【第38話:ツンデレAI《オラクル》、不当利得で“返せ”の世界を叩き込む】
静まり返った部屋に、ページをめくる音がひとつ落ちた。
六法の新しい項目が姿を見せる。
“不当利得”の文字がその中央に鎮座していた。
スマホがかすかな光を揺らし、
どこか呆れたような声を響かせる。
『……いよいよ来ましたね、不当利得。
あなたみたいに“もらったものを返し忘れるタイプ”が
現実にいたら大問題になる分野です。』
「返してる!!……はず!!」
『その“はず”が一番危険なんです。』
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■講義①:不当利得の本質は“法律上の原因なく利益を得たら返せ”
『不当利得とは、簡単に言えばこれ。
**法律上の原因なく利益を受け、
他人に損失を与えた場合、
その利益を返還する義務を負う制度。**
条文は703条と704条。
不正というより“理由がない利益”を正すための制度です。』
「シンプルと言えばシンプルだな……」
『シンプルだからこそ落とすと恥ずかしいんです。
あなたの答案のように。』
「今日は攻撃が鋭い!!」
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■講義②:成立要件は4つだけ
『不当利得の成立には4つ必要です。
**①利得
②損失
③利得と損失の因果関係
④法律上の原因がないこと**
これらが揃って“返す義務”が発生します。』
「この4つ……全部必要なんだよな?」
『1つ欠ければ不成立。
あなたの生活習慣みたいですね。』
「欠けてない!!……たぶん!!」
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■講義③:利得=“利益を受けたかどうか”
『利得は広くとらえます。
**お金を受け取った
物を受け取った
借金が消えた
支払うべき費用を払わずに済んだ**
こうした経済的価値の増加が“利得”。』
「払わずに済んだだけでも利得なのか……」
『はい。あなたが“勉強をサボって時間を得た”のは利得扱いしませんけど。』
「なんでだよ!!」
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■講義④:損失=“他人側でマイナスが発生”
『損失とは、利得側と対応した“相手のマイナス”。
例えば利得が“借金が消えた”なら、
損失は“本来返してもらえるはずの人が損した”ということ。』
「対応してるんだな……」
『あなたの失った勉強時間は……誰も補填してくれませんね。』
「やめてくれ!!」
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■講義⑤:法律上の原因が“ない”ことが核心
『不当利得のキモはここ。
**その利得が法律上正当化される理由があるか。**
・契約
・贈与
・法律の規定
こうした“原因”があるなら返す必要はない。
ないなら返す。
それだけの話。』
「原因の有無って、判断が難しそう……」
『あなたの勉強不足の原因は明白ですけどね?』
「今日は反論できないの多いな!!」
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■講義⑥:返還範囲=“現存利益”
『返す量に関しては704条が重要。
**返すのは“現存利益”。
つまり、今まだ残っている利益の範囲。**
使ってしまって残っていなければ、
返還義務はその分だけ減ります。』
「使っちゃえば得したままじゃ……?」
『使い切る前に請求されれば返すんです。
人生と同じで、タイミングがすべて。』
「人生にまで説教を織り交ぜるな!!」
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■講義⑦:悪意の受益者は“全部返す+損害も”
『重要なのはここ。
不当利得を受けた側が“悪意”かどうか。
◆善意 → 現存利益のみ返還
◆悪意 → 全部返還+利息+損害賠償
悪意とは、
**自分の利得に法律上の原因がないことを知っていた**
という状態。』
「悪意だと倍返しみたいになるな……」
『そのとおり。
あなたが“勉強したつもり”で休んだ時間は倍になって返ってきますね。』
「返ってこなくていい!!」
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■講義⑧:不当利得と不法行為は“方向が逆”
『不法行為は“損害を与えたら賠償”。
不当利得は“理由なく得したら返還”。
**不法行為=加害行為
不当利得=原因の欠如**
方向性が真逆なので、答案で混ぜると爆散します。』
「混ぜないように気をつける……!」
『はい。あなたの部屋の洗濯物の種類くらい、ちゃんと分けてください。』
「生活の話を出すな!!」
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■まとめ:“理由なき利益は保持できない”
『今日のまとめ。
**①不当利得は“法律上の原因なく利益を得たら返す”制度
②要件は利得・損失・因果関係・原因の欠如
③返す量は“現存利益”
④悪意受益者は全額+利息+損害
⑤不法行為と方向性が逆
⑥混ぜるな危険**
理解しましたね?あなた。』
「……今日はまともに入ってきた気がする!」
『気がするだけなら利得になりません。
理解を固定化するには復習あるのみです。』
「復習……する……!」
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■次回予告:事務管理――“誰も頼んでないのに勝手に善意を働く人”の法理
スマホの光が静かに揺れ、次の条文を促す。
『次は、あなたがたまにやらかす行為の法的処理です。
**第39話:事務管理――頼まれていないのに他人のために動いたら?**
善意でも悪意でも、世界はそんなに優しくありませんよ。』




