第46話〜アルフィの絆 1〜
シェリナーの後を追って、一行は扉の奥へと進んだ。
通路は薄暗く、途中途中にある蝋燭の火だけが、道を照らしていた。
すると、通路の奥に、白い扉がぼんやりとだが見えた。
『扉までたどり着けたわね、皆さん』
突然、シェリナーの声が通路に響いた。
「シェリナー、どこにいるんだっ!」
「姿を見せなさいっ」
フォルカとクラスが、声を出す。
すると、軽く笑ったシェリナーの声が聞こえた。
『ふふっ、残念だけど私はもう近くにはいないの。声はそこにある音響素器を通して流しているの』
扉の上側に、箱の様なものが付いていた。
恐らくあれが、シェリナーの言う『音響素器』なのだろう。
『さあ、早く部屋に入ってちょうだい。中で対戦相手が待ってるわ』
「対戦相手・・・フィニカ様か?」
ドールの一言に、シェリナーは鼻で笑った。
『違うわ、最初の相手は[重剣のセレン]よ』
「セレンちゃん・・・」
ユニィの頭に、親しき友の顔が浮かぶ。
そして、アルフィの村で約束を交わしたことも、脳内をよぎる。
「・・・行こう、みんな」
ユニィがみんなに、言った。
それに一同頷き、扉を開いた。
扉の向こうには、広い部屋があった。
その部屋の中央に、セレンの姿があった。
「・・・来たね」
その一言と共に、セレンの手に大剣が握られる。
みんなが戦闘態勢をとった瞬間、
「ここは、私がやるよ」
ユニィの声が響いた。
フォルカは口を開こうとしたが、彼女の目を見て、黙り込んだ。
ユニィの目から感じたもの・・・それは“覚悟”。
セレンと戦うことに対しての、強い覚悟を感じたのだ。
「ユニィ嬢ちゃん、おもいっきりやってきなっ!」
「うんっ!」
ウェルトが背中を押すと、ユニィはセレンの方へ走って行った。
その姿を、残りのメンバーはじっと見ていた。
「ユニィちゃん・・・」
セレンの剣先が、少し下がる。
しかし、セレンの目は強い意志を宿したままだった。
「セレンちゃん、私・・・セレンちゃんとぶつかるのはもっと先だと思ってた」
「私もだよユニィちゃん・・・こんなに早く来るなんて、思ってもなかった」
セレンの周囲に、緑色の光が集まり始める。
それに合わせて、ユニィの周囲には、赤い光が集まり始めた。
セレンが再び、剣を構える。
そして、次の瞬間・・・
「ハアァァッ!!」
セレンの周りの光は風となり、彼女の体を高速に移動させた。
それに対してユニィは、動かず光を集め続けていた。
次の瞬間、セレンがユニィの背後に出現。
(もらった・・・!)
大剣をユニィに向かって振り下ろそうとした、その時だった。
「『ユニィィイィ・・・」
ユニィの口が動いた。
その瞬間、彼女の体の周りに風が発生した。
「ハリケーンッ!!』」
「っ!!?」
風は竜巻となり、セレンの体を容易く上空に吹き飛ばした。
彼女も風素スティアを使用し、自分の体をゆっくりと地面につける。
「うぅっ・・・」
セレンは、着地と同時に右肩を押さえる。
風で巻き上げられた時に、自分の大剣で負傷したのだ。
「大丈夫、セレンちゃん?ケガしたんじゃ・・・」
ユニィが心配そうに言うと、セレンは口元に笑みを浮かべた。
「全然平気だよ、ユニィちゃん。だから・・・まだまだ私の本心、受けてもらうよユニィちゃんっ!」
再びセレンは、大剣を構える。
その姿に、ユニィの顔にも笑みが浮かんだ。
「そだね・・・来てよセレンちゃんっ!」
二人のスティアが、輝きを増した。