塩バターパン
コッキョクウクウコーコォォォォ
ゴッギョグゥグゥルドゥーゥゥゥ
クォケクォッコォォォォォォォウ
ササミ・モモ・コケコ① 3匹の声で毎朝起こされる。
いやいいんだよ? 前は鶏の鳴き声で起床してた訳だし。
でもね?ちぃとばかし早すぎやせんかね? まだ日の出前なんじゃけども?
渋々起きて暖炉と竃に火を起こしに行く。
さすがに冬の朝は各自家で食べる事にし、前日にパンとスープを渡してある。
我が家は儂とコレットが居るからパンも焼き立てを食べれるけども。
ふっふっふ、今日は塩バターパンに挑戦するのだ。
ちょっと柔らかめのハードパン生地にバターを挟んでくるくるっとロールパンみたいに丸めて、岩塩をちびっと乗せて焼けばいい。
たぶん、皆は食べた事がないから驚くと思う。
旨いんだけど食べ過ぎには注意。結構高カロリーなんだよ。
パン焼き窯がないけど、どうパンを焼くのかって?
ふっふっふ、これもTVのバラエティが役に立ったさ。窯の上に釜をさかさまにして載せて、薪を窯の奥に移動させて金網に乗せたパン生地を入れレンガで閉じればいいんだよね。
ちなみにレンガはダルクが魔法で作ってくれた。ちゃんと耐熱レンガだよ!
たぶんこのやり方でピザも焼けると思うので、そのうちやってみようと思う。
暖炉の火もいい感じになったのでスープ鍋を掛けておく。
皆が起きる頃にはちょうど暖まるだろう。
後はベーコンを焼いてベーコンエッグにしてサラダを付ければいいんじゃないかな。
やがて皆起きて来たので朝飯にする。
「うぉっ、なんだこれ」
「外はカリッ、中のパンはふわっ」
「そしてじゅわっと溢れるこのバター!」
「「「「 うまぁぁぁぁ!! 」」」」
そうだろうそうだろう。儂も初めて食った時は感動したよ。
あれ? コレットが大人しい。バター苦手だったかな? プルプル震えている。
「マォ、これは革命だっ! きっと皆飛びつくぞ!」
勢いよく立ち上がり椅子が倒れる。
気持ちは解る、解るが落ち着け。飯中だぞコレット。
「あ・・・ すまない」
「いいか、コレット。
パン屋を開くならともかく儂はこれ他の人に教える気はないよ?」
そもそも考えてみて欲しい。儂等はダンジョンにも行けるしコケコも飼ってるからいいけど玉子もバターも庶民には高価な物なんだよね。そのバターをたっぷり使ってあるパンだよ?単価幾らになると思ってんの。
そもそもパンが好きな人とか料理人なんかは自分で創意工夫してりゃそのうち辿り着くだろうよ。
パンなんて先人の知恵と工夫のお陰で色々と種類が増えた訳だし。
「た・・・確かに」
この世界にもサンドウィッチがあるんだから、絶対いつか誰かが辿り着くはずだよ。
「この場所、と言うか我が家ならではのパン。で良いではないか。なぁマォ」
「んだ、母の味。お袋の味だとでも思っとけ」笑
「おかんの味と言われても色々とあり過ぎてな?」
「確かに、マォど・・・マォならではの食事や食べ物は数多いで・・・ヨナ」
「そうか?」
「自覚を持った方がいい。マォ」
「わかった」
まぁそう言われればそうなのかも?
どのみち儂の作った物は家族(獣人込み)にしか食わす気な・・・・
あかん、陛下が泣くかも。陛下達込みにしよう(汗)
忘れてたとかじゃないよ、うん。忘れてないからね・・・
食後 獣人達とアル・リオルは狩りに出かけると言う。
そろそろ冬ならではのムスクスと言う大型の牛が現れるらしい。
このムスクス、長毛で毛は毛糸になるし皮は丈夫なのでブーツや防具にも利用出来、肉はすこぶる美味しいらしい。骨や角も色々と使い道があるので捨てる部分は蹄と歯と一部の内臓だけらしい。優れ物だね。
ただ制限もあって1冬に1世帯で1頭だけらしく、5人以下の世帯は声を掛け合って1頭を分け合うらしい。
確かアラスカとかでも種類によって年間の狩猟数決められてたきがする。
じゃないと乱獲する阿呆が出てくるしね。もっともどの世界にもルール守らない密猟者は居そうだけど、この辺境の地でそんなことやろうもんなら潰してやる!
「心配しなくてもそう簡単には辺境の森には入れないだろうな」
「まぁもしも入れたとしても・・・ねぇ?」
「チョコやカカオが罠仕掛けてくれたし、
サブレ達も時々巡回してくれると言っていたし」
「え?! サブレ達は冬眠せんで大丈夫なん?」
「魔獣だしな?」
「なるほど?」
そっか、普通の蛇みたいに冬眠するのかと思ったらしないのか。そっかそっか。
どうも儂の中では魔獣と言う感覚がなくて巨大な蛇扱いになってしまう。
だって居なかったし? そのうち慣れていくだろう。と言うか別に慣れなくても普通の蛇扱いでも困らない気がする。
余談だがササミが連れて来たコケコは10羽。雄2の雌8。
鶏小屋に入らず獣舎でササミと一緒に過ごして居る。
ササミ曰く 寒いから冬の間だけ、だそうな。
鶏が鶏を飼うってどうなん・・・
読んで下さりありがとうございます。




