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第16話〜騎士と僧侶 2〜



「・・・ふぅ。」



「やっと・・・着いた・・・。」



「うぅ〜・・・ダルいよ〜・・・。」



フォルカ、エリアル、ユニィの三人は、ウェルトに渡された地図を頼りに一つの建物に着いた。


見た目からして教会だが、所々に青々としたツルが巻き付いていて、長い間整備されていない感じだった。


「・・・ったく、こんなところにウェルトは何運んでるのよ。」



「・・・中見ちゃう?」



ユニィの一言に、エリアルは興味あり気に首を縦に振り、袋のあけ口を縛っている紐をほどく。



「「「・・・・・・。」」」



袋の中に入っていたのは・・・



「食べ物・・・だよね?」


「うん・・・それ以外に見える方がすごいと思うよ、フォルカお兄ちゃん。」



袋の中には、野菜や果物、魚、お肉、パン等が、これでもかというくらい敷き詰めてあった。



「何のためにこれを・・・。」




「・・・すいません、どちら様でしょうか?」



突然、声がした。



声のした方を向くと、そこには四十〜五十歳くらいの女性が、教会の入り口に立っていた。



「今・・・子供たちがやっとお昼寝をしてくれたので、お話をされるのであればもう少し静かにしていただけると、こちらも助かるのですが・・・。」



「あっいえ、僕たちはウェルトさんに頼まれてここに来たんです。」



「ウェルトに・・・ですか?」


女性はかすかに微笑み、三人の方に歩みよった。



「ウェルトのお友達でしたら大歓迎ですよ。さっ・・・こちらへどうぞ。」



女性の誘導に三人は頷き、教会の入り口に向かって歩きだした。






「ウェルトはあんな性格ですか、根はとても優しい子なんです・・・子供たちにろくに食べさせてあげられてないことを言ったら、暇を見つけては子供たちの相手をしてくれたり、食べ物を持って来たりで・・・。」



「へぇ〜・・・。」



彼女の話によると、ウェルトは僧侶になる前から袋で食べ物を運んだり、子供たちと一緒に遊んだりしていたらしい。


子供たちに合わせるんじゃなく、子供たちと本気で向き合ってくれてるから、彼女はかなり助かっているという。



「・・・なんだかカッコいいな、ウェルトさん。」



「本当・・・見直しちゃった。」



「ウェルト兄ちゃんって・・・すごくいい人なんだね。」



三人は、ウェルトの事を改めて知れたような気がした。



その時だった。




「『すごくいい人』じゃねぇ!『すごくいいゴッド様』だろ、ユニィ穣ちゃん!!」



「うわぁっ、でたぁ!!」


ものすごい勢いで扉を蹴り開け、ウェルトが入って来た。



・・・また違う袋を背負って。



「相変わらず元気ですね、ウェルト・・・。」



「ようシスター!そっちも相変わらず元気そうじゃねぇか!!」



「ええ・・・貴方のおかげで死ぬにも死ねませんよ・・・。」



ウェルトとシスターは、顔を見合せて笑った。



「ところでウェルトさん、その袋は?」



「ん?これはだな・・・。」



「子供たちへのオモチャ!?」



「・・・ちょっと違うなユニィ穣ちゃん、これはここにいる子供たちへ神からの贈り物って奴だ!」



「フフッ・・・喜んでくれるといいね、ウェルト。」


おうっ、とウェルトがこちらへ笑いかけて来た。



なんだか、彼がとても神々しく見えてきた・・・。



その時、部屋の右側にある扉が勢いよく開き、十人くらい子供たちが入って来た。



「あ〜っ、ウェルトが来てる!」



「今日はなに持って来たの!?」



「早く出してよ〜!!」



「相変わらず元気なガキどもだな!よ〜し待ってろよ〜・・・今日は大都で今、大人気のオモチャ『レ・陰謀・アート』を持って来てやったぞ!」



「「「うわぁ〜〜〜〜い!!」」」



ウェルトの周りに、男女関係なく子供たちが集まる。


ウェルトは『レ・陰謀・アート』の使用法を子供たちに説明していた。



「ほらっ、七色の固形絵の具を、この先に十センチスポンジの付いた棒に水を付けて・・・絵の具をなぞれば・・・ほらっ、スポンジに色が付いたぞ!」



「わぁ〜〜いっ、これでお絵かきするんだ〜〜!!」


「これさえあれば・・・乗り物(?)だってスゥ〜ラスゥラだ!!」



そういって、ウェルトがスポンジを使って乗り物らしきものを書き上げた。



「すげぇ〜〜〜!!けどなに描いてるかわかんねぇ〜〜〜!!」



こんな感じで、ワイワイと子供たちと話している。



(うらやましいな・・・僕には友達がいなかったし・・・。)




