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第12話〜ミッドナイトフォレスト 前編〜

大都から脱出して、どれくらい経っただろうか。

少なくとも1〜2時間は歩き続けている気がする。


・・・・・・なぜか森の中を。

しかも夜中にだ・・・。


「ユッ・・・ユニィ、なんで森の中を逃げるの?無事外に出られたんだし、なにもここまで徹底しなくても・・・。」


「しなくちゃいけないの!いいっ、私達が捕まってたところは、大都の中でも実績のあるクロム研究施設なんだよ?そんなところに捕まえられてた研究対象、しかも子供に逃げられたとなれば奴らのメンツが丸つぶれでしょ?だからきっと血眼になって私達を探してると思うし、街道付近は兵士たちがビッシリ配置されてるだろうし・・・検問もやってるかも。」


「なるほど・・・ところでさユニィ。」


なにっと言ってユニィがこちらに振り向いた。



「森に入って身を隠す作戦を使ったってことはさ、道・・・わかるんだよね?」

「・・・・・・・・・・・・。」


「?・・・ユニィ?」


ユニィの顔を覗き込んで見ると、目が右に泳ぎ、汗が尋常じゃないくらい出ていた。

まさか・・・。



「ユニィ、もしかして道・・・わかんないの?」


ーーードゴォォォン!!ーーー


「・・・・・・テヘッ」

ーーーズガガガガ!!ーーー


「テヘッ・・・じゃないよ、どうするの!?僕達完全に道に迷ってるってことでしょう!?」

ーーーグシャアアァァ!ーーー


「そんなに言うことないじゃん!私だって逃げるのに必死だったんだから!」


ーーーズドォォォン!ーーー


「逆ギレすることないじゃないか!・・・ちょっと、エリアルも黙ってないで何か言ってよ。」



「いくらでもしゃべってあげるわよ・・・あんたらがこれやっつけるの手伝ってくれるならねぇ!!」



「「・・・えっ?」」



2人は、恐る恐るエリアルの声が聞こえた方を見た。

見えた光景は、素器を展開して巨大なミミズ(?)と戦闘しているエリアルの姿だった。


「ったくあんたたち、道に迷ったくらいでケンカして!しかもこんなに近くで戦闘している私に全く気付く気配すらないなんて、信じられない!!」


エリアルは巨大ミミズ(?)のボディプレス(?)をよけながら、数分前のことを叱ってきた。

・・・そういえば会話中にドゴンだのズガガだの聞こえた気がする。



「ごっ、ごめんエリアル・・・でも僕よりも存在感がない人がいるなんて。ありがとうエリアル、自信ついたよ!」


「うるせぇ!好きで影が薄いんじゃないわ〜!!つうか早く助けろ〜!!」


エリアルが一瞬、ものすごい顔でこちらを睨み付けてきた。

背筋に氷を擦り付けられたような寒気がした。


・・・女の子って怖いなぁ・・・



「は〜い2人とも〜、ちょっとそいつから離れてねぇ〜!」


ユニィの声が聞こえる。

2人は急いで巨大ミミズ(?)から距離をとった。


「いっくよ〜、『ユニィィィィ・ファイヤァァァ〜〜!!」



ユニィは大声で技名(?)を叫び、右手をミミズ(?)のいる方に突き出した。

次の瞬間、ユニィの右手の前に魔法陣と思われる赤く輝く陣が出現。

その魔法陣の中心部から、牢屋で使った素術とは比べ物にならない威力の炎が放たれた。

炎はミミズ(?)を、一瞬にしてのみこむ。

数秒後、元気に動いていたミミズ(?)は、こんがり焼けてピクリとも動かなくなった。


「・・・すごい。」


「やったわね、ユニィ!」

エリアルがユニィに近づき、ユニィの肩をポンッと軽く叩いた。

しかし、ユニィはミミズ(?)の方をじっと見て返事をしない。


「?・・・ユニィ、どうしたの?」


反応は無し、しかし小声でボソボソと独り言のように何かを呟いている。

ユニィの様子が気になり、エリアルはユニィの独り言に耳を傾けた。

「・・・にお・・・しそ・・・。」


「・・・?」

よく聞き取れなかったのでもう一度、よく耳をこらして聞いてみた。



「とってもいい匂いがするなぁ、美味しそう。」



「はぁ!?」


思わず声が出てしまった。だってこの子、こんな気持ち悪いミミズ(?)が焼けたのを見て『いい匂い』だの『美味しそう』だの呟くなんて・・・女の子としてどうなのよ!


「エリアルお姉ちゃんもそう思わない?」


「思わないわよっ、見た目から不味そうでしょうが!!」


確かに匂いはいい、匂いだけなら少々値の張るお肉と互角くらいと言ってもいい。

だが・・・その匂いの発生源を見てしまうと、食欲が一気に削ぎとられる。


だって・・・ミミズ(?)だよ?

美味しそうに見える?

少なくとも私は見えない。それをこの子は・・・美味しそうと言った、確かに言った。

・・・そんなにお腹が空いてるの?


「ねぇ、3人でこれ食べない?私、お腹空いて死にそう・・・。」


「!!!?」


声にならなかった。


これを・・・食うと・・・?

食べたいと思ってるのはあんただけよ、ユニィ・・・。


「匂いは・・・大丈夫そうだよね。」


フォルカの一言に、エリアルが目を見開いた。

まさか・・・。


「もう限界・・・ユニィ、これ食べちゃおう。」


「うんっ、フォルカお兄ちゃん!!」


そう言うと、フォルカは素器を展開して、あろうことかミミズ(?)を一口サイズに切りはじめた。

ユニィはそれを落とさないように拾い、少し大きめの葉っぱに盛り付け始める。

(もう・・・嫌・・・。)




「エリアル、食べないの?」


フォルカが、サイコロステーキの様なものを差し出してきた。


「・・・いらない。」


エリアルは左手を前にそっと出し、断った。

・・・だって、ミミズ(?)だもん、それ・・・。


「とっても美味しいよ〜、エリアルお姉ちゃん。」


「いいって・・・。」


なんで普通に食べれるのよ、この2人は・・・。


エリアルは、辺りを見回した。

何か他に食べられるものがないかと・・・。


「あっ・・・。」


ふと木にリンゴと思われる木の実を、発見した。


「あれよりは、はるかにましね・・・。」


2人の方を見て、ゆっくりとうなずく。

そして、木の実の方を向き、歩きだした。

一歩一歩踏み出し、木の実に手をのばす。


その時・・・



「っ!!」


木がひとりでに動きだした。

エリアルはその時の反動でこけてしまった。


「ったぁ〜、何が起こったのよ?」


エリアルは顔を上げる。

そこには・・・。



「何よ・・・こいつ。」



木の形をしていて、根っこ部分が触手状になっている・・・化け物がいた。

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