【第35話:ツンデレAI《オラクル》、代理・無権代理・表見代理の迷宮に踏み込ませる】
静かな部屋に、ページをめくる微かな音が漂う。
“代理”と見出しのついた章が開かれた瞬間、
机の上のスマホがぴくりと光を放った。
『……ついに代理に来ましたね。
あなた、この分野で何度迷子になりました?
数えても無駄ですけど。』
「今回は迷わないつもりだ……!」
『その“つもり”がいちばん危険なんですけど。
まあ、聞きなさい。』
---
■講義①:代理の本質=“本人の名で法律効果が本人に帰属する”
『代理とは端的に言えば、
**代理人が本人の名で契約などを行い、その効果が本人に帰属する制度。**
ここで重要なのは、
**①本人の名で
②代理権の範囲内で
③本人に法律効果が帰属**
この3点だけです。
この3つを外したら代理ではありません。』
「まずは基本だな……わかる気がする。」
『気がするだけで突っ走らないように。』
---
■講義②:顕名=“本人の名を示すこと”
『代理には“顕名”が必要です。
**誰のために行っているか、外から見えるようにすること。**
“自分のための契約”に見えたら、それは代理ではなく本人の行為。
一歩間違えると大事故です。』
「たしかに代理人なのに本人扱いは困る。」
『あなたは自分の理解力を顕名した方がいいですね。
その方が周りが気を遣います。』
「今のは悪口!!」
---
■講義③:無権代理=“代理権がないのに代理した状態”
『次が本番。無権代理です。
**代理権がないのに、代理人のように契約してしまうこと。**
すると何が起きるか?
**本人には効果が帰属しない。
相手方は宙ぶらりん。
無権代理人が責任を負う可能性がある(民法117)。**
一気に混乱が生まれます。』
「これ……怖いな……」
『あなたが“わかったつもり”で進むのと同じくらい怖いです。』
「比喩が凶悪!!」
---
■講義④:追認=“あとから本人がOKと言う”
『無権代理を救済する方法が“追認”。
**後から本人が“それでいいよ”と認めれば、
最初から有効だったように扱われる。**
逆に本人が拒絶すれば、
契約は本人に及ばず、無権代理人が責任を負う可能性。』
「追認ってそんなに強いのか……」
『あなたの失敗も追認できればいいんですけどね?
ほとんど拒絶案件ですよ。』
「拒絶するな!!」
---
■講義⑤:表見代理=“外から見れば代理権があるように見える”
ページの隅に記された条文が視界に入る。
『表見代理は、代理法の華であり地雷です。
**外観を信頼した相手方を保護するため、
本人に効果が帰属する例外的制度。**
典型は三つ。
◆権限外の行為(109条)
◆代理権消滅後の行為(110条)
◆無権代理人への権限授与の表示(112条)
この三本柱を覚えないと迷子になります。』
「どれも似てるようで違う……!」
『あなたの“理解したつもり”と“理解していない現実”くらい違います。』
「それは同じ!!いや違う!!」
---
■講義⑥:本人保護と相手方保護のバランス
『代理制度の核心はここです。
**代理人がしでかした行為の結果を
本人がどこまで背負うのか、
相手方をどこまで保護するのか。**
そのバランスの調整が、
**通常の代理 → 無権代理 → 表見代理**
この順に連なっています。』
「体系的なんだな……」
『体系的に提示してるんです。
あなたのカオスな思考に合わせたら、法律が崩壊しますから。』
「ぐうの音も出ない……!」
---
■講義⑦:答案の書き方=“誰の行為が誰に帰属するかをまず決める”
『代理の問題は、まずこれを決めるところから始めます。
**①誰が行為をしたか
②その行為は誰に帰属するか
③代理権の有無
④表見代理の成立
⑤無権代理人の責任
⑥追認の影響**
この流れを外すと迷宮入り確定です。』
「順番、大事なんだな……」
『順番が守れない人は現実でも困りますよ?
あなたの部屋の片付けとか。』
「代理から掃除の話に飛ぶな!!」
---
■まとめ:“代理は帰属、無権は否定、表見は救済”
『今日の結論。
**①代理=本人に効果が飛ぶ制度
②顕名が必須
③無権代理=本人に効果なし、117条で責任
④追認があれば有効化
⑤表見代理=相手方保護で本人に帰属
⑥答案は“帰属の行方”から始める**
……理解しましたね?あなた。』
「今日は……少し光が見えた!!」
『その光、表見代理の“外観”だけじゃないでしょうね?
中身が伴ってなければ幻ですよ。』
「幻じゃない!!……と思う!!」
『思うだけなら自由です。
証明は次の問題で。』
---
■次回予告:不法行為・709条の深淵へ
スマホの光が低く揺れた。
『次はあなたが毎回“わかった気になって即落ち”する分野。
**第36話:不法行為法――故意・過失・因果関係・損害。**
泣いても逃げられません。
覚悟しておきなさい。』