「ウェルト〜、この棒じゃ虹が描けないよ〜・・・色が五色しか付かないし。」


「そんなときにはこの『芽我棒メガスティック』を使うんだ!こいつは七色同時に描くことが可能な優れものだ!!」



「ありがと〜ウェルト!これで僕も、アーティストみたいな絵が描けるよ!!」


「おうっ、頑張りな・・・んっ?どうした。」



「・・・・・・。」



女の子が一人、子供たちの集まっている場所から離れたところにいた。



「黙ってないで言ってみろよっ、俺は神だ!ゴッド様だ!悩みなんて、あそこに突っ立ってるボウズを小指で倒すくらい簡単に解決してやるぜ!」



「ええっ!!?」



ウェルトとフォルカのやり取りに、クスッと笑い、口を開いてこういった。



「私・・・この服がお気に入りなの、だから・・・絵の具で汚したくないの・・・。」



「なんだそんなことか・・・心配ご無用!」



そういうとウェルトは、女の子の前に『レ・陰謀・アート』を持ってきて、固形絵の具が入った容器を床に傾けた。



「あぁ、絵の具が床に落ちて汚れちゃうよウェルト!・・・ってあれ?」



「そう、『レ・陰謀・アート』は色が垂れない、跳ねない、そしてぇ〜・・・。」



ウェルトがサラッと棒で絵を描き、すぐさま右手で絵を撫でた。



その手を女の子に向けて、ウェルトはこういった。




「手に付かなぁぁ〜〜〜い!!」



「わぁっ!これならお洋服も汚れないよ!」



「よしっ、これ使って楽しくお絵かきタイムだ!!」


「うんっ!!」



女の子はウェルトが持っていた『レ・陰謀・アート』を受け取り、さっそくお絵かきを始めた。



「棒持ってないやつはこっちの『光棒シャイニングスティック』をくれてやるぜ!」



ウェルトが『光棒シャイニングスティック』でサラッと絵を描き、描いた所を手で覆った。



「・・・わぁっ、描いた所が光った!!」



「どうだ、これが『光棒シャイニングスティック』だ!!」



歓声と共に、子供たちかウェルトの周りに、まるで蟻のように群がった。



「すごい人気だね、ウェルト兄ちゃん・・・。」



「うん・・・僕もあんな人になりたいな・・・。子供に優しくて、好かれる人に・・・。」



「よ〜しガキども!本日のメインディッシュの登場だ!!」




ウェルトの一言に、子供たちの視線が集まる。



ウェルトは袋に手を突っ込んで、ごそごそとそのメインディッシュとやらを探している。



「ほらぁっ、メインディッシュの『ゴッド人形(木彫りの手作り)』だ!!」



「「「・・・・・・。」」」



ウェルトの取り出した人形(木彫りでウェルト型)を見て、子供たちの刻が止まった。



数秒後・・・子供たちは動き出し・・・




「うわぁぁぁぁんっ!またそれかよ〜〜!!」



「この前もそういって、その人形出したじゃんか〜〜〜!!」



「しかもこの前のは『歩行型』とかいって、無理矢理手足を動かして折れたじゃんか!!!!」



「大丈夫、今日のは『会話型』だ!ほらっ、背中にある突起物を押してみろ!」


ウェルトはそういうと、一人の男の子に人形(木彫りウェルト型)を渡すと、背中のスイッチ(ウェルト曰く突起物)を押させた。



すると・・・




「・・・こんにちは俺はゴッド様だ!」



と、人形の揺れに合わせて、必死にウェルトが腹話術をしていた。



「ウェルトが腹話術してるだけじゃんか〜〜!!」



「最近の子供を、そんなことで騙せると思うな!嘘つきぃぃ〜〜〜!!」



「俺たちの最高潮だったテンションを返せ!!このバカ〜〜!!」



その瞬間、ウェルトの顔が引きつった。



「今バカって言ったのは誰だ!俺のどこがバカだ!?おまえらの為だけに三日もかけて人形彫ってやってるんだぞ!!」



「そんなの頼んだ覚えはないよ〜〜〜!!」



「つうか、これ自分で彫ってたのかよ!変にこだわるなぁぁ〜〜〜!!」



「こんなことしてる暇があったら真面目に働け〜〜!このジョブレス僧侶!!」


ウェルトから、ブチンッと何かが切れる音がした。



・・・嫌な予感が・・・。



「おまえらガキだからって何言っても許されると思うなよ!?そんな悪いガキ共には神が制裁をくわえてやる!!こっちこいガキ共、みんなまとめて尻が腫れあがるまでペンペンじゃ〜〜〜!!」



「うわあぁぁんっ、幼児虐待ぃぃ〜〜〜!!」



「虐待!?これは二度と神に悪口言えなくするための制裁だあぁぁぁ〜〜〜!!!!」



大人気なく、ウェルトは子供たちを追い回す。



「・・・・・・。」



「フォルカ?誰のようになりたいって?」



エリアルの一言にフォルカは・・・




「・・・追い求めている憧れの自分になりたいです・・・。」



と、短く答えた。



「フフッ・・・やっぱりウェルトは、子供たちと仲良しね。」



シスターにはあの光景が、子供たちと遊んでいるように見えた。




------------------------



薄暗く、どこまでも続きそうな廊下を、ナイトは一人歩いていた。



「・・・・・・フフッ。」


ナイトは薄く笑う。



「本当に可愛かったな・・・マスターの言ってた通り・・・いやっ、それ以上に。」



一人、小声で呟き続ける。


「彼女を・・・クラスを守る騎士ナイト、それが僕・・・マスター以外の誰にも彼女は渡さない。」




この前脳内データで見た、『クラス』という名をした花のことを、ナイトは思い出した。



「・・・とても小さな花で、人目に入る前にほとんどが虫に喰われてしまう・・・。」



そう・・・虫に・・・。



「・・・そんなことさせない。」



聞いた話によると、虫は三匹・・・そのうち二匹は既にクラスと接触している。


・・・しかし、森に入って行方不明になったとも聞いている。



「もし生きてるなら・・・あの『信仰』とか下らないこと言ってる奴らのいるミセットタウンくらいには着いてるかもね・・・。」




ナイトは扉の前に着いた。


そして、扉にそっと手をそえる。



「とりあえず・・・そこに行ってみるか。」



そえた手に、グッと力を入れる。



ギイィィ・・・と鈍い音と共に、扉が開く。



開けた扉の間から、眩しいくらいの光が差し込んで来た。




「待ってなよ、虫共・・・一匹残らず駆除してあげる。」



ナイトは一歩、外に向かって踏み出した。





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