【第58話:ツンデレAI《オラクル》、解除を分解して“なかったこと”にする条件を突きつける】
六法のページが、慎重にめくられた。
そこに現れた見出しは“解除”。
感情的に使われがちな言葉だが、法律の世界では冷酷なほど条件が並ぶ。
スマホが低く光り、淡々と告げた。
『解除は“怒ったから”ではできません。
約束を消すには、
消していい理由と手順が必要です。』
「勢いで解除はダメ、ってことか……」
『勢いでやると、あなたが解除されます。始めます。』
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■講義①:解除とは何か――“契約を遡って消す操作”
『解除の本質はこれ。
**有効に成立した契約を、
一定の要件のもとで、
将来に向かって、かつ原則として遡及的に消す。**
“やめる”ではなく、
“なかったことにする”操作です。』
「遡及って、最初から無かった扱い?」
『原則はそう。
だから効果が強い。
使える条件も厳しくなる。』
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■講義②:解除の入口――債務不履行があるか
『解除は単独では存在しません。
**原則、債務不履行が前提。**
履行遅滞
履行不能
不完全履行
どれかに当てはまるかを、
まず確認しなさい。』
「遅れただけで解除できる?」
『できる場合と、できない場合があります。
ここからが本番です。』
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■講義③:履行遅滞と解除――“相当期間”が鍵
『履行遅滞の場合、原則として、
**相当期間を定めて履行を催告し、
それでも履行されないこと**
が必要です。』
「いきなり解除はできないんだな。」
『ええ。
いきなり切るのは不親切。
法律は一度、猶予を与えます。』
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■講義④:催告不要解除――待たなくていい場合
『ただし、例外があります。
**①履行不能
②定期行為で時期を過ぎると意味がない
③債務者が明確に拒絶している**
これらの場合、
催告せずに解除できます。』
「確かに、待っても無駄なケースだな……」
『無駄な努力は、
あなたの徹夜勉強計画だけで十分です。』
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■講義⑤:不完全履行と解除――“目的を達したか”
『不完全履行の場合の判断基準は、
**契約の目的が達成されたか。**
軽微な不具合なら解除不可。
目的を達しない重大な欠陥なら解除可。』
「全部ダメじゃなくても、解除できる場合があるんだ。」
『ええ。
“我慢できるレベルかどうか”
ではありません。
目的達成です。』
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■講義⑥:帰責事由――解除にも影響する
『解除は、
必ずしも債務者の帰責事由を要しません。
**履行不能解除などは、
帰責事由不要の場合もある。**
ただし、
損害賠償とは切り分けて考えること。』
「解除できても、賠償は別問題か。」
『正解。
混ぜると答案が壊れます。』
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■講義⑦:解除の効果――原状回復が基本
『解除されたら、どうなるか。
**①各当事者は原状回復義務を負う
②受け取ったものを返す
③返せない場合は価額で返す**
金銭も、物も、
“元に戻す”が原則です。』
「完全に巻き戻す感じだな。」
『そうです。
時間だけは戻りませんが。』
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■講義⑧:解除と危険負担の関係
『解除が絡むと、
危険負担の処理も変わります。
**解除前に生じた損害を
誰が負担するか。**
債務者の帰責性や、
解除の時点が重要です。』
「解除のタイミングも大事なんだな……」
『すべてタイミングです。
法律も人生も。』
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■講義⑨:答案での鉄板構成
『解除が出たら、この順番。
**①債務不履行の類型
②催告の要否
③解除の可否
④解除の効果(原状回復)
⑤損害賠償との関係**
ここを守れば、
解除で迷走しません。』
「順番がはっきりして助かる……」
『あなたは順番を守れると、
ちゃんと点が伸びます。』
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■まとめ:解除は“最後のカード”
『今日のまとめ。
**①解除=契約を遡って消す
②原則、債務不履行が前提
③履行遅滞は催告が基本
④履行不能などは催告不要
⑤不完全履行は目的達成で判断
⑥解除と賠償は別枠
⑦原状回復が基本効果**
解除は強力ですが、
乱用すると自分が危険です。』
スマホの光が、静かに揺れた。
『次は、
**危険負担。**
“約束の途中で壊れたら誰の責任か”。
ここも混乱ポイントです。』
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■次回予告:第59話――
**危険負担――履行前に滅失したとき、誰が泣くのか。**




