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第25話〜ただ一つねがうのは〜



「クラスッ!無事でよかった!!」


「心配をおかけしてすみませんでした、エリアル。」


久しぶりにこの二人のツーショットを見た気がする、とフォルカは思った。


クラスが、助けに行く前に帰って来たのには、驚かされた。


・・・が、それよりも驚かされたことがある。


それは・・・彼女をさらったドールが、彼女を自分たちの元に連れてきた事だ。


「ドール・・・何のつもりだ。」


「・・・何の事だ?」


「どうしてクラスをさらった君がここにクラスを連れてきたんだよ!? それは兄さんが君に命令したからか!?」



フォルカは思ったことを、全て彼女にぶつけた。


するとドールはゆっくりと口を開き、こういった。



「・・・私はフィニカ様に命令などされていない、これは私が自ら決めたことだ。」


「自らって・・・クロムの君がか!?」


「・・・ああ。」



ドールは頷いた。

他に何か言おうとしたら、フォルカの後ろからウェルトが口を開いた。



「ドールっていったか・・・お前マスターはどうした? クロムならマスターは必要不可欠だろう?」


「それはっ・・・。」



彼女の反応が少し変わった。


ドールのマスターは、フォルカの実の兄・フィニカである。


フォルカ自体も、彼女の側にいるはずの兄がいないのに違和感を感じていた。



(ドールに初めて会った時にも兄さんはいなかったけど・・・あの時とは何か違う様な気がするんだよな・・・。)


