一応は国王
招き人は不老長寿らしい
招き人と一緒に移り住んだ者も不老長寿になったらしい
そんな噂があちこちで囁かれる様になった夏。
当の本人達は領地に引きこもっているので噂の事など何も知らなかった。
「ルークはおるか!」
モコッと地中から現れたのはモファームに乗った国王ことエルフィンだった。
「「「 うぉっ!! 」」」
「「 ぅわぁ!! 」」
パコーンッ! 「普通に現れろ普通に!!」
「いたたたっ、俺一応国王なんだがな、マォ殿・・・」
「国王が普通地中から現れるかぁー!!」
もう1発いっとくか?と手を上げかける。
「すまんすまん、人目に付かぬ方がよかろうと思ったのだ」
「まぁ取り敢えず中に入ろうか、ほらマォも」
ルークに促されて皆家の中に入る。
「それでエルフィン。急にどうした?」
ここでやっと噂の事を知るのであった。
何故に不老長寿という事になっているのやら・・・
そりゃまぁこの世界の人にしたら長生きになるんだろうけども。
不老ってなんだ不老って。そりゃどっちかってと童顔な方だから少しは若く見えるかもしれんがそれなりに年取った見た目だと思うんだがな。
などと思っていると陛下と目が合う。
「ん? どうした?」
「いや、やはり我等から見れば不老長寿に見えなくもないなと。
実際、ルークやダルクも若返ったようにすら見えるんだが?」
そうか?・・・ そうかも?
バランスよく食事して適度な運動もしてストレスフリーでぐっすり眠れば・・・
若返ったと言うよりも今までが心身共に不健康過ぎただけじゃ?・・・
「なるほど、食事に気を付けて心労を無くせば良いのか」
「まぁ政に関わってる限り心労が無くなる事はなさそうだが」
だろうなぁ、古狸達と関わってる以上はストレスだらけだろうと思う。
頑張れ陛下、出来れば王太子に譲位するまでに少しでも古狸達を何とかして欲しいものだ。
王太子がストレスで禿げたらかわいそうだし。
「俺は禿げてもよいのかっ!」
あ、声に出てたらしい。すまん・・・
「噂はあくまでも噂でしかないからお前達が姿を見せねばその内消えると思う。
問題はその噂を真に受けてマォ殿が住んでいる場所に
自分達も住みたいと言い出す者が居る事だ。
平民の中でも職人が多いのだが一部の貴族連中からも嘆願書が出ておるのだが
俺にどうしろと!俺が一番ここに来たいのだが?」
あー・・・ね?
陛下に言えばなんとかなるとか思ってるのか。
そもそも不老長寿目当ててここに住みたいとか却下だ却下。
獣人達や魔獣達に被害が出たらたまったもんじゃない。
そもそも獣人達や魔獣を毛嫌いしてただろうがよ。
「却下だ却下。
そりゃね?職人は少数なら欲しいと思ったけども。
んな不老長寿目的とか甘い汁だけ吸いたいとかんな連中いらんがな。
だいたい人が増えたら村どころかデカイ街とかになっちまう。
めんどうな事が増えるだけじゃねぇか。
人に頼らず自分達で健康に過ごす努力すりゃええだけじゃん」
「今までそんな概念がなかったからな。
特に貴族は使用人任せで騎士や兵士でもなければ運動とは縁遠いし
平民は平民でとにかく空腹が満たせればよい感じだしな」
「まぁ本当に村でも興すとなったらちゃんと求人掛けて面接試験行うさ」
「その方がよいだろうなぁ、あ。俺も引退したら此処に住むからな?」
「陛下が?・・・
えー・・・・ メンド・・・ゲフンゲフン」
「マォ、一応あれでも国王な訳だから・・・」
「一応とか言うなよ」
「陛下がくるなら妃殿下も来るって事じゃろ?
じゃぁ宿題を出そうか。
自分の身の回りの事は自分で出来るようになる事。
まぁ料理は除外してもいい。
掃除洗濯に着替えや入浴。料理以外全部だ」
「それが条件か・・・」
「そう、最低条件!」
「わ、わかった」
しっかり体も鍛えておくと言って陛下は帰って行った。
来た時と同じようにモファームにのって地中から・・・
シールドを貼っているから土に当たる事はないらしいけど、なんだかなぁ。
なんか見たく無いウニョウニョ系とか見えそうじゃん・・・
ゲジゲジとかムカデとかさ・・・
夕食後 庭で空を見上げながら溜息をつく。
儂普通にのんびりと暮らしたいだけなんじゃけど。
「無理だろ」
「無理だな」
「無理よね」
「えー・・・」
「そもそも黒目黒髪がまず目立つ」
「なるほど・・・染めるかウィッグ被るか」
「ウィッグだと蒸れるぞ・・・」
「・・・ それはあかん。禿げる」
染めるつってもブリーチ剤とかなさそうだもんなぁ・・・
やっぱり町とかに行かないのが良いのかもしれん。
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