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05.ハンバーガーを取り寄せ絶賛される



 皇帝と話したあと、僕は、オタクさんのお家へとお邪魔することになった。


 オタクさんの家は、それはもう、大きなお屋敷だった。

 この立派な屋敷を建てられるくらい、今のオタクさんは金も名誉も持ってる人なんだろう。凄い人な!


 僕はオタクさんたちと夕飯を食べることになった。(黄昏の竜の皆さんは遠慮してた。僕らの再会を邪魔したくないそうだ)


「すごい……! 豪華な食事ですね……!」


 長いテーブルの上には、たっくさんの料理が並んでいる。

 地球のモノに近い料理が結構あった。


「遠慮無く食べてほしいでござるよ!」


 せっかくのご厚意だもん、残したらいけないよねっ。

 シチューを、ぱくり。ごくり。


 おお! おいしぃ!

 お肉とろとろ~。


『ケースケの作る料理や、取り寄せるチキューの料理の方が、おいしいぞ!』


 そうかなぁ。

 僕はオタクさんの用意してくれた、異世界料理も結構美味しいと思うけど。(ちょっと味が薄いって思うけども)


「! 取り寄せる……どういうことでござる?」


 上座に座るオタクさん(と、背後にシルフィーナさん)の眼がきらんと輝く。

 ううん、他の人にはともかく、オタクさんにならいいよね。


 僕は簡単に、勇者の鞄の能力について説明する。

 

「…………!」がたんっ!

「シルフィーナさん? どうしたの? なんか、急に倒れたけど……?」


「だ、大丈夫です……。しかし、地球の商品を、取り寄せ放題とは……破格、ですね」

「便利ではあるかな~って思ってます」

「便利……たったそれだけ……」


 ぶつぶつ、とシルフィーナさんがつぶやく。

 うぉっほん、とオタクさんが咳払いをする。


「啓介殿、よろしければ、スキルを披露してもらえないでござるか?」

「OK~」


 いろいろお世話になってるし、料理も作ってもらったお礼に、僕が料理を取り寄せてあげよう……!


 僕はカバンをあけて、手を突っ込む。

 オタクさんの……好きそうなもの!

 取り寄せ!


「はいこれ、じゃーん!」

「!? そ、それは……!!!!!」


 オタクさんが立ち上がり、こちらに駆け寄ってくる。

 僕の手には、1つの、紙袋が握られている。


『うぉお! な、なんじゃこの、美味そうな匂いはぁああああああああ!』


 スペさんがぴょんぴょん、とテーブルの上でジャンプし、僕の取り出したものを取ろうとする。


「本日取り寄せたのは、こちら……じゃーん! バーガー開田かいだの【ハンバーガーとポテトのセット~】」


 バーガー開田かいだとは、日本で一番有名な、ハンバーガーチェーン店のことだ。

【K】のマークが特徴的。


「ば、バーガー……バーガーぁああああああ! ポテトぉおおおおおおおおおおおおおお!」


 オタクさん、絶叫。


「食べてよいでござるかぁ!?」

「え、ええ……どうぞ」


 オタクさんは僕からバーガーの紙袋を受け取る。

 そして、ハンバーガーを取り出して……。


 がぶりっ。


「…………」


 オタクさん……呆然とした表情のまま、滝のような涙を流していた。

 そ、そんなに泣くほどおいしいかなぁ……。


「あ、あの……オタクさん? 大丈夫ですか?」

「うぐ……ぐすう……日本の……バーガー……もう、一生……食べれないと思ってた……でござる」


 ああ、だから泣いてるのか……。


「拙者……バーガー開田のバーガー、ほんと大好きで……このジャンクな味わいが、たまらなく好きで……。でも……異世界の技術力、食材では……完全にこのジャンクさを再現したバーガーはできなくて……」


 だから、また食べられて、嬉しいんだ。

 ふふ、良かった。取り寄せたかいがあった。


 よーし!

 もっと喜ばせちゃうぞっ。


「いっぱい食べていいよっ」


 僕は、取り寄せカバンをつかって、ありったけのバーガーとかポテトとかを、取り寄せる!


