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【書籍化】カバンの勇者の異世界のんびり旅 ~実は「カバン」は何でも吸収できるし、日本から何でも取り寄せができるチート武器でした~  作者: 茨木野
第3部

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31.救世主の誕生


 

 悪党をぶっ殺し、封印したぞ!


「さて、じゃああとは、皆の魂を戻さないとですね」


 僕の体には勇者さんたちの魂が入っている。

 それを元の肉体へと返してあげないとね!


 僕は魔神器かばんの蓋を開ける。


「魔神化、解除~」


 ずぉ……! とカバンのなから、取りこんでいた魂たちが外へと漏れ出す。

 そして魂たちは地上へと戻っていく。


 カバンからはスペさん、ルクスリアさん、そして……ミサカさんとヒキニートさんが出てきた。

 この人らの肉体はカバンの中に仕舞っていたんだよね。

 

 後の人の肉体は地上に置いてある。


「けーすけくんっ!」

「ミサカさん、良かった、ちゃんと戻ったんですね!」

「うん! けーすけくんはやっぱり凄いよ! 悪いやつぶっ倒しちゃうんだもん!」

 

 ふがふが、とミサカさんが鼻息を荒くして言う。

 そして、だきっ! とミサカさんがぼ、僕に抱きついて、ちゅ、ちゅーしてきたっ。


「だいすきっ!」

「うう……ぼ、僕も……僕も、大好き!」

「わぁ! 相思相愛だね!」

「そうですねっ! えへ、えへへへ~」


 両思いになっちゃった~。

 姉ちゃん、見てる? 僕異世界で、カノジョできました!


「いやしかし、戻れてほんっと良かった……」


 とヒキニートさんが魔法で空を飛びながら、安堵の息をつく。

 ちなみにヘルメスさんの肉体ではなく、本来の、ヒキニートさんの体だ。


「地上の人たちも、肉体に戻れてますか?」

「うん。みたいだよ」


 ヒキニートさんが扉を開いて、地上の様子を見ているようだ。


「てか、啓介くん、地上とんでもないことになってる……」

「どういうことです?」


 僕らの前に、小さな扉が開く。

 地上の様子が映し出されていた。


『弓の聖人様が、悪王ワルージョを、討伐してくださったぞぉおおおおおおお!』


 民衆が大歓声をあげている。

 オタクさんが……ワルージョを倒した?


「どうなってるんですこれ?」

「どうやら、民衆は勘違いしたみたい。君じゃなくて、オタク君がワルージョ倒したって」


「なんでまた……?」

「オタク君がね、民衆たちの不安を解消するために言ったんだ。啓介君が、ワルージョを倒したって」


 オタクさん、いつだって優しい人だなぁ。


「あれ、けーすけくんが倒したって言ったのに、どうしてオタクくんが倒したことになったの?」

「さぁ……? まあ、上空での戦いって地上の人たち、誰も見てないしね。あとは、オタク君の人柄じゃないかな。ともあれ、いろいろ重なった結果、オタクくんがワルージョを倒したことになったんだと思うよ」


 なるほどね~。


「ま、いいや!」

「いいの、けーすけくん?」

「うん! 皆がオタクさんを、悪王を倒した正義の勇者って思いたいんだったら、そうすればいいと思う」


 それに、現にオタクさんとその他がいなかったら、ワルージョ倒せてなかったしね。

(※その他=シズカたちのようです)


『いや、だから、拙者ではなく、カバンの勇者ケースケ殿が、ワルージョを倒したのでござるよ!』


 オタクさんが民衆に対して、ちゃんと説明しようとしている。

 ほんといい人だなこの人。


「ヒキニートさん、オタクさんの耳元で扉開いて」


 こくんとうなずく。

 新しい扉が開いた。


「オタクさん、誤解はとかなくていいです。そのままにしておいてください」

『啓介殿……しかし……』


「いいんです。僕、別に世界を救った英雄とか、なりたくないので」


 そんなののために戦ったわけじゃないからね。

 

「僕はミサカさんの呪いを解けて、それで満足です。それに、これから二人で、約束を果たす旅に出るつもりなんで!」

『約束……ああ、なるほど。そういうことでござるか』


 オタクさんは僕とミサカさんの間で交わした約束について、知っている。


「ほえ? けーすけくん、約束って……あ! まさか……あれ?」

「うん、それ!」


 じわ……とミサカさんが目に涙を浮かべる。

 

「覚えててくれたんだ」

「もちろんですよ! 大好きな人と、初めて出会ったときの記憶ですから」

「けーすけくんっ。もうっ大好き~~~~~♡」


 抱きついて、ちゅっちゅ、とミサカさんがキスしてくれる。

 えへへ♡


『あいわかりました。では、英雄の【役】は拙者請け負いましょう』


 オタクさんが穏やかな調子で言う。


『後のことは拙者に任せて、啓介殿とミサカ殿は、旅立ってくださいませ』

「ごめんね、オタクくん。やっかいごと押しつけちゃって」


 ミサカさんが申し訳なさそうに言う。

 やっかいごと……?


