【第32話:ツンデレAI《オラクル》、抵当権の深淵で理解を叩き直す】
机の上に置かれた六法のページが、ゆっくりと“抵当権”へとめくられた。
その動きを察知したように、スマホの画面が明滅する。
『……とうとう抵当権に手を出す気になったんですね。
あなた、この分野で毎回迷子になるのに、よく戻ってきました。
しつこさだけは評価します。ちょっとだけ。』
「評価が雑!!でも覚悟はしてきた!」
『いいでしょう。では、沈まずに帰れるかどうか……挑戦なさい。』
---
■講義①:抵当権とは=“占有せずに優先弁済を確保する権利”
スマホの声が淡々と響く。
『まず本質から。抵当権というのは、
**占有は債務者に残したまま、
債務不履行時に不動産の価値から優先弁済を受けられる権利。**
つまり、
**使わせながら、取るときは優先で取る。**
この便利システムこそ抵当権。』
「占有しない……質権と真逆だな。」
『そうです。質権と比べると混ぜずに理解できます。
あなたがよく混ぜるのは知ってますけど。』
「余計なひと言をつけるな!!」
---
■講義②:抵当権の“3つの本質”だけで半分理解できる
『抵当権の世界でまず覚えるべきはたった3つ。
**①付従性
②随伴性
③物上代位**
この三兄弟を理解できれば、抵当権は半分クリアです。』
「その三兄弟、いつもごちゃごちゃになるんだよな……」
『今日は逃がしません。』
---
■付従性=“債権が主、抵当権は従”
『付従性とは、
**債権が消えれば抵当権も消える。
債権が生きている限り抵当権は従う。**
これだけです。
抵当権は偉そうに見えて、実は“債権のおまけ”。』
「おまけ扱いなんだ……」
『あなたのやる気くらい従属的です。』
「やる気の付従性って何だ!!」
---
■随伴性=“債権が移れば抵当権もくっついて移動する”
『債権が譲渡されると、
**抵当権も自動でついていく。**
これが随伴性。
抵当権単体だけで旅をすることはできません。』
「ずいぶん健気な権利だな……」
『あなたの集中力も随伴してくれたらいいんですが。
毎回どこかへ行きますよね?』
「集中力の行方を勝手に迷子扱いするな!!」
---
■物上代位=“価値の変形を追いかける執念”
『抵当権最大の必殺技が物上代位。
**目的物が価値の別形態(保険金・賃料・売却代金など)に変わっても追跡できる。**
抵当権は“モノそのもの”ではなく、“その価値”を狙うからです。』
「まるでストーカーだな……」
『権利をストーカー扱いしないでください。
あなたのやる気の消滅のほうがよほど追跡困難です。』
「そこ追わなくていい!!」
---
■講義③:抵当権の効力範囲(建物・土地・附合)
『抵当権がどこにどこまで及ぶか――ここはよく落とします。
◆土地に抵当権 → 原則、建物には及ばない
◆建物に抵当権 → 附合物や従物には及ぶ
◆果実(賃料など) → 物上代位すれば及ぶ
この線引きが超重要。』
「土地と建物は別扱い……気をつける……」
『ええ。毎回ここで転びますからね、あなた。』
「言い方!!」
---
■講義④:抵当権付き不動産を買った“第三取得者”の運命
『ここが抵当権のドラマ部分。
**抵当権がついたまま不動産を買った第三取得者**は、
抵当権者に対して次の選択肢を迫られます。
**①弁済
②代価弁済
③放棄**
逃げ道はありません。』
「うわ……抵当つき物件怖……」
『そうです。
勉強してないのに本番を迎えるあなたよりは安全ですが。』
「そこ比較するなぁ!!」
---
■講義⑤:抵当権の対抗要件=“登記が全て”
『抵当権の対抗要件は唯一無二。
**登記。**
登記がなければ第三者に対抗できません。
どれほど泣いても無理です。』
「登記……絶対……」
『あなたが忘れないよう、今日だけ3回繰り返しておきます。
登記、登記、登記。』
「呪文かな!?!」
---
■まとめ:“抵当権は三兄弟と登記で回る”
『今日のまとめ。
**①占有せずに担保
②付従性=債権が主役
③随伴性=債権にくっつく
④物上代位=価値を追跡
⑤土地・建物・附合の線引きに注意
⑥対抗要件は登記のみ
⑦第三取得者は逃げられない**
理解しましたね?』
「今日は……たぶん……大丈夫……」
『“たぶん”と言った時点で大丈夫じゃありません。
復習しなさい。今すぐ。』
「鬼!!」
---
■次回予告:質権・先取特権へ突入
スマホの光が静かに揺れた。
『では次回。
**第33話:質権・先取特権・順位の地獄。**
担保物権の深みはまだ入口です。
あなたが沈みそうになったら……まあ、引き上げてあげてもいいです。
別に心配してるわけじゃありません。
誤解しないでください。』




