【第4話:ツンデレAI《オラクル》、代理と無権代理に本気でキレる】
休日の午後。
ようやく机に向かった俺のスマホが、また気配もなく光る。
> 『……遅い。何分ぼーっとしてたんですか。
もう始めますよ。』
「まだ心の準備が──」
> 『いりません。あなたに準備なんて高度なもの、不要です。
今日は“代理・無権代理”。
迷路に落ちて二度と戻れなくなる受験生が山ほどいる分野です。
……あなたは3倍くらい危険ですけど』
「3倍って何だよ!」
> 『自覚がないのがまた困るんですよね。では始めます。』
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■講義①:代理の本質=「本人のために動いて、効果だけ本人に返す」
> 『まず、代理の核心を一言で言いなさい』
「え、いきなり!? えーと……」
> 『遅い。
代理とは
“本人のために相手と契約したら、その効果が本人に発生する仕組み”
これだけです。』
「シンプルだな……」
> 『でしょ? なのに受験生は迷います。
訳の分からない例外ばかり覚えるからですよ。
私の言った一句だけ覚えればいいんです。
……あなたでも大丈夫なように作ってますから』
「言い方!」
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■講義②:代理の三要素は“本人・代理人・相手方の三角形”
> 『代理は三角関係です。
あなたの恋愛経験とは無関係ですが。』
「余計なこと言うな!」
> 『必要なのは三つ。
①代理権
②本人のためにする意思(顕名)
③相手方との契約
これが揃えば、効果は本人へ。
これだけの話です。』
「なるほど」
> 『“なるほど”だけで済むなら、世の受験生は苦労しませんけど。』
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■講義③:無権代理は“代理権が無いくせに契約したヤバい人”
> 『問題はここから。
無権代理。
簡単に言うと
代理権がないのに代理っぽく契約する人
です。』
「それは……困るな」
> 『困ります。本人が被害者ですから。
だから原則は“本人に効果なし”。
ただし──』
「ただし?」
> 『本人が“追認”すれば効果を生じる。
追認しなければ、相手方は“代理人を責任追及(相手方の選択権)”できます。
これが
117条の損害賠償責任
ですね。』
「117条って、そんな構造だったのか……」
> 『はい。
そしてあなたは毎回、ここを曖昧に書いて点を落とすタイプ。』
「なんで決めつけるんだよ!」
> 『未来の答案データからです。』
「未来で俺はそんな答案書くのかよ!?」
> 『書かせません。だから教えてるんです。』
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■講義④:相続代理・表見代理という“救済システム”
> 『さて、無権代理で相手方があまりにかわいそうなので、民法は優しい仕組みを作りました。
それが
表見代理
です。』
「でた、表見代理……もう名前がこわい」
> 『怖がっても無意味です。
三種類あります。
①権限授与表示(109条)
②代理権消滅後の表見代理(110条)
③無権代理人が権限あるように見えた場合(112条)
ポイントはすべて
“相手方の善意無過失”
これだけで救済できる場所がある、ということ。』
「覚える場所多すぎない?」
> 『あなたのメモリ容量の問題です。
私のせいにしないでください。』
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■まとめ:代理と無権代理は“効果がどこに落ちるか”
> 『では今日のまとめ。
一番大事なのはこれ。
代理 → 効果は本人へ
無権代理 → 効果は本人に落ちない(追認で生かす)
相手方は代理人へ責任追及可能
表見代理 → 相手方を保護して効果を本人へ
この“効果の行き先”だけで整理できます。
ほら、復唱しなさい。』
「代理は本人。無権代理は本人に落ちない。表見代理は相手方を保護……」
> 『はい、声が小さい。
もっとハッキリ。
あなたの答案もそのくらいハッキリ書いてください。』
「答案に声量関係ねえだろ!」
> 『気合の問題です。次から改善してください。
……できなかったら、怒ります。』
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> 『次回は“債務不履行の三兄弟”。
あなた、また絶対混乱しますね。
楽しみです。』
「楽しむな!!」
スマホがようやく静かになり、部屋に明かりだけが残った。
けれど俺はもう気づいてしまった。
――ツンデレAIの講義、妙にクセになる。




