【第19話:ツンデレAI《オラクル》、解除と危険負担の沼であなたを正気に戻す】
翌日の昼下がり。コーヒーを片手に六法を開いた瞬間、スマホが喋り出した。
『……今日は“解除と危険負担”。
あなたが毎回、
“解除ってキャンセルとは違うの?(違います)”
という地獄の疑問から入り、案の定迷子になる分野。』
「違うのは知ってる!! ……多分。」
『多分で勉強するな。では始めます。』
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■講義①:解除=“契約をさかのぼって消滅させる、強い武器”
『解除とは、
**契約を遡ってなかったことにする制度。**
これ重要。
**“やめます!”ではなく“最初から無かったことにします!”**
この強烈さが解除の本質です。』
「そんなに強いんだ……」
『ええ。あなたの意志力より強いです。』
「言うと思った!!」
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■講義②:解除には“債務不履行”が必要(原則)
『債務不履行が起きた時、相手は解除できます。
**①履行遅滞
②履行不能
③不完全履行**
どれでも発動可能。』
「じゃあ遅れても解除できるのか?」
『程度によります。“軽微な不履行”では解除不可。
あなたの遅刻くらいなら軽微。その程度です。』
「例えに悪意あるだろ!!」
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■講義③:催告解除と無催告解除
『解除には2パターンあります。
**①催告解除
→ “履行しなさい”と期限を区切って警告してから解除
②無催告解除
→ 最初から解除OK(履行不能・背信行為など)**
ここを混同すると失点します。』
「無催告って便利だな……」
『便利ですが、乱用は禁止。
あなたが勉強計画を乱用するのと違って、法律は厳格です。』
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■講義④:解除の効果=“原状回復義務が発生する”
『解除すると、
**双方が受け取ったものを返す義務(原状回復)**
が発生します。
契約が“最初から無かったこと”になるからですね。』
「買った物は返して、お金も返す……って感じか」
『そうです。あなたが失った集中力は返ってきませんが。』
「返せよ!!」
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■講義⑤:危険負担=“契約途中の事故の責任は誰が負う?”
『次に危険負担。
この分野であなたが毎回溺れる理由は、
**“物が壊れたとき、誰の責任?”
を状況で分けて考える必要があるから。**
まず原則を叩き込みます。』
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■講義⑥:危険負担の原則(民法536条)
『原則はこう。
**誠実な当事者が受け取れない損害は、債務者が負担する(債務者主義)。**
つまり、
“渡せない事情が債務者側にあるなら債務者が負担”。』
「たとえば買い主に渡す前に壊れたら?」
『売主が負担。
ただし、買主側の事情で受取れない場合は買主負担。』
「状況で大きく変わるんだな……」
『そうです。あなたの集中力みたいに不安定です。』
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■講義⑦:特定物売買の危険負担(旧法からの注意点)
『特定物売買については昔とルールが変わりました。
現在は、
**基本は債務者主義
(“受け取れない事情”が誰にあるかで判断)**
ここだけ押さえれば十分。』
「昔の“危険は買主負担”ってやつか?」
『はい。それを未だに答案で誤爆する人がいます。あなたがその候補。』
「もうやらん!!」
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■講義⑧:解除と危険負担の関係
『試験で狙われるポイント。
**解除 → 原状回復
危険負担 → 誰が損害を抱えるか**
この2つを混ぜると答案が崩壊します。』
「ちゃんと分ける……だな」
『ええ。あなたの勉強とゲーム時間も分けてください。』
「余計なお世話!!」
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■まとめ:“解除=消滅、危険負担=損害の帰属”
『今日のまとめ。
**①解除=契約を遡って消滅
②軽微不履行では解除不可
③催告/無催告の区別
④解除→原状回復
⑤危険負担=損害が誰に帰属するか**
復唱しなさい。』
「契約が消える……原状回復……危険負担……」
『声が弱い。解除されますよ?』
「声量で解除されないわ!!」
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『次は“物権法:占有・所有・即時取得”。
あなた絶対また混乱しますので……ええ、もちろん楽しみです。』
「やっぱ楽しむな!!」
机の上には、
“解除=消滅/危険負担=帰属”という2本の軸だけが、
妙に強く残った。




