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おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
一章:城内
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宰相閣下の意外性①

そして今 王妃殿下専用のサンルームで殿下とお茶を飲んでいるのだが。


「本当に胸がスカッといたしましたわ!

 我が息子ながらまったくもって腹立だしい。

 私でもあの どつく 行為は出来るかしら?」


いややらなくていいしやらないでいただきたい。ほら侍女達も頷いてる。


「私達もスッキリいたしましたし護身にあの どつく をご伝授いただきたく」


ゴフッと茶を吹きそうになったのは仕方が無いと思う。

ご令嬢方なら護身術はもっと違う物を覚えた方がよいかと・・・

このままではよろしくないので話の流れを変える事にした。


雑談というか、この国について色々と聞いてみる事にした。

生活水準とか基礎知識とか、主に答えてくれるのは侍女達だ。

聞いていて驚いたのが、この国の平均寿命だ。


「え! 平均寿命って60?! 嘘でしょ!儂後1年?!」


「「「「 えぇ?! 」」」」


殿下と侍女一同が驚きの声を上げたのだがそれはどういう意味合いでだろうか。


「あのマォ殿。失礼かとは思いますが平均寿命まであと1年と言う事は・・・」


「今59ですね」


「信じられませんわ!私と同じかと思ってましたわ」


いやいや殿下35だと聞いたし儂の上の娘と同じ年じゃないか。


「マォ殿の国では平均寿命はどのくらいですの?」


「確か80は超えてた気がしますね」


「「「 ・・・ 」」」


皆絶句した、そりゃそうなるだろう。

この国からすれば80なんて未知数だろう。


「この国との違いは他にもありますの?」


まず魔力や魔法が存在しないと伝えればやはり驚かれ

代わりに科学という分野が進み生活には電気を利用した器具が活用されていると伝えればまた驚かれ

移動に使は車や電車・飛行機・船は簡単な絵を描いて説明し驚かれた。


「儂の主観ではあるけれど魔法文明が発展しているのならそれを大事にし

 異世界文明は取り入れない方がよいと思いますよ?

 環境問題とか生態系の調和とかもあるし何より専門知識は儂持ってないですし」


「そうよねぇ。でも・・・お菓子も駄目かしら?

 異世界のお菓子、興味あるのよねぇ」


お菓子・・・お菓子くらいなら大丈夫だろうか?

ただ儂が作れるお菓子は限られてくるし素材があるのかもわからん。


「そうですね、儂はこの世界のお菓子を知らんのでなんとも言えんのですが

 素材があって機会があれば作って見ますよ?」


「まぁ嬉しいわ!」


王妃殿下のみならず侍女達の目までがキラキラ輝いている。


「ところでマォ殿はこのまま王城で暮らす気はないのかしら?」


そう、これは何度も打診されてはいたけどお断りしている。


「見ての通り儂ガサツで口も悪いので無理ですね。

 スカートとかドレスも無理ですしヒールとか論外ですし。

 上品と言う言葉は遥か昔に家出したままですしね?」


「でもねぇ、貴方の髪と目の色。その漆黒の色は目立つのよねぇ。

 それに・・・私が寂しいのよぉ」


いや寂しいのよぉと言われてもね?そこは陛下に甘えていただきたい。


「マォ殿の処遇についてでございますが。

 後程宰相閣下がご相談申し上げたいとの事でございます。」


宰相殿・・・誰だっけと悩むも顔が浮かんでこない。


「承知しました、閣下のご都合がよい時に伺いますとお伝えください」


会えば解るかと思ったし解った気がしたので叫んでしまった!


