
怒られた犬みたいにしょんぼりするじゃん。
なんか申し訳ない気持ちになる。
……でも、マジで思いつかないしなぁ。
「珍しいかは分かりませんけど、年々高くなってるお酒の話とかなら……」
「あるのか!?」
心待ちにしていた散歩に連れて行って貰える寸前の犬みたいな表情するじゃん。
つっても、俺もその酒は飲んだことが無いぞ。
「ウイスキーなんですけど、俺の産まれた国で作ってるやつですね」
漢字一文字か二文字。
ただ、同じ漢字一文字でもウイスキーとは認められないやつも存在するけども。
密林レビューとか見ると他人事として面白いよ。
飲み物ですらない、とか言う過激派も居たりするし。
「美味いんか?」
「俺は飲んだ事無いです。ただ、国内国外から人気があって、年々値段が高騰していってますね」
「ほぅ……」
「シングルモルトだったり、ブレンデッドウイスキーだったりしますけど、そのどれらもが素晴らしい出来なんだとか」
「ほうほぅ」
「ストレート、ハイボール、ロックに水割り、あらゆるスタイルで楽しみながら飲めると言われていますね」
「……買うか」
「異世界の物なのに買えるんです?」
文字通り住む世界が違うのだけれど。
まぁ、それ言ったら、なんで俺はここに居るんだって話になるけれども。
「魔族の頭首が他世界の物を輸入する伝手があるという。多少の値は張るし、時間もかかるが、まぁ取り寄せられんことは無いじゃろ」
「そんな事もしてるのか、魔族の頭首……」
なんか、たまに話題に上がるけど、この世界の魔族の頭首が、俺の知る魔王ってイメージとかけ離れてるんよなぁ。
戦闘で強くはない、だが、魔物からの信頼はある。
それでいて、異世界と繋がれて異世界品を輸入出来る……。
いやまぁ、異世界品の輸入が出来るなら、大量の兵器とかを駆使すればこの世界も征服を……。
無理だな。
例えば戦車を使ったところで、スイさんに勝てる気がしない。
あの人なら、片手で戦車をひっくり返しそうだし。
「他には?」
「……なんでグリムダさんが興味津々なんですか」
しかもメモ帳開いてビッシリメモしてるし。
「私だってドワーフよ? お酒に興味が無いわけないでしょ?」
「まぁ、そりゃあそうですけど……」
「他の高級ウイスキーの情報とかは?」
「俺もあんまり詳しくないんで……。一応、王族御用達のウイスキーが一銘柄あったりしますし、それが高級ウイスキーに入っていたはずですけど……」
「気になるわね。知ってる情報全部教えなさいよ」
ちなみにこの時、銘柄名とか全部忘れていて、思い出そうと必死だったんだけど。
周囲に居るドワーフ客が全て、俺たちの会話に聞き耳を立てていた、と後々ガーディアンさんに教えてもらいました。
みんな酒の話に興味持ち過ぎだろ。
これだからドワーフは。




