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07.バリアを破壊し、怪我人を治療する勇者様



《啓介視点》


 僕、佐久平さくだいら啓介は、現在ゲータ・ニィガ王国へ向かっていた。

 僕らを狙う、ワルージョ女王をぶっ倒すため!


 そして、ワルージョ女王の背後にいるっていう、廃棄神はいきしんってやつの経験値くびをとり、ミサカさんの呪いを解くんだっ!


 で。

 現在僕らは、賢者の塔を出た後、ジャガーさんの背に乗って、ゲータ・ニィガ王国を目指していた。


 ジャガーさん結構早い。

 賢者の塔から数時間もしないうちに、ゲータ・ニィガ近くまでやってきた。


『国が見えてきたっす!』

「よーし、ジャガーさん、このまま王都にカチコミです!」


 だが……。


「ジャガー殿! ストップでござるよ!」


 ききききぃ~~~~~~~~~!

 空中でジャガーさんが停止する。


「どうしたの、オタクさん?」


 オタクさんが急にストップかけてきた。

 彼は神妙な顔つきのまま、目を閉じてる。


「ゲータ・ニィガ全域に……障壁があるのでござる!」

「障壁……バリアってことですか?」

「うむ」


 といって、オタクさんが立ち上がり、聖武具の弓を構える。


竜の矢(レーザー・ショット)!」


 オタクさんが弓を引いて放つ!

 すると……。


 ビゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「わ、すご! レーザーだ! なにあれ!?」

『魔法矢じゃな』


 頭の上に乗っかってる、子犬状態スペさんが解説する。


「魔法矢とは、魔力でできた矢のことじゃ。そこに魔法効果を付与し、さまざまな特殊な矢を生成、放つことができるのじゃ」


 オタクさんが放った魔法矢……。

 

 パキィイイイイイイイイイイイン!


「むぅ……攻撃がはじかれてしまったのでござる……拙者の持つ魔法矢のなかで、最も火力のある攻撃を、いともたやすく」


 オタクさんはこの世界に来て15年経過した、ベテラン勇者だ。

 聖武具のレベルも、結構上がっているだろう。


 そんな弓の勇者の放った強力な一撃を受けてもびくともしないバリアだって……?


「ワルージョのやつ、僕らがここにカチコミにくることを想定してたのかっ?」

「ううん……どうでござろう……? セーバー殿はどう思うでござるか?」


 ジャガーさんの背中の上には、メイドのヘルメスさんが座ってる。

 ヘルメスさんの体を借りて、ヒキニートさんの人格が出てくる。


『こんな強度の結界を、ただの人間であるワルージョが張れるとは思えないね』

「むぅ……では、廃棄神はいきしんの力を借りてると?」


『その可能性が高いね』


 なるほど、ワルージョめ。

 神の力を借りて、結界を張り、僕らのカチコミを邪魔しようっていうんだね!

(※↑啓介たちは、ワルージョが廃棄神はいきしんに裏切られたことを知りません)


「ところで、セーバー殿。そこの居心地はどんなものでござるか?」


 とオタクさんが僕のカバンを見ながら言う。


『だいぶ快適。もうずっとここでいいかも~』


 ヒキニートさんは、現在、■庭(ハコニワ)の中にいる。つまり僕の聖武具の中だ。


「ヒキニートさんも出てきてくださいよ」

『悪いね、ぼくは外に出れないんだ。管理者アドミニストレーターに見つかりたくないから』



「なに、管理者アドミニストレーターって?」 

『転生者を管理するやつのことだよ。ぼくら転生者は、管理者アドミニストレーターの言うことに逆らえないんだ』


「!? それって……」


 もしかして……。


『ケースケよ。考えるのは後じゃ』

「え? どうして?」


『敵がくる。おそらく、障壁を攻撃したことで、敵にこちらの侵入がバレてしまったのじゃろう』


 スペさんには魔力感知という特技がある。

 周囲の魔物などを、調べる力があるのだ。


「くっ! ワルージョが僕らを殺しに来た……ってことですね!」


 上等だっ。

 全員まとめてやっつけてやる!


 障壁の向こうから……。

 なんか、鳥みたいなのがたくさん、飛んでくる……!