「ありがとう、啓介殿! あ、あのぉ……できれば、屋敷の皆に分けてもよろしいでござるか?」


「え? うん……いいけど」


「ありがとう! シルフィーナ! 皆を呼んできておくれでござるぅ!」


 ぺこっ、とシルフィーナさんが頭を下げると、部屋から出ていった。


「オタクさんだけで、食べても良いのに……」

「美味しいものは、皆で食べた方が美味しいでござるよ!」


 まあ、それもそうか。

 ほどなくして、メイドさんとか、使用人さんが、いっぱい集まってきた。


 みんな、獣人とか、ハーフフットか、亜人みたいな。そういう人間じゃない種族の人たちが多かった。


「こんな美味しいご飯はじめてぇ!」

「何このポテト! 油……じゅわってうまい!」

「塩……こんなにきいたポテト初めてぇええええ!」


 異世界の人たちは、特に驚いて、感動の声を上げていた。


「皆、啓介殿のご厚意で、このような美味しい料理を分けてもらえたでござる。感謝いたしましょう」


「「「ありがとうございます、けーすけ様!!!!!!」」」


 まあ、オタクさんも喜んでくれてるみたいだし、皆に分けて良かったな。


「…………」


 シルフィーナさんは険しい顔をして、照り焼き開田かいだバーガーを食べている。


「どうしたの? まずいです?」

「………………いえ。とても、おいしいです。とても……これは……世界を覆すほどな、おいしさです」


 大げさだなぁ~。


「ところで、けーすけ様。これからのご予定を伺ってもよろしいでしょうか?」


 シルフィーナさんが眼鏡をかけ直して言う。


「予定? うーん……特には……」

「でしたら、当家にしばらく滞在するのはどうでしょうか?」


 オタクさんちに泊まるってこと?

 わ、わー! いいかもぉ~!


 オタクさんには、いーっぱいおしゃべりしたいことあったし!


「幸い、当家には空いてるお部屋がたくさんあります。好きなだけ、屋敷に留まってくださっても……」


 そのときだ。


「シルフィーナさん」


 オタクさんが、微笑みながら……しかし、きっぱり言う。


「啓介殿には、啓介殿のやるべきこと、したいことがありましょう。無理にここに、留めるようなマネは、してはいけないでござるよ」


「! ……大変、差し出がましいことを」


 ぺこっ、とシルフィーナさんが頭を下げる。

 え、ええ~? なんで謝るんだろう。


 別に気にしてないのに。


「啓介殿、先ほどスペルヴィア殿にうかがったのですが、今旅の途中なのですな?」

「あ、うん。大勇者ミサカさんの、呪いを解くために、旅を続けてるんだ」


 僕は簡単に、ミサカさんのことを説明する。

 ダンジョンで僕らと同じ勇者、大勇者ミサカ・アイさんに会ったこと。


 呪具に封印されていること。

 封印を解くため、聖武具のレベルを上げていること。


「僕の聖武具……モノを収納するだけでレベル上がるから便利だったんだけど、最近ちょっとレベル上がらなくて……」


 最初は順調にレベル上がっていったのだけども、最近停滞気味なのだ。


『仕方あるまい。レベルが上がれば上がるほど、レベルアップに必要な条件は高くなるのじゃ』


 なるほど、とオタクさんが得心いったようにうなずく。


「ようは、今までよりたくさん経験値をためねば、レベルが上がらなくなってるってことでござるな」


「うん……。でもたくさんの経験値って、どうやって貯めればいいかな?」


「ふぅむ……ゲームだと、強い敵を倒せば、たくさん経験値が入りますな」


 なるほど……!

 そういえば、魔族の……えと、なんだっけ。


 頭痛さん! そうだ、頭痛が痛いさん(※煉獄のインフェルノ)を収納したとき、結構、レベル上がった。


「強そうなのがいそうなとこ、知ってる?」


「知ってますぞぉ! 【妖精郷アルフヘイム】なんてどうでしょう!」

妖精郷アルフヘイム……?」


 聞いたことないや。


「帝都から北側へ行ったところにある、大樹の森のことでござる。そこには、魔蟲まちゅうと呼ばれる、強い魔物がたくさんいるでござる」


 おお! いいね!

 強い魔物!


 正直、七獄セブンス・フォールってところ、そんな強い魔物いなかったからなぁ(※←全員Sランク以上の化け物)


 強い敵、大歓迎。

 だってそいつらたくさん収納すればするほど、ミサカさんは早く自由になれるんだもん!


