【第49話:ツンデレAI《オラクル》、根抵当権と先取特権という“二大ラスボス”をテーブルに並べる】
夜の静けさが、机の上に積まれた本の輪郭を浮かび上がらせていた。
六法は、担保物権の後半も後半、深い場所で止まっている。
そこに刻まれた文字――“根抵当権”“先取特権”。
スマホが小さく震え、いつもよりわずかに真剣な響きを帯びた。
『……ここまで来たなら観念しなさい。
根抵当権と先取特権。
担保物権の中でも“理解したつもり禁止ゾーン”です。』
「禁止ゾーンって言い方こわい。」
『こわさは事実です。では順番に叩き込みます。』
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■講義①:根抵当権=“将来にわたる取引をまとめて担保”
『まず根抵当権から。
**根抵当権とは、一定の範囲に属する将来の債権を
極度額の範囲内で担保する抵当権。**
普通の抵当権が“この1つの貸し金”を担保するのに対し、
根抵当権は“今後出てくる色々な貸し金”をまとめて担保します。』
「まとめて担保……銀行が好きそうなやつだ。」
『ええ。あなたの“今日と明日のサボり癖”を一括で担保したいくらいです。』
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■講義②:根抵当権のキーワードは“極度額・元本確定”
『根抵当権の重要ワードは2つ。
**①極度額……担保できる債権総額の上限
②元本確定……“これ以降は債権が増えない”という確定時点**
元本が確定した後は、その時点までの債権だけが担保され、
それ以降の新たな債権は担保されません。』
「いつ確定するんだ?」
『主に、
◆合意で確定
◆債務者破産
◆根抵当権者の破産
◆一定の通知後の期間経過
などです。詳しい暗記は条文でどうぞ。今度は逃がしません。』
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■講義③:普通の抵当権との違いを“感覚”で掴め
『比較するとこうなります。
◆抵当権
→ 個々の特定債権を担保
→ 成立時に債権が確定している
◆根抵当権
→ 将来の不特定多数の債権をまとめて担保
→ 一定時点まで債権が出入りする“口座”みたいなもの
銀行取引など“継続的な取引”には根抵当権が向いています。』
「確かに、銀行と企業の間の取引ってそんな感じだ。」
『あなたと睡眠時間の関係も“継続的な取引”ですね。
睡眠にばかり根抵当権を設定しないように。』
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■講義④:根抵当権の譲渡と元本確定のクセ
『根抵当権のいやらしいポイントがここ。
**元本確定前には、原則として根抵当権を分割譲渡できない。**
なぜなら、“これからどんな債権が生まれるか不明”だから。
中途半端に分けると、関係者全員が地獄を見るからです。』
「なるほど……途中で分けるとカオスになるやつだ。」
『あなたの勉強計画を途中で細切れにするのと同じです。
何をしているのか誰も分からなくなります。』
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■講義⑤:ここから先は“先取特権”――法律が勝手にくれる担保
『次は先取特権。
これは、
**法律が特別な債権に自動で付けてくれる担保権。
契約なしで、法律の規定だけで発生。**
いわば“法定担保物権”。』
「勝手に付いてくる担保……ずるくない?」
『ずるいのではなく、政策です。
あなたの“自分にだけ甘い採点”とは違います。』
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■講義⑥:先取特権の種類=“不動産・動産・一般”
『ざっくり分けると3種類。
**①不動産の先取特権
・不動産の保存費用
・不動産の工事代金 など
②動産の先取特権
・売買代金
・運送費
・保管料 など
③一般先取特権
・税金
・雇用関係の賃金 など**
国や労働者など“保護したい立場”に与えられがちです。』
「なるほど、守ってあげたい側か……」
『あなたの“言い訳”には先取特権は付きません。
保護の必要性がありません。』
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■講義⑦:順位の地獄――抵当権 vs 先取特権
『試験でいちばん問われるのがここ。
**抵当権と先取特権の優先順位。**
種類によっては先取特権が抵当権に優先することもあります。
“法律が特別扱いしているかどうか”が決め手。』
「順位計算……想像しただけで胃が痛い。」
『あなたの答案も、採点者の胃に負担をかけています。
少しは優しさを持ちなさい。』
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■講義⑧:答案では“この順番”で見る
『根抵当権・先取特権が混ざった事例では、
**①どの担保物権が存在するか
②それぞれの性質(法定か約定か・物上代位の有無)
③優先順位(条文と判例)
④配当計算(必要なら)**
この流れで処理します。
いきなり計算に飛びついてはいけません。』
「やりがちだ……」
『そうです。
あなたはまず数字を見て放心しますからね。』
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■まとめ:“根抵当権=継続取引の口座/先取特権=法律の特別席”
『今日のまとめ。
**①根抵当権=将来債権を極度額内で担保
②元本確定と極度額がキーワード
③普通の抵当権とは“特定か不特定か”が違う
④先取特権=法律が自動で与える担保
⑤不動産・動産・一般の三系統
⑥抵当権との順位関係は条文で決まる
⑦答案は“存在 → 性質 → 順位 → 配当”の順で処理**
……ここまで理解していれば、担保物権の山場は越えつつあります。』
「“越えつつ”ってことは、まだ頂上じゃないんだな……」
『はい。あなたの本番答案の完成形は、まだずっと先です。
でも、今日はちゃんと前に進みました。ほんの少しだけ。』
「その“ほんの少し”を積み重ねていく……!」
『口だけで終わらないなら、評価してあげます。
次もちゃんと開きなさいよ、その六法。』
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■次回予告:第50話――“総合問題で担保物権が牙をむく”
スマホの光が、次のページの厚みを示すように揺れる。
『次は、
**第50話:担保物権総合――質権・抵当権・根抵当・先取特権が一斉に出てくる世界。**
あなたの頭がパンクする前に、整理の仕方を教えます。』




