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おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
一章:城内
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おかん、どんより

あの後ぐっすりと寝て疲れも取れてすっかり体も元通りになったものの、城外への外出禁止にはなるし、アル以外の護衛が2人も付くようになるしで正直鬱陶しい。軟禁生活じゃんこれじゃ。


確かに心配は掛けたかもしれないけどあれは不可抗力だろう。

誰が予想出来るよ、ササミがサイクロプスの()()で遊んでぶん投げられたあげく気流に乗っかって飛ぶ、流されるとか!予想出来る人がいるなら教えて欲しいものだ。


そもそもがだ。

儂は城下町でも辺境の地でもどこでもいい、平民として自由気ままに暮らしたかったんだ。

それを貴族連中が物珍しがって自分の所有物にしたがってるからって城内に留め置かれて。

いくら菜園の隅で畑仕事させて貰っても、騎獣達と触れ合っていてもストレスはどうしたって溜まる。

元の世界には帰れない、自由に外出も出来ない、行動制限もされる。

そう、結局は煙草も買いにいけていない。

よく小説などでは城や貴族の暮らしに順応してたりするが、感心するよ。

あ、あれか若いから順応性も高いって事か。むぅ、若さだけはどうにもならん。


儂人と関わるのがあまり好きではないんだよな。ネットの中、ゲームとかなら平気だけど。だから僻地に移り住んだってのもあるんだけど。

たまに町に出て買い物をする程度の距離感が儂にとっては丁度いい。

人に合わせるのが嫌だとかではなく、どうやら変に気を使いすぎる傾向があるらしく・・・気疲れしやすいんだよ。後は視線が気になるってのもある、これは精神疾患の症状の1つらしい。儂なんか変なんじゃろかと不安が襲ってきてパニック発作が出てしまう時があるんだよね。

今はだいぶん良くなってきてはいる、いたと言った方がいいか。

この世界に来てからはあまり気にしてなかったし、気にする暇もなかった。

なのに、こないだの一件から護衛が増えたり、騎士や兵士が様子を見に来りと人目にさらされる事が増えて非常に息苦しさを感じてしまっている。

心配してくれるのはありがたいんだ、本当に。でもこれはいささか過剰すぎないだろうか。


そんな訳で儂はだんだんと食欲も落ちて行き、獣舎の掃除と畑仕事を少々以外はほぼ外に出なくなってしまった。そうもっぱらの引きこもりライフである。

アルや騎獣達は心配してくれるけど、曖昧に笑う事しか出来ないでいる。

誰かに愚痴を言ったところでどうにもならんと思うから。自分で気持ちを切り替えていくしかないのは解っている。解っているから出来るのかと言われれば無理だ。心が気持ちが付いて行かないんだよ。


ある夜 閣下が言った。


「一部の貴族がマォ殿を危険にさらしたとササミの処分を陛下に訴え出ている。

 この際だから騎獣も不要なのではないか

 モファームで良いのではとの声まで上がり始めている」


なんだと?

そりゃ確かにササミが原因と言えば原因だが。だからと言って処分てなんだ?

んな事言うなら儂をここに呼んだあの誘拐王子の処分が先だろうが。幽閉だの再教育だのっていいながらあの王子は何1つ変わってないって噂を聞いている。


「そうか、あの誘拐犯である王子は寛大な処置を求めて

 騎獣であるササミには厳しくしろと。

 今まで共に戦って国を守って来た騎獣達も不要だと。

 解った。

 閣下、いやルーク。儂決めたわ。要らねぇつーなら騎獣連れてここ出て行くわ。

 なんであの王子には甘い処分で儂軟禁生活送らんとならんのじゃ。

 なんで騎獣達が不遇されんにゃならんのじゃ、納得いかん。

 陛下も陛下で・・・いやもぉいいや。いうのもめんどくさい」


「マォ殿、ここを出てどうするつもりだ」


「人間その気になりゃどうとでもなるさ。

 それにどうする気かなんて言う気もない。探されても連れ戻されても嫌だ。

 生きた屍の如く覇気のない生活とか儂らしくもない。

 そうだよ、なんで我慢してんだよ儂。儂もっと自由に生きていいはずじゃね?」


「俺はおかんに付いて行く。駄目だとか言うなよ、俺達は親子なんだからな」


「アル、お前仕事があるだろ」


「ふっ、おかん。俺の仕事はおかんの護衛だぞ?