妖精郷アルフヘイムまでは、使いのものを付けましょう」

「わぁ! ありがとう!」


 こうして、僕は次なる目的地として、妖精郷アルフヘイムへと行くことにしたのだった。



~~~~~~

《シルフィーナ視点》


 私の名前はシルフィーナ・イイダ。

 ハーフエルフであり、現OTK(おたく)商会ギルマス、オタク・イイダ様の妻である。


 オタク様のご友人、ケースケ様が当家に泊まることになった。

 その日の夜。


 私は、オタク様の執務室に来ていた。


 オタク様は夜も遅いというのに、書類仕事をなさっていた。

 私はお茶を、彼の前に出してあげる。


「ありがとう、シルフィーナさん」


 ……私は、凄く、凄く不服だった。

 その気配を、彼は気取ったのか、こちらを見上げて尋ねる。


「なにか、言いたいのでござるか?」


 ……こんなことを言うのは、不敬だとは承知してる。

 でも……どうしても、言いたかった。


「なぜ、ケースケ様を、【囲い】にならなかったのですか?」


 あの少年の持つ聖武具【勇者の鞄】(今は違うモノに進化したらしいが)は、破格の性能をもっている。


「あのカバンがあれば、我が商会は、さらなる財を築けるではありませんか」


 異世界の商品は、劇薬だ。

 あの世界の品物を、こちらに売れば、目もくらむような大金が手に入る。


 現にオタク様は、地球の知識を使い、商品(銃など)を考案し、商会を大きくした。


「あの少年は、あなた様にとてもなついておられました。あのまま、商会に取り込めば、きっと……」

「それはできませぬなぁ」


 ずずう、とオタク様がお茶をすする。

 ……私は、知ってる。


 彼の苦労を。


「……王国を追放されてまで、あなたはあの少年を探し続けてました。その動機について、ずっと疑問でした」


 私は、知ってる。

 オタク様は、12年前、異世界から召喚された。


 次の日、カバンの勇者が死んだ知らせを彼が聞く。


「女王や周りが、もうカバンの勇者は死んだといっても、あなた様は生きてると主張した。女王に逆らった罪で、王国を追放され……それ以降、お尋ね者。実力主義な帝国から1歩も出れなくなってしまっても、必死になって彼を探そうとした……」


 オタク様の歩みを知ってる。

 だからこそ、私はケースケ様と出会い、そして彼の持つ凄まじい聖武具を見て……納得したのだ。


「あなた様が、彼を探すのに情熱を捧げたのは! あのカバン……そして、あの子が取り寄せる地球の商品! それを手に入れるためだったのだと、今日ようやく長年の疑問が解けたと思ったのに!」


 でも……。


「シルフィーナさん。それは、違うでござるよ」


 ……彼は優しく微笑みながら、首を振るのだ。


「拙者はただ、彼を、ほっとけなかっただけでござる。というか、そもそも拙者、取り寄せカバンなんてスキル持ってるの知らなかったでござるし」


「なぜ……そこまでするのですか!」

「啓介殿は……昔の自分に似てるのでござるよ」


 ……何を言ってるのかわからない。でも……大切なことを言ってることだけはわかった。


「拙者昔は、デブで、眼鏡で、オタクで……みんなから嫌われてたのでござる」


 ……とても、信じられなかった。


「いじめられ、ハブにされるつらさは……誰よりもわかっていたでござる。あの子が、カバンの聖武具を引いてしまったとき……周りは、拙者の知ってる、いじめっ子達と同じ眼をしていたでござる」


「……だから、自分と同じ境遇の彼に、慈悲をかけた……?」


「慈悲なんてたいそうなものじゃないでござるよ。ただ……啓介殿のことを、他人事で済ませられなかったでござる」


 つまり、彼の持つ能力が欲しくて、助けたのではなく、単純に居なくなった彼を心配してた……。


 だから、商会に取り込もうとしなかったのだ。


「直ぐに妖精郷アルフヘイムへ旅立つよう促したのは?」

「それは、シルフィーナさんなら、わかるでござろう?」


「聖武具がもたらす莫大な財を狙って、権力者たちが、ケースケ様を取り込もうとしてしまうから」

「然り。長く留まるより、あちこち旅していた方が、悪い大人に捕まりにくくなるでござろう?」


 ……ああ、もう。

 この人は。


 なんて……慈悲深いんだろうか。

 この世界で忌み嫌われる存在……混血種たちを救うだけじゃあきたらず、生涯の、伴侶にまでしてくれる人。


 十分優しい人だって、わかっていたのに……。


「ごめんなさい。私が、浅慮でした」

「いやいや! シルフィーナさんも、我が商会のためを思って、行動してくださったのでござろう? ありがとう。しっかりした人が妻でよかったぁ!」


 ……私は生涯、この優しい、弓の勇者様の側で、彼を支えよう。

 改めて、そう思ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オタクさん、いい人! [気になる点] ケースケ君に、この世界の常識を、誰か教えてあげればいいのに…。
[一言] いやあの飯田氏?啓介を送り出すのは構わないんだけど、その前に本人のスキルについてとかこの世界の常識あれこれとか、みっちりしっかりじっくりたっぷり微に入り細に入り教え込んでおいてくれませんかね…
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