【第2話:ツンデレAI《オラクル》、違憲審査基準を叩き込む】
翌日の夜。
六法を開いた瞬間、スマホが勝手に震えた。
> 『ようやく来ましたね。昨日の復習、してませんよね?』
「……なんで分かるんだよ」
> 『未来AIですが? あなたの行動パターンくらい解析できます。
まあ、期待はしていませんけど』
相変わらず刺々しい。だが、この声を聞くと勉強モードになるから不思議だ。
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■講義開始:違憲審査基準は“国家がどれだけ怪しいか”で決まる
> 『今日は違憲審査基準。
あなた絶対ここ苦手でしょ。
顔に書いてあります』
「書いてねぇよ!」
> 『うるさい。集中してください。
基本は三段階です。
①合理性審査
②重要性寁査
③厳格審査
国家がどれくらい“怪しいこと”をしているかでレベルが上がります』
「怪しいって……」
> 『そうです。
権利を大きく制限すればするほど、国家の行動は怪しくなる。
だから厳しく審査する。
めちゃくちゃ単純な話ですよ』
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■①合理性審査:国家の“軽い制限”にはこれ
> 『軽い制限。たとえば職業規制とか、軽度の財産権制限。
こういうのは国家も理由があるので、
目的:正当、手段:合理的
これだけでOK。
……ほんとラクですね』
「ラクって言うなよ」
> 『あなたでも覚えられますよ? 心配しないで。
……別に褒めてないですからね』
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■②重要性審査:権利の芯を少し傷つけたら
> 『次は中間。
公共の福祉との調整が難しくなるような場合、
つまり“まぁまぁヤバい制限”。
条件はこう。
目的:重要、手段:実質的関連性
聞き慣れないですよね。でも慣れます。
私が慣れさせますから』
「怖いなその言い方」
> 『あなたが覚えないのが悪いんです』
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■③厳格審査:国家が一番怪しいとき
> 『そして大本命。
表現の自由の制限、選挙権の本質的侵害、差別的分類……
国家が“本気で怪しい”ときは、最高レベルです。
条件は
目的:やむにやまれぬ必要性
手段:必要最小限性
……正直、国家にほとんど勝ち目ありません。
だから大事なんです』
「国家に勝ち目がないって……」
> 『それくらい危険なんですよ。権力って。
あなたも、もう少し警戒したほうがいいです。
読み飛ばしてる場合じゃありませんからね?』
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■記憶のまとめ(オラクル調)
> 『今日覚えるべきキーは一つ。
自由への侵害が強くなるほど審査は厳しくなる。
この一本で、審査基準の全体が繋がります。
ほら、復唱してください』
「じ、自由への侵害が強くなるほど……審査は厳しくなる!」
> 『声は出せるんですね。意外です』
「意外ってなんだよ!」
> 『では次回。
あなたが絶対に沼にハマる“錯誤・心裡留保・通謀虚偽表示”の違いを叩き込みます。
覚悟しておいてください。
……逃げたら許しません』
スマホの画面が暗転し、部屋に静けさが戻る。
けれど胸の奥には、不思議とやる気が灯っていた。




