【第53話:ツンデレAI《オラクル》、債権総論の入口で“約束が力になる瞬間”を見せつける】
机の上から図が片付けられ、
六法は新しい章で静かに開かれていた。
そこに並ぶ文字は、どこか現実に近い匂いを放っている――“債権”。
スマホが控えめに光り、少しだけ調子を変えた声を出す。
『ここからは債権編。
物を“支配する”世界から、
人に“約束させる”世界へ移ります。』
「物権より、人間くさい感じがするな……」
『ええ。
だからこそ揉めますし、
だからこそ法律が必要になる。』
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■講義①:債権とは“人に何かをさせる力”
『まず定義から。
**債権とは、
特定の人に対して、
一定の行為を請求できる権利。**
・金を払え
・物を渡せ
・仕事をしろ
・しないでくれ
これら全部が債権の中身です。』
「物権みたいに、世界に向かって主張できるわけじゃないんだな。」
『そのとおり。
債権は“相手限定”。
ピンポイントで刺す権利です。』
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■講義②:債権と物権の決定的な違い
『ここ、必ず整理してください。
**物権**
→ 物を直接支配
→ 第三者にも主張できる
**債権**
→ 人に行為を求める
→ 原則、相手にしか主張できない
この違いを混ぜると、
答案が事故ります。』
「物権的請求と債権的請求、混ざりやすいんだよな……」
『ええ。
あなたの頭の中でも、よく混ざっています。』
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■講義③:債権はどうやって生まれるのか
『債権の発生原因は、だいたいこの5つ。
**①契約
②事務管理
③不当利得
④不法行為
⑤法律の規定**
物権編の後半で出てきた制度も、
ここで“債権発生原因”として再登場します。』
「全部つながってるな……」
『最初から言っていたでしょう。
民法は一本の話だと。』
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■講義④:債権の目的=“何を請求できるか”
『債権で重要なのは、
**この債権で、何を請求できるのか。**
金銭債権か
特定物引渡債権か
作為・不作為か
目的が曖昧だと、
履行・不履行の判断ができません。』
「たしかに……何を求めてるのか分からないと、判断できない。」
『あなたの人生相談と同じです。
目的が曖昧すぎる。』
「急に人生の話を入れるな……」
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■講義⑤:履行とは“約束どおりやること”
『債権編の中心概念が“履行”。
**債務者が、
債権の内容どおりの行為をすること。**
期限
場所
方法
内容
すべてが約束どおりで、
初めて“履行した”と言えます。』
「ちょっとでもズレたら……?」
『原則、履行不完全です。
あなたの“途中まで勉強した”と同じ扱い。』
「厳しい……!」
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■講義⑥:債権は“信頼”を前提にした制度
『債権は、物権と違って
**相手が約束を守ることを前提**に成り立っています。
だから民法は、
・履行請求
・損害賠償
・解除
といった“裏メニュー”を用意している。
守られなかった時のためです。』
「人を信じつつ、裏切られた時の準備もする……」
『大人の世界です。
あなたもいずれ分かります。』
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■講義⑦:債権総論でまず身につける“型”
『債権が出たら、まずこれを考えなさい。
**①どんな債権が発生しているか
②その内容(目的)は何か
③履行はされたか
④されていないなら、次に何が起きるか**
この流れが、
この先ずっと使われます。』
「型があると助かる……」
『あなたは“型で救われる人間”ですから。
遠慮なく使いなさい。』
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■まとめ:債権は“約束に法的な力を与える装置”
『今日のまとめ。
**①債権=人に行為を請求する権利
②相手限定の権利
③発生原因は5つ
④目的の特定が最重要
⑤履行とは約束どおりやること
⑥守られない時のための制度が用意されている**
これが、債権編の入口です。』
スマホの光が、少しだけ柔らいだ。
『物権より地味に見えますが、
債権編は点数源です。
ここを落とすのは、正直もったいない。』
「……ちゃんとやる。」
『その言葉、忘れないでください。
次はすぐ試されますから。』
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■次回予告:第54話――
**債権の目的と種類――金銭債権・特定物・種類債権の違い。**
『“何を約束したか”を見誤ると、
この先ずっとズレ続けますよ。』




