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第41話〜聞きたかった本題〜



「・・・みんな揃ったことだし、アヤさんにあの事を聞いてみよっか」



赤くなった頬を撫でながら、フォルカが言った。


先ほど、エリアルが無事生存していた嬉しさに、彼女に抱きついてしまった。


それが恐らく原因で、エリアルに思いっきりぶたれたのだ。



「・・・そうねっ!」



エリアルが顔を赤らめそう言うと、残りのメンバーも頷いた。



「私に聞きたい事って何かしらぁ?」


「実は、素石の事について、聞きたい事が・・・」







「・・・ニグちゃんが、フォルカ君のお兄ちゃんのフィニカ君、て事でいいのかしらぁ?」


「はい、そうです」


「しかもぉ〜・・・みんなどころか、弟であるフォルカ君の事でさえ覚えていないって事?」


「はい・・・」



アヤの言葉に、重々しく口を動かして答えた。


他のメンバーも、黙って耳を傾けていた。



「ミセットのシスターには、アヤさんなら分かるかもしれないと言われたので、僕達は貴女の元へ来ました」


「そう・・・」



そういって、アヤは少し黙り込んだ。


そして、しばらくして口を開いた。



「それは多分、スティアが関係あるわね」


「スティアが・・・ですか?」



フォルカの言葉に、アヤは頷いた。



「知らないなら教えてあげるわね。ユニィちゃん、クラスちゃん、ドールちゃん、こっちに」


「はぁ〜いっ!!」


「わかりました」


「了解した・・・」



三人がアヤの近くで一列に並ぶ。


すると、アヤがヒソヒソと三人に何か話した。



「じゃあみんなには、スティアの性質について教えるわね」



そういって、アヤは三人に合図した。


すると、ユニィが風素スティア、クラスが炎素スティア、ドールが水素スティアを掌の上で小規模に収束した。



「この三つのスティアは、素質や練習で扱えるスティアで、名前通りに火や水、風を操るわ」



そういったら、三人に「もういいわよ」と言って下がらせた。


そして、今度はウェルトを呼んで、光素スティアを収束させた。



「そして、ウェルトさんが出している光素スティア。これと闇素スティアは、人として生まれた時にどちらがその人に合っているかが決まるわ」



そういって、アヤは素石の入った袋から、闇素石を取り出した。



「この二つのスティアは他とは違って、制御する条件の様なものがあるの。ウェルトさんの扱う光素スティアは、『心の強さ』に応じて威力や使い方が変化するわ」


「心の強さ・・・ですか?」



フォルカの言葉に、アヤは頷いた。



「そうよ。ウェルトさんは自分の意志を貫いているわよね?彼の場合はその揺るがない思いが強さであり、光素スティアを扱える条件ね」



そういうと、アヤはウェルトにお礼を言って下がらせた。



「そしてニグちゃん・・・フィニカ君が扱っていた闇素スティアだけど、これはちょっと厄介なの」


「厄介?どういうことだ、早く教えろっ!」



ドールが焦りながら、アヤに聞く。



「闇素スティアは・・・『記憶』の在り方によって威力が変化したりするの。高濃度になると、使い手の記憶を食い物にしてしまう、危険なスティアよ。しかも・・・記憶を食らった次は、内側から身体を破壊し始める。少量なら人の体内にもあるスティアだから、問題ないのよ・・・少量ならね」



全員が、言葉を発せなかった。


特に、フォルカとドールは身体に震えさえ感じていた。


―自分の兄、マスターがそんな恐ろしいものを使用している―


考えるだけで、背筋に大量の氷が流し込まれた様な寒気が走った。



「まぁ、フィニカ君の体質と闇素スティアが適合してるから、あそこまで扱えているんだと思うんだけどね。そうじゃないと、高濃度の闇素スティアに一瞬にして全て持って行かれてるだろうしね」



アヤはさらっと、冷たい風に言った。


今の彼女は、あくまで第三者の目線で話しているからかもしれない。



「ママ・・・フィニカお兄ちゃんを助ける事は出来ないの?」


「出来ない事はないわ。だけど・・・うまくいくか分からないの」


「・・・教えてくれ、フィニカ様を救う方法があるというのなら、試したい」



ドールの頼みに、アヤは頷き、口を開いた。



「方法は二つ。一つは、フィニカ君が闇素スティアを無理矢理に制御させられている場合だけど、そういう場合は大抵闇素石が脳に近い辺りに装備されているはずよ。それの破壊が一つ、外すだけじゃ駄目よ。強力な闇素石に普通の人が触れたら、フィニカ君みたいに、もしくはそれ以上に身体を侵食されてしまうから」



アヤの説明に、皆は静かに耳を傾けた。


失敗すれば、こちらの身にも危険がおよぶ可能性があるからだ。



「・・・二つ目の方法は何ですか?」



フォルカの問いに、アヤは少し表情を曇らせて言った。



「二つ目の方法は・・・実現の可能性が低いの」


「何で、出来ないと決まった訳じゃないんでしょ?」



エリアルの言葉に、アヤは首を横に振る。



「無理よ・・・なにせこの方法にはカルヴィドが造った特殊な素器、人の心と記憶に潜れる『フラシュート』と呼ばれる光素器が必要なんだもの」



「「っ!!!!」」



その言葉を聞いた瞬間、ウェルトがフォルカの方を向いた。


以前、フォルカはウェルトの記憶に潜ったことがあるのだ。



「おいボウズッ、もしかして・・・」


「多分・・・そうだと思います」



「どうしたのかしら?・・・まさか、フォルカ君が持っているのが」



アヤが目を見開き、フォルカに近づいて来た。


フォルカは自分の素器を取り出して、彼女の前に出した。



「恐らく、これがフラシュートだと思います。これが光りだして、僕はウェルトさんの記憶を見ました」


「まさか・・・本物を見ることが出来るなんて。・・・でもこれなら、二つ目の方法を教えても大丈夫そうね」



アヤは、フォルカからフラシュートを受け取り、みんなの方を向いた。



「二つ目の方法は・・・フラシュートを使って、フィニカ君の記憶に潜ること。闇素スティアはその人の記憶に刻まれている心の傷に寄生する傾向があるから」



そういってアヤは、フォルカに素器を返した。



「私が知ってる事はコレくらいよ。参考になったかしら?」


「ありがとうございます、とても参考になりました」



フォルカが頭を下げると、周りのみんなも次々とお辞儀をした。


するとアヤは、先ほどとは全くと言っていい程違う、やんわりとした暖かい笑顔を浮かべ、「どういたしましてぇ」と言った。






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