飛竜ワイバーンでござるな。Bランクの魔物でござる……!」


 飛竜ワイバーンの群れがぎゃあぎゃあと、わめきながら近づいてくる。

 僕はカバンから、勇者の短剣を取り出す。


「迎撃します!」

「拙者も、力をお貸ししますぞ!」


 なんて、頼もしいんだ!

 障壁を越えて、飛竜ワイバーンたちが襲いかかってくる!


「【絶対切断】!」


 僕は短剣を振るい、スキルを発動。

 飛ぶ斬撃が、横一線に飛んでいく。


 ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


『結構、うちもらしておるぞ!!』

「拙者の出番でござるよ!」


 オタクさんが弓を構えて、魔法矢を放つ。


星の矢(アサルト・ショット)!」


 斜め上へと、オタクさんが矢を放つ。

 矢は途中で無数に分裂すると……。


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!


『無数に分裂し、流星のごとく敵に降り注ぐ魔法矢のようじゃな』

「うぉお! オタクさんかっこいー! 僕も頑張るぞ! 絶対切断!」


 僕、オタクさんのコンビネーションで、飛竜ワイバーンの群れは1分もかからずやっつけたぞ!


『なかなかやるな、オタクよ。伊達に15年、勇者やってないの』

「いえいえ! 拙者はまだまだ。すごいのは啓介殿でござるよ! 絶対切断がなかったら、もっと倒すのに時間がかかったでござる!」


 オタクさん……なんて謙虚でいい人なんだろうっ。

 強いし、率先して戦おうとしてくれたしっ。

 僕、大好きだなぁ~。


 ……それに加えて。


「ヒキニートさん何もしてないですよね? 何しに来たんですか?」

『だ、だって君らが全部倒しちゃうからっ』


「次からちゃんと働いてくださいね」

『ふぐぅううううう』

 

 さて……と。


『魔物を使って攻撃してきた、となるとワルージョ側にはテイマーがおるのかもしれぬな』

「テイマー?」


『魔物使いのことじゃ』


 なるほど……魔物使い。強そう。


『敵に居場所がバレてる以上、一箇所にとどまっておくのは危険だね。障壁の中に入ろう』

「でも、オタクさんの攻撃をはじくほどの強力なバリアなんですよね? 入れないじゃないですか?」


『ふっふっふ、そこでぼくの出番だよ! ぼくの聖武具の、ね!』


 ヒキニートさんの聖武具?

 そうか、この人も勇者なんだっけ。


「たしか、杖が聖武具なんでしたっけ?」


 杖の勇者っていうくらいだし。


『ふっふ、それは嘘さ。ほんとうの聖武具は、別にあるの。ねえ、何だと思う? ヒントは……』


 あー、もうまどろっこしいなぁ。


「障壁が邪魔なんでしょ? ならこうすればいいんだよ。蠅王宝箱ベルゼビュート!」


 僕は勇魔の鞄の蓋を開ける。

 蠅王宝箱ベルゼビュート。生物以外の、あらゆるものを吸い込むスキルだ。


 カバンの中から……。

 無数の黒い触手が吐き出される。


『うげええ! 触手やばいっす! めちゃたくさん! きもいっすぅ!』


 黒い無数の触手が、障壁にぺたぺたと張り付く。

 

「結構おっきいかも。でも……もんだいなーい! いっけー!」


 触手がぺたぺたぺたと障壁に張り付く。


「よーし、吸い込んじゃえぇええええええええええええ!」



 ゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 黒い触手がカバンの中に戻っていく。 

 すごい吸引力!


 触手がすべてカバンの中に、収納された!


「よし! って、どうしたの……二人とも?」


 ぽかんとするオタクさんと、ヒキニートさん。


「す、すごすぎるでござるよ……」

「いやぁ、それほどでも~」


「い、いやあの……わかっておるのでござるか? 今啓介殿……障壁をすべて、吸い込んだのでござるよ?」

「? はい。それが?」

「それがって……」


 オタクさんが呆然としてる。

 えー、どうしたんだろう?

