【第37話:ツンデレAI《オラクル》、過失相殺と危険責任であなたの甘さを切り捨てる】
空気が静かに沈み、机の上の六法だけが淡く光を反射している。
不法行為の次の節へページがめくられた瞬間、
スマホがわずかに震え、鋭い響きを放った。
『さて……あなたが必ず“理解したつもり沼”に落下する章に入ります。
過失相殺、危険責任、そして損害算定。
甘い見通しで来ると即死です。』
「即死は避けたい……!」
『なら、今日だけは少しだけ本気になりなさい。
本当に少しでいいので。』
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■講義①:過失相殺=“被害者にも落ち度があれば減額”
『まずは過失相殺。
**加害者だけでなく、被害者にも過失がある場合、
損害賠償額を公平の観点から減らす制度。**
条文は722条2項。
“過失相殺は公平のため”
この一言が核心です。』
「公平って、そんなに重い理由なのか。」
『重いというより、あなたの理解が軽いのです。』
「その煽りは重い!!」
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■講義②:過失相殺は“請求者側の過失”を問題にする
『誤解しがちな点がこれ。
**過失相殺は“請求する側”の過失を調整する制度。**
だから不法行為だけでなく、
契約責任でも過失相殺が使われます。』
「契約でも?」
『ええ。あなたが契約でも不注意をかますように。』
「やめろその例え!!」
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■講義③:危険責任=“過失がなくても負う特殊な責任”
ページをめくると、特有の重い語が並んでいる。
『危険責任とは、
**加害者に故意・過失がなくても責任を負うタイプ。**
典型例がこれ。
◆工作物責任(717条)
◆動物占有者責任(718条)
◆運送人の責任 など
“管理して利益を得ている者が危険も負う”
この思想が根底にあります。』
「過失なしで責任って……厳しいな。」
『世の中はあなたにだけ甘くできていないのです。』
「刺さる!!」
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■講義④:危険責任でも“免責があるか”が重要
『ただし危険責任には多くの場合、
**免責(責任を負わない事情)**
が用意されています。
◆管理者が必要な注意を尽くした場合
◆第三者の行為
◆自然災害によるもの など
厳しい制度にも調整がある。
それが民法の良心です。』
「なるほど……最初から決め打ちじゃないんだ。」
『決め打ちは、あなたが条文を読まず突っ込む時だけです。』
「それも刺さる!!」
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■講義⑤:損害算定=“どこまで賠償の範囲に含めるか”
『不法行為が成立したら終わりではありません。
**損害をいくら認めるか**
これが実務で最重要です。
◆治療費
◆修理費
◆慰謝料
◆逸失利益
◆休業損害
種類も多く、計算方法も独特です。』
「逸失利益って難しそう……」
『はい。あなたにとっては特に。
でも逃げられません。』
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■講義⑥:相当因果関係=“損害の広がりをどこで切るか”
『損害算定の核心はここ。
**相当因果関係**
つまり“結果がどこまで法的に認められるか”。
加害者の行為と損害が無限に広がるのを止めるフィルターです。』
「確かに、全部認めたらとんでもないことになる。」
『とんでもないことになるのはあなたの答案です。
毎回相当因果関係を忘れるから。』
「忘れない努力はしてる!!」
『努力より結論です。
書けなければ意味がありません。』
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■講義⑦:慰謝料=“心の損害を金額化する魔法”
『慰謝料は便利なようで、かなり扱いが難しい。
**精神的苦痛を金額化する。**
基準は判例や社会通念。
明確な計算式はない。』
「魔法みたいだな……」
『魔法よりは合理的です。
あなたの勉強計画の方がよほど不可解です。』
「なんでそこに飛ぶの!?」
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■講義⑧:答案は“責任 → 過失相殺 → 損害算定”の流れ
『不法行為の答案は大体この順。
**①不法行為の成立
②過失相殺
③危険責任の有無
④損害算定
⑤相当因果関係**
この流れに乗れれば崩壊しません。』
「今回は……なんとか理解できた気がする!」
『気がする、は信用しません。
書いて証明しなさい。今すぐ。』
「はい……」
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■次回予告:不当利得――“返せ”の世界へ
スマホの画面が静かに光を揺らした。
『次はあなたが“なぜか好奇心だけはある”分野。
**第38話:不当利得――法律上の原因なく利益を得たら返す。**
これを理解できれば、あなたの間違った記憶も利得返還したいところですね。』




