20.オタクさん、すごい!
西の街にて、僕らは銃と鞭の勇者さんにバトルを挑まれた。
サクッと経験値にしてやろうと思ったのだけど、オタクさんが殺るって言ってきた。
(※↑言ってないです)
僕はオタクさんのベストフレンズなので、彼の言うことを聞いてあげることにしたのだった。
がんばれ、オタクさん!
「話し合いましょうぞ」
オタクさんは一貫して、非暴力を貫く姿勢のようだ。
「立派! 啓介くんみた!? あれが勇者のあるべき姿だよ!」
ヒキニートさんがなんかおかしなこと言ってくる。
「オタクさんは最初から勇者ですが?」
何言ってるんだろうねこの人。
「いやそういうことじゃなくて。その、あり方みたいな」
「あ! 事態が動くみたいですよ! がんばれオタクさん!」
銃の勇者ヒャッハーさん、えと、名前忘れた。
ヒャッハーさんが2丁拳銃を構えて言う。
「話し合いなんてするわけねーだろたこ! あんたを殺して、ワルージョ様に褒めてもらうんだよぉ!」
む?
たこぉ? なんだあいつ、嫌なやつ!
「ヒャッハー! てめえは蜂の巣にしてやるよぉ!」
ヒャッハーさんが銃口をオタクさんに向ける。
そして、銃弾を放ってきた。
「連射弾!!!!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!
まるでガトリングガンのように、絶え間なく銃弾が発射される。
「ヒャッハー! 霧雨のごとく降り注ぐこの銃弾の雨を、さっきのようにかわすのは絶対に不可能だぜえ!」
一方オタクさんは武器を構えず、リラックスした体勢をとる。
そして。
スカッ!
オタクさんはすごい速さで上体を動かしたのだ!
「ひょぉお!? な、なんだよあのうごき!? 上半身だけをものすごい速さで動かし、それだけで攻撃を全部かわしてるだとぉ!?」
おおお! すごい!
昔見たsf映画のワンシーンみたいだぞ!
スペさんが感心したようにつぶやく。
『オタクは、というか弓の勇者は他の勇者よりも目がいいようじゃな』
「目?」
『うむ。神眼には及ばないとはいえ、その動体視力はあの大量の銃弾を全て見切るほどじゃ』
なるほど、ミサカさんには及ばないけど、でもオタクさんもすごい目を持ってるってこととだね!
うぉー! すごいぞオタクさん!
「く! くそっ! これならどうだぁ!」
ヒャハーさんが足元を狙う。
だがオタクさんは華麗に弾丸を回避!
まるで踊っているかのようだ!
ダンサーオタクさんだ!
「……オタク様。すごすぎる。あの人は、半径1メートル以内で全て避けている」
む!
シズカさんの言う通りだ!
オタクさんは必要最小限の動きで全てを回避。
しかも円のなかから一歩も出てないぞ!
やっぱりすごいなぁ!
「くそくそくそ!」
「むははは! どけ、ジューシ! 次は我輩の出番だぁ!」
次は鞭の勇者、ガチムチさんが行くようだ。
……すごい純粋な疑問なんだけど、どうしてふたりいるのに、ふたりで挟んで攻撃しないんだろう?
バカなのかな?
それとも、オタクさんを侮ってるとか?
後者だったら首もいでやろうかな?
「むははは! くらえ! わが必殺の、【百烈鞭】!」
ガチムチさんは手に持った鞭をものすごい速さで動かす。
1秒に百度、鞭でオタクさん叩くようだ。
しかも鞭はオタクさんの前後左右、そして頭上からも襲ってくる。
「むははあ! 我が鞭は、敵を決して脱がさぬ全方位による攻撃が可能なのよぉ! むはははは! 全方位からの攻撃、よけられるわけがないぃい!」
だが。
スカッ!
「な!? ど、どうなってるのだ!? 百烈鞭を、全方位攻撃いったいどうやってよけた!?!?」
これもさ、純粋な疑問なんだけども、どうして敵が手の内を教えてくれるって思ってるんだろう?