「げ!無表情男!」


ブフッと部下らしき人物が顔を背け

当の本人であろう人は椅子から仰け反っていた。


「げ、とは何ですか失敬な。私は無表情男と言う名ではありませんよ」


失敬なと言われても失敬なのはどっちだと言いたくなる。


「貴殿とは初対面だと思いますが」


言われてみれば宰相閣下は少し表情があるような。無いような。

あの時はほぼ見えて無かったしなぁ。

でも声に抑揚はある気がしなくもない。


「初日に遭遇したぶっきらぼうな無表情男に似てたんですよ、失礼しました」


「似ていた・・・ですか。確か貴殿の初日は・・・

 ああ、解かりました。おそらくは私の弟の子、つまりは甥ですね。

 甥は第二王子殿下の側近候補だったはずですので」


心当たりありまくりだったんだろう、大きな溜息と共に首を振っていた。


「貴殿も災難でしたね。

 この国の宰相として、また伯父としてもお詫び申し上げます」


「謝罪は本人以外からは必要ないですよ。

 国として召喚したのならまだしも、そうでないのならば気にしないでください。

 まあ伯父としてというのであれば受け取ります。

 なのでその話はこれで終わりとして本題に入りませんか?」


儂としてはあまり蒸し返されたくない。怒りが再燃焼するので。


「解りました。

 では貴殿の今後の身の振り方なのですが何かご希望は?」


「元の世界には無理なんだよね。

 城を出て平民として普通に暮らしたい。というのは無理ですかね?」


え、なにその微妙は表情は。


「元は平民というよりも貴族階級の無いお国でしたか。

 うーん・・・

 実を申しますとですね。こちらの書状の山見て下さい」


書状の山? え、これって宰相閣下の仕事上の書類だと思っていたんだが。


「閣下の仕事上の書類の山では?」


「失礼な私は仕事を積み上げるほどの無能ではありませんよ」


フンッと鼻で笑われた、そりゃ失礼。


「城内ではすでに貴殿の事は周知されております。

 そして昨日の件がどこぞの騎士から広まったらしく・・・」


「あぁクレーム・・・苦情ですか」


「その方がマシでしたね」


クレームじゃないのか、それならなんだろう。


「養子縁組希望に婚姻の申し込み

 貴殿に興味を持った貴族が名乗りをあげておるのですよ」


「はぁぁぁぁぁ?! そいつら儂の年知らんだろ!何考えてんだ」


あ・・・ ゴホン。


「失礼、取り乱しました」


そこ、そこの部下っぽい人。肩震えてるよいっそスッキリと笑ったらどうかね。

あれ宰相閣下も肩震えて・・・こっちは怒りで震えてるのかな。


「貴殿は・・・なるほど。

 聞いた話のままなのですね。楽な喋り方で構いませんよ。

 私としても心情は同感ですからね。

 年齢うんぬんは置いておいて興味本位での申し込みとかありえませんよ。

 中には貴殿を利用しようと考えている者もいるでしょうし」


「えー・・・ 儂くそ迷惑なんじゃが。

 あ、お言葉に甘えて素で話しますね」


「では私も 少しばかり素で話すとしましょうか」


と何やらテーブルに置かれたスノードムみたいな物に手を添えた。

ふわんと光が広がった、何かの魔法だろうか。


「遮音の魔道具を発動したのでこれで室外に声は漏れませんよ」


と笑顔を向けられた。なるほど叫んでも大丈夫と。


「正直いいますとね。

 こんなくだらない書簡を送ってくるくらいなら

 まずは自分の仕事に取り組めと!

 本人に会った事もないくせに自分の都合のいいような招き人像を思い描いて

 実際あったらこれじゃない感出すに決まっておる、失礼極まりない!

 まずは本人と会って為人(ひととなり)を知れと!」


これは宰相閣下もかなりのうっぷんが溜まっているようだ。


「閣下落ち着いて下さい」


部下ぽい人がそっとお茶を差し出してくれる。

一口飲んで、旨かった。茶葉がいいのか煎れる腕がいいのか。両方か。


「うむ、この話はそうだな。どうだろう夜酒でも飲みながら話さぬか?」


行き成り飲み会の誘いかい!

まあストレス発散なら飲みながら話すのがいいのかもな。


「防音完備の部屋でなら。きっと叫びそうだし?そこの部下くんも是非に」


と巻き込んでみたら 思い切り眉毛が下がった。

宰相閣下は酒癖でも悪いのだろうか。

読んで下さりありがとうございます。

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