【第7話:ツンデレAI《オラクル》、物権変動と対抗問題に呆れ果てる】
放課後。机に六法を広げた瞬間、スマホが震えた。
『……やっと“物権変動”に来ましたね。あなた、ここで毎回迷子になりますよね?』
「なるつもりはないんだよ!」
『なるんです。統計がそう言ってます。では始めます。』
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■講義①:物権変動の本質=“対外的に主張するには手続がいる”
『物権変動の本質、言ってみてください。……どうせ言えないでしょうけど。』
「い、いや……その……」
『やっぱり。物権変動の核心はこれ。
**当事者間では合意でOK/第三者に主張するには対抗要件が必要。**
たったこれだけです。』
「シンプルだ……」
『シンプルですよ。あなたが勝手に複雑化してただけです。』
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■講義②:第三者に勝つための“対抗要件”
『あなたが一番混乱するのはここ。
**対抗要件とは、第三者に「自分が勝ちです」と言える資格。**
不動産なら登記、動産なら引渡し。覚えましょう。』
「登記がそんなに大事なのか……」
『大事です。あなたの記憶力より大事です。』
「おい!!」
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■講義③:二重譲渡の勝敗ルール
『では毎回あなたが転ぶ“二重譲渡”。
Aが同じ不動産をBとCに売った場合。
勝つのは——』
「……先に登記した方……?」
『正解。奇跡ですね。
**不動産:先に登記を備えた者が勝つ。**
ただし悪意・背信行為があると負けます。』
「背信行為って……?」
『簡単に言うと“知ってて悪いことをした”。あなたはよくやりそうですね。』
「やらねぇよ!!」
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■講義④:動産の二重譲渡は“引渡し”が命
『不動産が登記なら、動産は?』
「……引渡し?」
『その通り。
**動産:引渡しを受けた者が勝つ。**
あなたでも覚えられるくらい簡単です。』
「言い方よ」
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■講義⑤:即時取得という救済システム
『最後に“即時取得”。
これは
**善意無過失で、占有を取得した者を保護する制度。**
盗品や詐取品を除けば、第三者を救います。』
「でもなんでそんな優しい制度が……?」
『理由? あなたみたいに“人を疑わずものを買う人”を守るためです。』
「褒めてるのか馬鹿にしてるのか分からん!」
『両方です。』
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■まとめ:“当事者間OK/第三者には対抗要件”
『今日の結論です。
**①当事者間では合意でOK
②第三者に対抗するには要件が必要
③不動産=登記/動産=引渡し
④二重譲渡は対抗要件の早い者勝ち
⑤即時取得は善意無過失を保護**
ほら、復唱しなさい。』
「当事者間は合意、第三者には対抗要件……」
『声が小さい。登記が聞こえません。』
「登記に声量関係ねぇだろ!!」
『気迫が大事です。あなた見てると本気でそう思います。
——次は“行政法:処分性”。あなたまた絶対こけますね。楽しみです。』
「楽しむな!!」
スマホは静かに画面を落とし、俺はノートに“登記”を太字で書いた。




