エピローグ
《ワルージョ女王視点》
私はワルージョ=フォン=ゲータ・ニィガ。
ここ、ゲータ・ニィガ王国にて、【長く】女王に君臨する者。
私は寝室にて、鏡の前に座っていた。
「はぁ……美しい……惚れ惚れするほどに……♡」
私は自分の美貌に酔いしれる。
鏡に映るのは、【いつまでも】若々しい姿を保った、私の姿……。
ぴしっ。
「え?」
突如、私の顔に……ひびが入ったのだ。
ぴし、ぴき……ぱきんっ!
「顔にシワが! い、いやぁ……!」
しゅううううう……。
顔にシワ。肌からは、張りが失われていく……!
さっきまで、20代の美しい姿から……。
しわしわの、老婆へと……!
「いや! 助けてぇ!」
と、そのときだ。
「こんばんは」
いつの間にか、部屋の中に、女が立っていた。
黒いドレスに、黒い髪の、美しい女。
「シュブ様! 【シュブニグラス】様ぁぁあああああああああああ!」
私は黒い女……シュブニグラス様のもとへ駆け寄る。
彼女の足にしがみつく。
「シュブ様! ご、ご褒美を! 若返りの秘薬を早く!」
「そうね、剣の勇者を追放したものね。はい……」
シュブニグラス様は手を前に突き出す。
人差し指を1本立てる。
そこから……ぽた……ぽた……と【乳白色】の液体が垂れる!
私は、シュブ様の指からたれる乳白色の液体を口に入れる。
シュウウウウウ……。
私の体から湯気が立つ。
肌には張りが戻り、顔のシワも、元通りになった……!
「はあ……はあ……」
ぺたん、と私は床に座り込む。
秘薬のおかげで、私は元の美しい姿に戻れたのだ……。
「ワルージョ。今回はご苦労様。剣の勇者を追放してくれて」
「いえ! シュブニグラス様のご命令とあらば! 何だっていたします!」
私はこの黒い女、シュブニグラス様の言いなりとなっている。
私の仕事は、異世界から勇者を呼び出し、そして……廃棄すること。
そうやって呼び出し、廃棄することで、私はシュブニグラス様から、若返りの秘薬をいただいている。
もう……何年やってるだろう。
10……100……いや、もっとか。
とにかく、私は遙か昔にシュブニグラス様と出会ったときから今日まで、異世界から勇者を召喚し、廃棄し続けてきた。
勇者を追い出す理由は、何だってよかった。
使えない聖武具……たとえば鍋や靴などを引いた勇者は、簡単に捨てられた。外れ聖武具だといってね。
たまに、勝手に私の下を去っていく勇者もいた。弓や、短剣の勇者。
彼らをこの国から追い出しても、シュブニグラス様は、秘薬をくださった。
「さて……ワルージョ。今日はあなたに、大きな仕事を持ってきたわ」
「大きな仕事? なんなりと!」
「そろそろね、新しい勇者を補充したいの」
「新しい勇者を補充……ですか。それはかまいませんが……しかし、今の勇者がまだ生きております」
勇者召喚の儀式。
異世界から勇者を呼び出す、王家に伝わる、秘術だ。
この秘術を一度使うと、4人の勇者を呼び出すことができる。
しかし、この儀式には制限がある。
それは、【呼び出した四人が死亡しない限り】、次の勇者を召喚できない、ということだ。
「チャラオは死んだわ。あと生きてるのは、槍、弓……そして……鞄」
「…………」
鞄の勇者ケースケ。
あの子供が生きてることは、シュブニグラス様から、教えてもらっていた。
そして……シュブニグラス様から、抹殺の命令を受けたのだ。
私はチャラオを使ってケースケを殺そうとしたのだが……失敗。
チャラオを追放。
その後私はシュブニグラス様に連絡を入れ、今に至る。
そう……チャラオ、あの後殺されちゃったのね。
ほんと……役立たずなデブ!
昔は若くてかっこよかったから、手元においてやっていたけど、最近はデブだし、加齢臭はきついしはげだしで……正直捨てたくてしょうがなかった。
だから、死んで、清々した!
「ワルージョ。今この世界にいる、【勇者全員】殺しなさい。そして、新しい勇者を補充するの」
「…………」
シュブニグラス様が、どうして、勇者を定期的に異世界から呼び出し、私に廃棄させるのか……。
その意図は、わからない。
けれど、シュブニグラス様の思惑なんて、どうでもいい。
私にとっては……。
「かしこまりました」
「いいこね、ワルージョ。今日は、もうちょっと多めに、【秘薬】をあげましょう」
「ああ! ありがとうございますぅ!」
シュブニグラス様が指を差し出す。
私は、赤ん坊のように指に吸い付く。
「んく……んく……はぁあああああん!」
私の体に力がみなぎる……!
