【第5話:ツンデレAI《オラクル》、債務不履行の三兄弟に呆れる】
夜の自習室。
静かに六法を開いた瞬間、スマホが震えた。
> 『……ようやく来ましたね。今日で五回目ですけど?
継続してるのは評価します。五点くらい。百点満点中で。』
「低すぎない!?」
> 『あなたの現状を考えれば妥当です。
さ、今日は“債務不履行”。
受験界隈では“三兄弟”として嫌われている分野です。
……あなたは四兄弟にしてしまいそうですけど』
「また四兄弟ネタかよ!」
> 『黙って聞きなさい。今回は特に重要です。』
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■講義①:債務不履行=“やるって言ったのにやらない”ただそれだけ
> 『債務不履行。
これはたった一言で説明できます。
約束したことを、ちゃんと果たさなかった。
ただそれだけ。
シンプルな世界です。』
「ほんとにそれだけ……?」
> 『そうですよ。
それだけなのに、みんな勝手に複雑にします。
……あなたは特に。』
「俺そんな難しくしてないぞ?」
> 『してます。毎回。気づいてないだけです。』
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■講義②:三兄弟の性格をまず知れ
> 『債務不履行の三兄弟はこうです。
①履行遅滞:できるくせに遅れている
②履行不能:もう無理
③不完全履行:できたけど質がひどい
この“性格の違い”を掴めば完璧です。』
「意外とキャラ分かれてるんだな……」
> 『はい。
あなたより性格がはっきりしてます。』
「おい」
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■①履行遅滞:やればできるのに遅れる
> 『履行遅滞。
これは
やればできるのに、期限を過ぎてもやってない
という怠慢タイプ。
債務者の責任あり。
例えば
“納期に間に合わず遅れました”
みたいなやつです。』
「提出物みたいだな……」
> 『あなたの提出物の遅さを思い出しました。』
「提出物はそこまで遅れてない!」
> 『“そこまで”という時点でアウトです。』
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■②履行不能:もうどうやっても無理になった
> 『履行不能は
そもそももうできない。物理的に無理。
という絶望案件。
たとえば
“売るはずの家が火事で消えた”
これは履行できませんね?』
「まあ、無理だな……」
> 『責任があるかどうかは、債務者の過失・帰責性で判断します。
あなたのずさんな管理で家が燃えたら責任あります。』
「ずさんって言うな!」
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■③不完全履行:“できたけど質が死んでる”
> 『最後に不完全履行。
約束は果たしたつもりだが、質が悪すぎる。
例えば
“新品を買ったはずが傷だらけだった”
こういう“できた風”なケースです。』
「一番ムカつくタイプだな……」
> 『そうです。
あなたの答案にもよくあります。
“書いてはあるけど質が悪い”という……』
「だから言い方!!」
> 『私は事実しか言いません。』
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■講義④:効果は全部“損害賠償+解除”
> 『債務不履行の効果は、とにかく
①損害賠償
②契約解除(要件を満たせば)
この二本立てで全部処理できます。
細かく分けなくて結構。
あなたにそんな複雑な処理は無理ですから。』
「お前、俺のことどんな評価してんだ」
> 『未来統計による“妥当な評価”です。』
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■まとめ:三兄弟は“時間・可能性・質”で区別する
> 『はい、今日の総まとめ。
履行遅滞 → 時間の問題
履行不能 → 可能性の問題
不完全履行 → 質の問題
この三本だけで、民法はほぼ突破できます。
ほら、復唱して?』
「じ、時間・可能性・質……」
> 『声が小さい。
そんな弱気じゃ答案に気迫が出ませんよ?』
「答案に気迫いらねぇだろ!!」
> 『いります。法律以前に、気持ちの問題です。
……次回までに覚えておきなさい。忘れたら怒ります。』
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> 『次は“不法行為”。
あなたがまた必ずこけるところです。
楽しみです。ほんとに。』
「楽しむな!!」
スマホがようやく静かになった。
しかし俺の頭の中では、
“時間・可能性・質”
のフレーズが妙にリズムよく残っていた。