いや、普通に疑問なんだけどさ。
なんで質問して、答えてくれるって思ってるんだろうね。敵対関係なのに。
「百烈鞭、確かにすごいわざでござった。しかし、鞭が100本に分裂してるわけではない。神速の一撃を、100回よければ、たとえ全方位攻撃であろうと回避できるのでござる」
おおお!
なるほどぉ!
「今の理論わかった?」
ヒキニートさんがじと目で尋ねてくる。
「ぜんぜん! でも、オタクさんがすごいってことはわかる!」
「ああそう……」
「え、わからないのです?」
「わかるから。大丈夫わかるから。カバンの口を開けないで。そこからでてる触手ひっこめて!」
ちっ。
オタクさんの神回避を見てガチムチが焦ってるぞ!
「く、くそおぉ! こうなったら、むううん!」
ガチムチは鞭を地面に強く叩きつける。
パァン!
地面を叩いた際に、地面の土がとんで、オタクさんの目に当たる!
「く! 目が!」
「あー! 目つぶしとか卑怯だぞ! 勇者の風上にも置けない非道! ね、二人もそう思いますよね!?」
僕はヒキニートさんとシズカさんに同意を求める。
「……おまえが言うな」「君が言うのは筋違いだと思う」
えええ!?
なんでぇ!?
「……今まで散々悪の限りを尽くしておいて、どの面さげて勇者を語ってるんだ?」
「そんなことしてないですもん」
ちゃんと勇者してたもん!
悪を倒してたもん!
「むははは! 貴様の自慢の目を潰させてもらった! これで攻撃を避けることは不可能!」
「ひゃっはー! よくやったぜムッチ! 同時攻撃だ!」
あー!
卑怯もんだ!
おたくさんの目をつぶしておいてからの、二人同時攻撃だなんて!
くそ野郎め!
「オタクさん! 僕も加勢――」
『ケースケよ。待つのじゃ』
スペさんが僕を止めてくる。
『オタクは問題ないよ。あやつは、確かにケースケやミサカと比べると派手さに欠ける勇者じゃが……。しかし、』
オタクさんにヒャッハーさんとガチムチさんの攻撃が襲いかかる。
全方位からの鞭、そして銃弾の雨あられのなか……
たんっ! と飛び上がって攻撃をかわす!
空中で激しく錐揉み回転しながら、敵の攻撃を全て回避してた!
「「なにぃいいいいいいいいいい!?」」
「すごいや、オタクさん!」
オタクさんは回転しながら弓を構える。
「せい! はぁ!」
オタクさんは回転しながら、しかも空中という足場の悪い中、矢を放った。
矢は正確にガチムチさんとヒャハーさんの眉間につきささる!
「ヘッドショット! ナイスキルです、オタクさん!」
「「いやいやいや、生きてるから」」
え?
鞭さんたちがその場に倒れている。
でも、確かに呼吸はしていた。
白目をむいて気絶してるだけだ!
「蜂の矢。麻酔矢でござるよ」
麻痺効果を付与した魔法矢で攻撃し、ふたりを戦闘不能にしたってことかっ。
うぉお! すごぉい!
おおん?
「おたくさん、どうして殺さないんですか? こいつら敵ですよ?」
するとオタクさんは優しく微笑んで言う。
「彼らはシズカ殿とおなじく、針で操られてただけ。殺す必要は、ないでござるよ。それに我らは同じ勇者。仲間でござるからな」
うーん、そうかなぁ。
「こいつら裏切って、後ろから切り掛かってくるかもしれませんよ?」
「かもしれないでござる。それでも、拙者は、彼らはいい人だと信じてるでござる。でなければ、勇者に選ばれることはない」
そっかぁ。
まあ、オタクさんがそう言うなら、そうなのかも!
「……オタク様、優しすぎます。その理論だと啓介が勇者なのはおかしいですし」
「中身化け物でも勇者やってるやついるし、オタクくんその考えは危ういよ?」
は?
「え、オタクさんを否定するのは?」
かぱっ。
「「その物騒なカバンしまえって!」」
まあなんにせよ、勇者ふたりをオタクさんが無力化したのだった。
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