(※障壁は、ゲータ・ニィガ王国全域を覆っていた。国土を覆うほどの巨大な障壁を、啓介は一瞬ですべて吸い込んだ。オタクは視力を強化するスキルを持っており、障壁の規模を理解していた。だから、驚いた)


『うぶぶぶ……ぼくの出番……』


 ヒキニートさんは三角座りしていじけていた。

 えー……。


 何もしてないくせに、何落ち込んでるんだろう……?

 オタクさんを見習って欲しいなぁ。


『ぼくの聖武具があれば、障壁を素通りできたのに……』

「えー、ほんとぉ~?」


『ほんとだもん! ぼくの聖武具すごいんだもん!』


 まあ、後でちゃんとヒキニートさんには働いてもらおう。

 そのときに、見せてもらうかな、ご自慢の聖武具を。


「障壁がなくなりましたね。じゃあ、カチコミですね!」

「む? 啓介殿、待つでござる! 地上に……人がいるでござる! 怪我をしてる!」


 僕らは空中にいる。

 ジャガーさんからひょこっ、と顔をのぞかせる。


 むむむむ!

 目をこらすと……確かに、人が結構集まっていた。


 こんな何もない平原に集まって、何してるんだろうあの人たち……?

(※ゲータ・ニィガから脱出しようとしていた、国民たちです。障壁に阻まれて外に出ることができず、魔物の攻撃を受けていました)


 そんなに大けがしてるようにも見えないし、ほっといてもいいんじゃないか?

 さっさとワルージョ、そして廃棄神はいきしんぶっ倒したいし……。


「ジャガー殿、そして、啓介殿。どうか、わがままを聞いてほしいでござる。あの人たちを、助けたいのでござる!」

『……いや、オタクちゃんよ。王国って君を追放したとこなんでしょ? 王国の人がどうなろうと、どうでもよくない?』


 珍しく、ヒキニートさんと同じ意見だ。



「かもしれませぬ。ですが! 目の前で傷ついてる人を、放ってはおけないのでござるよ!」


 ! すごい……オタクさん、勇者みたいだ!

(※↑オタクは勇者ですし、なんだったら啓介も勇者です)


「オタクさんの言うとおりですね! 治療します! ジャガーさん、地上に降りて!」

『りょ、了解っす!』


 ぎゅうぅん! とジャガーさんが地上へと降りる。


「うわあぁ!」「な、なんだぁ!?」「ひいい! バケモノドラゴン!?」


 え、バケモノドラゴン?

 どこどこ?

(※↑暗黒竜ジャガーノートのことです。啓介は感覚バグってますが、一般人からすれば、暗黒のオーラをまき散らす、巨大かつ凶暴な風貌のドラゴンです)


「もう大丈夫ですよ。怪我はすぐなおります! ルクスリアさん!」


 僕はカバンをパカッと開ける。

 そこから、エロ天使、色欲の魔王ルクスリアさんが出てくる。


「ハァイ、けーちゃん、呼んだ?」

「このけが人たちちゃっちゃと治しちゃってください」

「かしこまり~♡ みんな元気になぁれ~♡」


 ちゅぱっ、とルクスリアさんが投げキッス。

 魔力の風がけが人の間に吹き抜ける……。


「うぉお! す、すげえ!」「怪我がなおったぞ!?」「足が折れてたのに!?」「おれなんて腕を食いちぎられてたんだぞ?! どうなってやがる!?」


 よしよし。

 これでOK。


「ありがとうでござる、啓介殿!」

「いえ、勇者として当然の行動をしたまでです」


 おおお! と元けが人たちは歓声を上げる。


「まさか……勇者様?」「そうだ! 勇者様が助けてくたんだ!」「ありがとう、勇者様ぁ……!」


 わぁああ! と歓声を上げる国民たち。

 みんな、オタクさんを褒めてるんだね!

(※↑治療した勇者、啓介にみな感謝してます)

 

『けが人見捨てていこうとしたくせに……』


 ぼそっ、とヒキニートさんがつぶやいていた。

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[一言] マジで啓介おっかねえわ。 何度も言ってるけど、どーしても精神年齢が身体年齢以下、それも下手いたら幼稚園児レベルなのに、妙な知恵が働いたり勇者のレベルすら上回る埒外の力持ってるから、飯田氏があ…
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