「我が主は・・・フィニカ様は・・・。」



彼女は少し震えている様な口調で、衝撃的な一言を口にした。



「おそらく・・・死んだ・・・。」



「「「!!」」」



その言葉に、クラス以外表情が固まる。



「兄さんが・・・死んだ?・・・嘘だ、嘘だよ。」


「残念ながら、その可能性が高いです。」



クラスも、苦しそうな顔をして告げた。



「そんな・・・。」



フォルカの脳内に、兄との思い出が何回も流れる。


彼の笑顔、泣き顔、怒り顔がもう見れないと思うと、胸が締め付けられるように苦しくなった。



「フォルカお兄ちゃん・・・。」



ユニィが、彼に触れそうになった時・・・



「今の声はっ、ユニィちゃん!?」



草むらから、小さな影が飛び出してきた。



「うわぁっ!!?」


「フォルカッ!!」


「大丈夫ですか!?」



彼に頭突きをくらわした影の正体は、ユニィを指差してこういった。



「やっぱりユニィちゃんだぁ〜〜っ! 久しぶりぃ〜〜!!」


「セレンちゃん!!」



セレンと呼ばれた、クリーム色のショートカットから一本のアホ毛が出ている少女は、ユニィに思いっきり抱きついた。



「わわっ!?セレンちゃんっ、こけちゃうよ〜〜っ!!」


「あっ、ごめんごめん〜〜!!」



そういって彼女達は笑いだした。



「本当に会いたかったよ・・・二週間前にユニィちゃんが連れて行かれたって聞いたから・・・。」


「セレンちゃんだって、ちょくちょく村からいなくなってたじゃん!!」


「あれは・・・お仕事してたの!! ユニィちゃん家にお世話になってばっかりだし、恩返ししたかったの・・・。」



ケンカを始めたかと思うと、悲しそうな顔をしたり・・・この二人は本当に仲がいい友人なんだなぁと思えた。


そんなとき、セレンの口から予想外の一言が漏れた。


「ユニィちゃん・・・一緒にアルフィの村へ帰ろ?アヤおばさんもきっと心配してるよ・・・。」


「あっ・・・うん、そだね・・・。」



ユニィの表情が曇る。



「ママが待ってるの・・・忘れてた。 みんなといるのが楽しくって・・・。」


そんなユニィの前に、小さな手が差し出される。



「さっ、ユニィちゃん・・・行こ。」


「・・・うん。」



セレンの手に、自分の手を重ねようとしたとき・・・



「・・・まてっ。」


静止の声が上がった。



「・・・どうかしましたか、ドール?」


「お前の名前・・・どこかで聞いた事があると思ったが、ようやく思い出せた・・・。」


「・・・・・・。」


「・・・セレンちゃん?」


ユニィは、彼女から少し離れる。


今までの彼女からは想像出来ないくらいの殺気を、感じてしまったからだ。



「お前は・・・『セレン・プリュヴィオール』。 施設長を守る『四素騎士フォースナイツ』の一人、重剣じゅうけんのセレンだ・・・。」


「嘘・・・セレンちゃんが・・・?」



ユニィの前にいるのは、もう『お友達』のセレンちゃんではなかった。


ドールを鋭く睨み付ける、重剣のセレンだった。



「・・・私もあんたのこと知ってるよ、シェリナーさんにクロムにしてもらったお姉ちゃんでしょ?」


「シェリナー・・・そんな詐欺師も四素騎士にいたな・・・。」


「こいつっ・・・。」



二人の間に、重々しい空気が漂う。


時間が過ぎれば過ぎるほど、二人の殺気は増していく。


しかし・・・



「・・・や〜めたっ!」


「!?」



突然、セレンから殺気が消えた。



「今はユニィちゃんとの再会を喜びたいし、今回の仕事はクラスちゃんの回収じゃないしね。」


「・・・どういうことだ?」



セレンは、ドールの方を睨んで話した。



「私の仕事は・・・四素騎士の最後の一人になる予定の人のテストを邪魔されない為の護衛だよ。」


「そんな事、僕達に話してもいいの? 邪魔するかも知れないけど・・・。」


「別にぃ〜・・・テスト始めてかなり時間経ってるし、知られたとしてもそんなに問題はないしね。」



そういって彼女は笑みを浮かべる。


しかし、先ほどのような明るい笑顔ではなく、何か秘めた怪しい笑みだった。




「・・・でも、少ししゃべり過ぎよセレン。」



セレンの後ろから、声が響く。



「あっ・・・ごめんなさいシェリナーさん・・・。」


草むらから出てきたのは、金髪のロングヘアーで、眼鏡と白衣を身につけた女性だった。



「次はないわよ?」


「は〜い・・・。」



そういうと、シェリナーはフォルカ達の方を向いた。


「ナイトが言ってた、クラスを奪った奴らって・・・貴方たち?」


「「ナイトッ!?」」


「あのガキンチョか・・・。」



全員の脳内に、一人の少年クロムが浮かんだ。



「あんた達の方がクラスをさらったんでしょうがっ!!」


「それは違うわ。 元々その子は私達の為に動く予定だったところ、ライシェス博士が盗み出したのよ。・・・私のものをね。」


「クラスはものじゃないっ!!私の大切な家族よっ!!」


「エリアル・・・。」



エリアルは両手を広げ、クラスを守るように囲った。


「なるほど・・・あなたが報告にあった、ライシェスの娘ね・・・。」



シェリナーは顎に手をあて、考え出したと思うと、急に鼻で笑いだした。



「フフッ・・・面白いじゃない。 いいわ、実戦テストも兼ねて目障りなライシェスの娘を排除してもらいましょう・・・。」


彼女が空に手をかざす。


そしてその親指と中指をあわせ、弾いて鳴らした。


---パチンッ。


その音が響いた瞬間、シェリナーの横を高速な何かが通った。


高速な何かは、エリアルに猛スピードで近づいてくる。



「えっ、ちょっ!?」



エリアルはあわてて対処しようと素器を構えるが、一瞬で弾き落とされる。


そして棒の様なもので腹部を殴られ、体が宙に舞う。


「っ!!!」


声にもならない痛みに顔が歪みそうになるが、そんな暇は与えてくれない。


目の前に何かが出現。


棒の様なものを再びこちらにぶつけようとしてくる。


(ヤバッ!?)