肌が、10代のごときみずみずしさを取り戻していた!
ああ、若さ!
永遠の美!
シュブニグラス様の命令に従うだけで、それらが手に入る!
だから私は、彼女の駒として動くのだ。
「さ、ワルージョ。この世界にいる勇者を、皆殺しになさい」
まずは……そうね、手元にいる槍から殺そうかしら。
次に、所在が割れてる弓。
最後に……鞄の順番で葬り去っていきましょう。
永遠の美を、手に入れるため。
「仰せの通りに、シュブ・ニグラス様!」
~~~~~~
《啓介視点》
虫さんたちを、従わせたぞ!
「ケースケ殿ぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
見上げると、空には……。
「わ、ジャガーさん! と……! オタクさーん!」
ずずぅん! と僕らの前に、巨大な黒い竜が降りてきた。
暗黒竜ジャガーノートさんだ。
そして、オタクさんが、ジャガーさんの背に乗っていたのである!
オタクさんは弓を背負っていた。
ほかにも、高そうな防具に身を包んでいる。
「敵はどこでござるか!?」
「敵……?」
「うむ、妖精郷のほうで、すさまじい魔力反応があったという報告があったのでござる! 啓介殿の身に何かがあったのだと思い、こうして武装してはせ参じたのでござるよ!」
お、オタクさん……!
僕のために……助けに来てくれたんだ! うぅう! やっさしい!
「ありがとう! でも大丈夫、僕が……やっつけましたので!」
「やっつけた……って、うぉおお! ま、魔蟲の群れでござる!」
「魔蟲も、だいじょうぶ! こいつら僕の、舎弟なのでっ。ね、みんな!」
「「「ぶーーーーん!」」」
魔蟲たちを見て、オタクさんが目を丸くする。
やがて……彼は「さすがでござるな、啓介殿!」と褒めてくれたっ。うれしいぞっ。
「で、ジャガーさんは何でここに?」
『セーバーさんから命令されたんすよぉ。弓、および鞄の勇者さんを、自分の下へつれて来いって。途中でオタクさんを見つけたんで、乗っけてきたんす』
ふむ?
つまり……オタクさんと僕を、ヒキニートさんのところへ連れて行こうとしてる……ってこと?
「なんで?」
と僕はヘルメスさんを見やる。
ヘルメスさんは、セーバーさんに意識をチェンジさせる。
「ちょっと困ったことになってね。君と……そこのオタクくんにも、協力してもらいたいんだ」
えー……ヒキニートさんの言うこと、なんで聞いてあげないといけないんだろう……。
普通に嫌だなぁ。
僕は自由に旅したいのに。
「よいでござるよ。困っている人が居たら助ける! それが勇者というものだと、拙者は思いますからな」
「僕もそう思います!」
仕方ないから助けてあげよっと。
オタクさんが助けるっていうからね。
「じゃあ、ジャガーノートに乗って、ぼくの城に来てね」
「わかりました」
ジャガーさんの上に、僕、オタクさん、そしてヘルメスさんが乗る。
「ディートリヒさんはどうする?」
「私は帝国に帰ります! 一人で帰れますので、お構いなく!」
お構いなくなら、じゃあ、ほっといていいか。
するとオタクさんが言う。
「ジャガー殿。申し訳ないが、一度帝都へ寄ってはいただけないでござろうか。ディートリヒ殿を送り届けたいのでござる」
オタクさん……!
『えー……でもセーバーさん、早く連れてこいって言ってたんすけど……』
「ジャガーさん。オタクさんの言うとおりにして」
『ひぃい! わかったすぅう! 言うこと聞くんでぇ!』
なんかあっさり言うこと聞いたなぁ。
なんでだろ?
(※↑啓介が怖いからです)
まあ、何はともあれ。
僕らはジャガーノートさんの背中に乗っかる。
そして、新たなる目的地に向かって、出発したのだった。
【※読者の皆様へ】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
第2部はこれにて完結です!
「第2部面白かった!」
「続きの執筆もよろしく!」
「カバン無双してるとこもっと見たい!」
ほんの少しでもそう思ってくれた方は、
この下にあるポイント評価欄を
【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】にして、
『ポイント』にて評価お願いします!
ポイントは作品を書くの強烈なモチベーションになりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします!
↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります!