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おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
二章:道中
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森の中の野営

テクテクと歩く

というよりはガサガサと歩く感じだが。

歩き続けて空がオレンジ色になり始めた頃、目的の開けた場所に辿り着いた。

なるほど、ここなら他の人と遭遇しにくいだろうし、小さな焚火くらいなら大丈夫そうだ。

とは言ってもさすがに肉は焼く事が出来ない。匂いで魔物や獣を引き寄せてしまうからだ。ならばどうしようか。

ここは塩漬け肉の出番かな。塩抜きしてシチューにしてしまえばいい。根菜類も入れて煮込むだけだし、焼くよりは匂いも出ない。それに意外と重いし・・・

よし、そうしよう!と決めて準備に取り掛かる。

皆は寝転がれるように邪魔な石とか枝をポイポイ片付けている。


「なぁマォ」


コルディがこちらにやって来た。


「どうしたコルディ。あ、コレットのほうがいいか?」


「どっちでもいいんだが・・・いやコレットの方がいいのか。

 姓はウォーカーになったんだしな。となると一人称も俺じゃマズイか」


「まぁ誰も気にせんとは思うが」


「確かに。それでそのマォはどう呼ばれたいかと思ってな。

 マォのままでいいのか、おかんと呼んだ方がいいのか」


「ん?それこそ好きに呼んでくれていい」


皆好きに呼んでるしなぁ。ダルクくんなんかいまだにマォ殿だし。さすがに殿は止めてもらいたいんだがな。


「そうか、慣れるまでは今まで通りマォで。慣れたら・・・おかんと呼んでみたい」


どうやら今まで実母は「母上」で気軽な呼び方が出来なかったらしく「おかん」呼びに憧れがあるものの恥ずかしいそうな・・・

母上と呼んでたって事はお貴族様?


「今は勘当されて除籍もされているからなぁ」


なるほど、きっとあれだよね。料理の道に進みたいってのを反対されて家を飛び出たとかそのあたりだろうなと思い聞いてみた。


「何故解った!」


うん、よくあるパターンだよね、言わないけど。


そんな話をしながら調理を進めていく。

シチューとパンだけになってしまうけど、根菜も肉もたっぷりだからまぁ大丈夫だろう。


と思ったのに足りなかった。

皆どんだけ食うんだか。出来る事なら腹いっぱい食わせてやりたいが野営の時は我慢してもらうしかない。食材にも限りがあるし見張りもしなければならないからね、腹一杯だと眠気が襲ってきちまう。

この分だと普段から多めの食事が必要になりそうなので定住地に着いたら大鍋2つ3つ買おうと心に決めた儂だった。


食べ終わった後は男女別に別れて簡易シャワーを浴びた。水魔法でシャワーのような水を振らせて火魔法で暖める感じ?よく解らんけどシャワーをイメージしたら出来たので皆にも浴びて貰ったのだ。


「凄いなこれ。でもこれを人数分維持するとなると魔力量が大変そうだな」


「そこはほら、マォ殿ですから」


「「「 あ~・・・」」」


うん、ここに居るメンバーは皆知ってるもんね。

魔力量が測定不能の底なしなの・・・


本当ならゆっくりと風呂に浸かりたかったけど、さすがにちょっと・・・

岩場だったら作れたかもしれないけど。いやどうだろう・・・

まぁシャワーだけでもスッキリするのでよしとする。


最初に儂とコレットが見張りをする事になった。先に見張りをやって後はゆっくりと寝てくれとの配慮からだ。次にアルが見張りをする。アルはハンター上がりの騎士だし1人でも慣れているし若いから。

最後にルークとダルクくん。内勤が多い2人だから4時間まるっと寝て体力を回復させて欲しいとアルが言っていた。

2時間ずつの3交代。その後に朝食と後片付けをして夜が白む頃に出発予定になっている。


皆に寝て貰いコレットと2人で見張りにつく。

と言っても周囲を気にしながら小さな焚火が消えないようにするだけなので楽だ。

と言うより暇だ・・・


お茶を飲みながら自然と昔話になっていく。

昔話つっても子供の頃の話とかあっちの世界の話とか。


鉄の猪(くるま)鉄の鳥(飛行機)?! え?!鉄の蛇(電車)鉄の蚯蚓(地下鉄)も?!」


どう例えようかと思ったが明治時代の例えを引用して伝えてみた。


「モファームのように跨るのではなく腹の中に入るのか!恐ろしい」


当時の人達も見た事が無く聞いただけならこんな反応だったんだろうか。

確かバターも牛のヨダレだと思われてたんだよなぁ・・・知らないって恐ろしい。


「マォの世界は不思議だな。魔法が無いのに便利な物が多いな」


「そうだなぁ、物が豊かで便利にはなったけど。

 心の豊かさとか自然の豊かさはこっちの方があると思うな儂は。

 便利がゆえの不便ってのもあるしな。」


ネットだのスマホだのテレビだのって全部電気在りきだもんなぁ。


「無きゃ無いでなんとかなるもんさ、今なんとかなってるもんよ儂」


そう意外となんとかなっている。

人間とは慣れる生き物だんだなとつくづく思った。


その他にもお菓子の話で盛り上がった。

昔ながらの駄菓子、当たり付きの紐飴とか黄粉棒とかはこっちでも流行りそうだとコレットが言う。確かにそれなら作れそうかもしれない。型抜きなんかは大人もハマりそうかもしれない。作れるかは・・・無理だな。

そんな話をしながらもう少しで交代時間に成ろうとした時 

茂みからガサゴソと音が聞こえた。


読んで下さりありがとうございます。

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