【第6話:ツンデレAI《オラクル》、不法行為の本質にブチ切れる】
深夜。
静かに六法を開いた瞬間、スマホが震えた。
> 『……また夜更かしですか。
生活習慣が終わってますね。』
「うるせぇ……勉強しようとしてるんだよ……」
> 『はいはい。
今日は“不法行為”。
あなたが毎回“なんとなく書き出して全部ぼやける”分野です。
……今日でぼやけた答案とお別れしますよ。』
「そんなにぼやけてたか俺の答案……?」
> 『ええ。もはや霞。視界ゼロです。』
「言い過ぎだろ!!」
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■講義①:不法行為の本質は“他人の権利・利益を侵害したら金払え”
> 『不法行為の核心は一行で終わります。
他人の権利・利益を侵害したら、損害賠償しなさい。
これだけ。
709条の魂はこの一語に尽きます。』
「なんか……すげぇ雑に聞こえるけど」
> 『民法は本来シンプルなんですよ。
あなたが勝手に複雑化してるだけです。』
「俺のせいなの!?」
> 『そうですよ?』
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■講義②:709条の4要件=“人・落ち度・結果・繋がり”
> 『いいですか。
不法行為成立の要件は4つ。
①故意・過失
②権利・利益の侵害
③損害
④因果関係
人間の悪さ(故意・過失)、
侵害されたもの(権利利益)、
生じたダメージ(損害)、
そして繋がり(因果関係)。
この流れだけで書けば、答案は美しくなります。
……あなたの答案に足りないものです。』
「美しさを求めてんの!?」
> 『当然です。
採点者が読みやすい答案は美しい。
美しい答案は高得点。』
「なんでそんな当然みたいに……」
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■①故意・過失:落ち度をまず見る
> 『不法行為は“落ち度”が出発点。
つまり
危ないことを分かっていてやった(故意)
注意すれば避けられたのにやらなかった(過失)
ここが認められなければスタートすらしません。』
「なるほどな……」
> 『あなたの答案はここが薄い。
いつも“なんとなく過失あり”って書いて終わり。
……薄味すぎます。ラーメンなら替え玉できません。』
「例えのクセが強いんだよ!!」
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■②権利・利益の侵害:何が壊されたか
> 『次に見るのは、
何が損なわれたか。
有名なのは
・生命
・身体
・自由
・財産
・人格権
などですね。
あなたの答案はここも弱い。
“なんとなく侵害”って書いて誤魔化すなと言ってるでしょう?』
「誤魔化してない!!」
> 『誤魔化してます。未来のデータでもそう出てます。』
「未来どんだけ俺に厳しいんだ!!」
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■③損害:兆候だけじゃなく“金額化”
> 『損害は、“損害があるっぽい”ではダメです。
財産的損害か、慰謝料か、何が損害なのか
を具体的に書く。
金の話なんですから当然です。』
「たしかに……」
> 『あなたの答案は損害の書き方が総じて薄い。
まるで水で3倍に薄めたジュースです。』
「味が薄い例えやめろ!!」
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■④因果関係:ここが一番よく落とす
> 『あなたが毎回こけるのがここ。
加害行為 → 損害
この因果の“線”をきちんと描けていません。
とくに
・中間損害
・二重因果
・危険の現実化
ここで毎回転びます。』
「そんなに転んでるのか俺……」
> 『転びまくってます。
転生しても転びます。』
「なんで転生した前提なんだ!!」
> 『あなた程度では転生でも補正が必要なので。』
「バカにしすぎ!!」
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■まとめ:“落ち度 → 侵害 → 損害 → 繋がり”の一本線
> 『では今日のまとめ。
故意・過失(落ち度)
→ 権利利益の侵害
→ 損害
→ 因果関係(繋がり)
これが一本の直線で繋がれば不法行為は成立。
この“流れ”が大事なんです。
ほら、復唱して?』
「お、落ち度 → 侵害 → 損害 → 因果関係……」
> 『声が小さい。
因果関係が切れますよ、そんな声じゃ。』
「声量で因果関係は切れねぇよ!!」
> 『気合の問題です。あなたには特に必要です。
……次回は“物権変動”。
あなた、また迷いますね。楽しみです。』
「だから楽しむな!!」
スマホが静かに暗転した。
けれど俺のノートには、
“落ち度 → 侵害 → 損害 → 因果関係”
の矢印が太く刻まれていた。