 別に国から給与の支給を受けずとも蓄えはあるしハンターになってもいい。

 どうとでもなると言ったのはおかんだろう?」


「まてまて、お前等少し落ち着け。俺の立場もあるんだ」


「ルークは宰相だしなぁ。よし、今の話は忘れろ聞かなかった事にしろ」


「できるかぁーっ!」


「えー・・・」


「えー、じゃない。3日。3日待て。

 3日じゃなくてもいい、2日でなんとかする、してみせる」


「なんとかするって何を?」


「重要案件だけ適当に片づけて引き継いでくる」


「「ん?」」


「俺も付いて行く!」


はいぃぃ? 何故に!!


「あの時どれほど心配したと思うのだ、俺だけ置いて行かれるのはもう嫌だ。

 気が付いたんだよ。

 マォ殿が好きだと思うこの気持ちは人として好きなのだと思っていた。

 だがどうやら違ったらしい。

 マォ、この先共に居させてくれぬか」


ちょっと待て。

何を突然言い始めた? あれか、儂の此処出て行く宣言が衝撃過ぎてパニックになってるのか。宰相が城離れてどうすんだよぉ!


「ルーク、落ち着け? な? 冷静に考えろ」


「俺は冷静だぞ。俺とてそろそろ城務めを辞めてもいい年齢なんだ。

 余生を好きにしてなにが悪い」


ん? そう言えばルークの年齢知らんな。幾つだろう。


「今更だとは思うがルーク幾つだ?」


「45だ」


おっと。意外と年行ってた。見た目的にアルよりちょい上か同じくらいかと。


「アルと同じくらいかと・・・」


「俺の一族は見た目が若いんだよ、童顔なんだよ」


なるほど、それはそれで苦労があったらしい。眉間に皺が寄っている。


「別に伴侶にしてくれとは言わぬ。ただ一緒に暮らしたい。

 傍に居たいのだが駄目だろうか」


儂は今何を言われた? 一瞬呆けたのは仕方がないと思うんだ、許して欲しい。

娘よ、おかん今プロポーズもどき受けたんじゃけど?

まさかこの齢で言われるとか思わんかったんじゃけど?

いやこれ夢かな? 儂死の間際とかで長い夢でも見ちょんじゃろうか。


「おかん! おーい! 戻って来てくれ」


はっ・・・ 夢じゃなかった。


「ルーク、それ本気で言ってんのか?

 リオルはどうすんだよ」


「恐らくは一緒に来ると言い出すだろうな。

 下手をすれば騎獣騎士団がまるっと付いてくるかもしれぬ」


はぁぁぁ?! 何でそうなる。それはマズイヤバイ。謀反とか言われそうじゃね?


「マォも先日の件でおおよその察しがついたと思うが

 この国では未だに人族と獣人族との隔たりがある。

 陛下もこのままではいかんと何とかなさろうとはしているのだが

 カビの生えた古狸共がジャマをしくさっ・・・ゲフンゲフン」


今古狸つった? カビの生えた古狸って。それってお貴族様の事だよな?

儂つくづくお貴族様と遭遇しなくてよかったと思った。

儂の前で騎獣や獣人の事を悪し様に言われたら必殺タマ潰し発動しそうだし。


「とにかく2日でいい、待ってくれ」


うーん・・・儂が城を出て行くだけの話がなんか大事(おおごと)になりそうなんじゃけど。

おかしくね?・・・

読んで下さりありがとうございます。

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