思わず目を閉じそうになるが、驚きで目を見開いてしまう。


例えるとしたら相手が闇なら、こちらはまさに光と呼ぶにふさわしい人物だった。



「うおりゃぁぁっ!!!」

「っ!?」



急に出現した光の攻撃に、闇は瞬時に防御態勢に切り替え防ぐ。

互いに反発し、徐々に落下していく。


光は宙に舞っているエリアルの体を抱え込み、衝撃のないように地に足を着ける。


そして、ゆっくりと彼女の体を地面に置いた。



「・・・あんがと、ウェルト。」


「おうっ、そこで休んどけっ!」



そういって、シェリナーの方へ視線を向ける。


彼女の隣には、見馴れない人物が立っていた。



「紹介するわ、彼は四素騎士の一人『瞬槍しゅんそうのニグレド』よ。」


「・・・初めて聞く名だ、そいつが例の新人かシェリナー?」


「ええそうよ、出来損ないのお人形さんっ。」


「貴様っ・・・。」



ドールはシェリナーを睨み付け、新人の方を向く。


見た感じ二十歳くらいで、体を覆う黒衣と雪の様に白い髪との色合いが綺麗だった。


しかし鼻下まで隠す闇色の仮面が、彼の顔を隠している。


(・・・あれっ? 僕・・・この人を知ってる気がする。)


(こいつ・・・どこかで見た様な・・・。)



突如、フォルカとドールの中に、仮面の青年に対する何かが胸の中に生まれる。


「シェリナー、時間だ。」


ニグレドの口から、シェリナーに告げられる。



((今の声はっ!?))



二人は、彼の声に覚えがあった。


その声は・・・今、一番聞きたかった声だから。



---フィニカ・ティール。

フォルカの実の兄であり、ドールのマスター。


人の為に泣き、怒り、笑う・・・とても優しい人物。


そんな彼と、目の前にいるニグレドは似すぎているのだ。



「あらそう、じゃあ帰りましょうか。」


「施設長怒ったら恐いもんね〜。」



そういうと、セレンの足元に緑光が集まり始める。



「待ってっ!!」



フォルカが叫ぶ。



「ニグレド・・・あなたは、フィニカ兄さんじゃないのかいっ!?」


「・・・・・・。」



彼は答えない。



「フィニカ様っ!私です、ドールですっ!!」



ドールは、ニグレドに叫ぶ。


ブレスレットを握りしめながら・・・。



少しして、彼の口が開く。


「・・・俺がその『フィニカ』という奴だとしても、今の俺はニグレド・・・瞬槍のニグレドだ。」


「っ・・・。」



彼とは思えないくらい、冷たい反応だった。


その時彼の足元に、見たことのない黒い光が収束し始めた。



「さっ、行きましょう・・・ニグレド。」



そういってシェリナーは、彼の首元に手を添える。



「・・・シェリナー、近すぎやしないか?」


「いいじゃない、見せつけてやりましょう・・・あの子達に。」



シェリナーは、フォルカ達の方を向く。


そして、勝ち誇った顔でこちらを見てきた。


その行動が、彼をフィニカだと裏付けているように思えた。



「フィニカ様から離れろっ!!このゲスがぁっ!!」

「あらっ、口の聞き方がなってないわね。 私のニグレドとは大違いだわ。」



そういいながら、彼の輪郭にそって指をなぞらせる。


「・・・シェリナー。」


「フフッ、わかってるわよ・・・さあ、行きましょ。」



二人を黒光が包み込み、一瞬にして消失。



「じゃあねユニィちゃん・・・必ず助けたげるから。」


「セレンちゃんっ!」



セレンも、緑光が足を包み、その場から一瞬にして消えた。





---願っていたのはあなたの無事だった。


帰って来て、このブレスレットをはめて欲しかった。

また、笑いかけて欲しかった。



しかし、あなたは思わぬ形で私の前に現れた。



『ニグレド』



あなたがどうして己を偽っているかはわからないけれど・・・


私の知ってる笑顔で、


私の知ってるあなたで、


どうか私達の元へ帰って来てください。



それが私の・・・ただ一つの願いです。




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