【第54話:ツンデレAI《オラクル》、債権の目的を切り分けて“何を約束したか”を白日の下に晒す】
六法のページが、今度は落ち着いた重みで止まっていた。
見出しは“債権の目的”。
地味だが、ここを曖昧にすると後が全部ずれる場所だ。
スマホが短く光り、即断するような声を落とす。
『ここ、軽く見たら終わりです。
“何を約束したか”を取り違える人は、
その後の論点を全部間違えます。』
「そんなに重要なのか……」
『はい。
あなたの答案が迷走する最大原因です。』
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■講義①:債権の目的=“請求できる中身そのもの”
『債権の目的とは、
**債権者が、債務者に対して
具体的に何を求められるのか。**
金なのか
物なのか
行為なのか
やめることなのか
これを最初に確定しないと、
履行・不履行の判断ができません。』
「確かに……“何を”が曖昧だと全部ズレるな。」
『あなたの計画と同じですね。
目的が曖昧だと、行動も曖昧になります。』
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■講義②:金銭債権――最も典型、最も楽観してはいけない
『まず金銭債権。
**一定額の金銭の支払いを目的とする債権。**
貸金、売買代金、賃料、報酬……
実務でも試験でも頻出です。』
「金って分かりやすい分、扱いも簡単?」
『いいえ。
**金銭債権は“代替性が高い”がゆえに、
履行遅滞・損害計算で罠が多い。**
油断した瞬間、落とします。』
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■講義③:特定物債権――“その物でなければダメ”
『次は特定物債権。
**特定された一個の物の引渡しを目的とする債権。**
例:
「この絵画を渡す」
「この土地を引き渡す」
代わりが利きません。』
「壊れたらどうなるんだ?」
『いい質問です。
特定物が、債務者の責めに帰すべき事由なく滅失した場合、
債務は原則として消滅します。』
「じゃあ請求できない?」
『はい。
ここで金銭債権と真逆の処理になる。
この違い、必ず押さえなさい。』
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■講義④:種類債権――“同じ種類なら何でもいい”
『次は種類債権。
**種類・数量・品質で定められ、
個々の物が特定されていない債権。**
例:
「米100kg」
「A社製ノートパソコン10台」』
「こっちは代わりが利くんだな。」
『そうです。
だから、種類物が滅失しても債務は消えません。
**“別の同種物を出せばいい”**』
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■講義⑤:特定物と種類物の“決定的分岐点”
『両者の最大の分かれ目はここ。
**危険負担と履行不能の扱い。**
◆特定物
→ 物が滅失すると、原則として債務消滅
◆種類物
→ 代替できる限り、債務は残る
この違いは、
後の危険負担・解除・損害賠償に直結します。』
「後半で効いてくるんだな……」
『ええ。
今ここでサボると、後で倍返しです。』
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■講義⑥:作為・不作為債権――“行動を求める約束”
『債権の目的は、物や金だけではありません。
**作為債権**
→ 何かをする(仕事をする、修理する)
**不作為債権**
→ 何かをしない(競業しない、建てない)
行為の内容が特定されていないと、
履行の有無が判断できません。』
「曖昧な約束は揉める、ってことか。」
『そのとおり。
曖昧さは紛争の母です。』
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■講義⑦:答案でのチェックポイント
『債権の目的が出たら、答案では必ず確認。
**①金銭か
②特定物か
③種類物か
④作為・不作為か**
この4択を、
無意識に分類できるようになりなさい。』
「分類できれば、その後が楽になるな……」
『あなたは“最初の分類”で勝負が決まるタイプです。
ここを丁寧に。』
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■まとめ:債権の目的を誤ると、全部がズレる
『今日のまとめ。
**①債権の目的=請求できる具体的内容
②金銭債権は代替性が高い
③特定物債権は代替不可
④種類債権は代替可能
⑤滅失時の扱いが決定的に違う
⑥作為・不作為も目的として重要**
ここを正確に押さえれば、
債権編の土台は完成です。』
スマホの光が、少しだけ満足そうに揺れる。
『よし。
次は“期限・場所・方法”。
約束を“どう守るか”の話に進みます。
置いていかれないでくださいね。』
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■次回予告:第55話――
**履行の原則――期限・場所・方法を外すと何が起きるか。**