「ヒント、世界を救った英雄。ワルージョ死亡により空席の王座。さて、どうなると思う……?」


 とヒキニートさん。

 うーん……?


 うーーーーーーーーん…………。


「わからないですね」

「ああ、そう……。ま、オタクくんはこれから、ものすっごく大変な、とてもめんどくさいことになる」

「大変だ……!」


「たいへんだって……。オタク君が代わりにやってくれなかったら、君がやることになったんだよ?」

「なんだってー!」


 何をするかわからないけど、とりあえず、オタクさんに迷惑かけちゃうみたい!


「ご、ごめんねオタクさん」

『わははは! いいのでござるよ。気にしないでくだされ。拙者のことはいいので、啓介殿は、愛する人と自由に、旅を続けてくだされ』

「……オタクさん」


 オタクさんは、どうやら大変なことを、僕の代わりに、買って出てくれたらしい。


「ごめんね」

『謝罪なんていらないでござるよ。拙者たち、友達でござろう?』

「…………うんっ! わかった! ありがとう!」

『いえいえ。拙者しばらくゲータ・ニィガに残ります。何か困ったことがあれば、いつでも言ってくだされ! 世界を救った、【カバンの救世主】殿!』


 ぱたん、と扉が閉まる。

 カバンの救世主……かぁ。


「いや、オタク君。救世主は君だよ。間違いなくね」


 ヒキニートさんが扉を仕舞う。僕もそう思う。オタクさんがいたから、頑張れたしね。

 

「んで、君らはこれからどうするの?」


 ヒキニートさんが尋ねてくる。


「とりあえず、約束を果たしに」

「約束約束ってなんなの?」

「秘密です! ミサカさんと僕との……えへへ♡」


 ふぅ、とヒキニートさんがため息をつく。


「あ、そ。じゃ、ぼくはまた引きこもるよ」


 ヒキニートさんが僕の鞄の蓋を開ける。


「え、ここに?」

「うん。だって君ら野放しにしたら、ヤバいし」

「えー……」


 なんだよヤバいって。

 てゆーか、ほんと邪魔だなぁ……。

 ミサカさんと二人でラブラブしたいのに。


「オタク君が居ない今、ぼくがしっかりしないといけないのさ」

「うー……」


 まあまあ、とミサカさんが僕の肩をつかむ。


「いいじゃん。せばっちゃん、引きこもったらほとんど出てこないし」

「ミサカさん……せばっちゃんって、誰?」


 ずっこけるヒキニートさん。


「ぼく! ぼーく! ヘルメス・洗馬せば!」

「ああ、名前あったんですね」

「自己紹介してるから!」


 まあどうでもいいや。


『では、参ろうかの』


 ぼんっ、とスペさんがフェンリル姿になる。


『ほれ、乗るが良い。ケースケ。それに……ミサカよ』

「スペルヴィアちゃん……」


 スペさんはプライドが高いので、僕以外を決して、その背中に乗せようとしなかった。

 でも……。


『ミサカ。おまえは、我の友……イラの命を救ってくれた。過去のことは、もう水に流そう』

「スペルヴィアちゃん……ううん、スペちゃん! ありがとう!」


 もふっ、とミサカさんがスペさんのもふもふボディに抱きつく。

 良かった。二人が仲直りできて。


 僕もまた、スペさんに抱きつく。


「じゃ、行こう! 約束を果たしに!」

「うん、わたし、景色が良いとこがいいなー!」

『了解じゃ! しゅっぱーつ!』


 スペさんが空を駆ける。

 地上ではオタクさんをたたえる声が、空の上まで聞こえてきたのだった。

 

【★大切なお知らせ】


好評につき、連載版をスタートしました!


『 【連載版】おっさん剣聖、獣の国でスローライフを送る~弟子に婚約者と道場を奪われ追放された俺、獣人国王女に拾われ剣術の先生となる。実は俺が世界最強の剣士だったと判明するが、泣いて謝っても今更戻る気はない』


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