17.サポート役としても超優秀だった件
僕は低ランク(推定)冒険者パーティ、【黄昏の竜】の皆さんと一緒に、地上を目指していた。
ミニマップスキルを、ハーフフットのチビチックさんに貸してあげた。
彼はマップを使って道案内をしてくれる。
「やっぱこのマップすっげえぜ。地図の拡大縮小までできる……紙の地図じゃこんなことできねーよ」
「へー……そんなことできるんですね」
「お、おう……。これおまえのじゃ……あ、いや。待った。なんでもない」
チビチックさんは、いい人だ。
余計な詮索をしないでほしいっていう空気を読んでくれる。
僕と同い年、いや、年下かも知れない。
そんな彼がこんな大人な対応するなんてなぁ。
『ケースケよ。敵じゃ』
ぺちんぺちん、と頭の上に乗ってるスペさんが、僕の頭を尻尾で叩く。
どうやら魔力感知で、敵の接近に気づいたようだ。
「あのー、モンスターが近づいてるようですよ?」
「「「????」」」
三人ともが立ち止まり、首をかしげる。
「近づいてるようって……どういうことだい、ケースケくん?」
リーダーのシーケンさんが尋ねてくる。
「言葉通りの意味です。モンスターが来ます」
シーケンさんは、チビチックさんを見やる。
彼は目を閉じて、耳を澄ますポーズを取った。
「いや、魔物の音は聞こえねーぞ」
「ケースケ君は何を根拠にモンスターがくるって思ったの?」
今度はエルシィさんが尋ねてくる。
「僕って言うより、スペさんが魔力感知って技術が使えるんです」
「!? ま、魔力感知ぃ~!?」
あれ、魔法使いエルシィさんなんかすっごい驚いている。
あれあれ?
「魔力感知使えないんですか? 魔法使いなのに」
「うぐ……つ、使えないわよ……! 悪い!?」
そっか、駆け出しの魔法使いじゃ、使えない技術なんだね。しょうがないか。
「いえ全然」
『おいおぬしら、のんきに会話してる間に、だいぶ近くまで敵が来たのじゃ。我は自らと、ケースケの命しか守らんからな』
スペさんは黄昏の竜の人たちのことを嫌っているらしい。
僕のこと怒鳴ったって、ただそれだけで機嫌を損ねてしまったようだ。
「エルシィ、君の意見を聞きたい」
シーケンさんの問いかけに、エルシィさんが答える。
「フェンリルさんの言葉を信じましょう」
「よし、戦闘準備!」
シーケンさん、チビチックさんが武器を取り出す。
僕を守るような態勢だ。いいのに……。
って、ん?
『GISHASHA……!』
なんか、いるー。
あれなんだろ、カメレオンかな?
身長は150くらい。
二足歩行する、カメレオン。
両手には短剣が握られてる。
普通に近づいてくるんだけど……。
「くそっ、敵はどこにいるんだ?」
「音がしねえな。くそ」
「遠くから魔法で攻撃してくるかも。気をつけて!」
えっとー……。
ええっとぉ~?
なにこれ、ギャグ?
コント?
普通にそこに、敵がいるのに、皆見えてないフリしてる……?
カメレオンがエルシィさんに近づいていく。
え?
ちょっと?
カメレオンがダガーを振りかぶる。
ええっ?
エルシィさん気づいていない?
「もー何やってるんですか」
僕は近づいて、ぐいっ、とエルシィさんを引っ張る。
ぶんっ……!
カメレオンのダガーが空を切る。
『GISH……!?』
なんかカメレオンは驚いてる。
「ちょ、ちょっと何!? ケースケ君!? 戦闘中よ今は!」
「それはこっちのセリフですよ。戦闘中ですよ皆さん。おふざけ禁止です」
ばってん、と僕が腕で×を作る。
三人ともは困惑してる。んん?
『ケースケよ。恐らくこやつら、そのモンスターが見えておらんようじゃ』
「スペさんは見えてるの?」
『目視はできんが、魔力で敵の位置を感じておる』
って、あれ?
じゃあスペさんですら、このカメレオンを視認できてない……?
「スペさんも見えてないみたいですけど、そこにカメレオンみたいなのが、いますよ」
「え、ええ!? それって……まさか、【不可視カメレオン】!?」
・不可視カメレオン(S+)
→認識阻害の力を持つ亜人型モンスター。色を変えるのではなく、存在を消すため、絶対に視認できないのが特徴。
存在を消す……?
いや、普通にそこにいますけども。
「ケースケ君、見えてるの!? 不可視カメレオンが!?」
「うん、そこにいますよ?」
カメレオンと目が合う。
向こうがギョッ、とびっくりしてた。
カメレオンも自分が見えてるなんて微塵も思ってなかったのかも。
視覚支援?
『いや、ケースケ。おぬしがカメレオンを見えてるのは、スキルではなく、神眼持ちだからじゃ』
あ、なるほど。スキル効果じゃなくて、神眼そのもののスペックが高いから、見えないカメレオンが見えてるのか。
「ミサカさん、力借ります。神眼の派生スキル……【浄眼】」
・浄眼(SSS)
→視界内にいる対象の能力、付与等を無効化する。
つまり、ヒロ●カの先生のあれだ。
「GISHA!?」
「おお、見える!」
「敵が姿を現した! これならいけるぞ!」
シーケンさんとチビチックさんも、見えるようになったようだ。
二人が武器を構えて、カメレオンに斬りかかる。ふぅ。
「さて僕も援護射撃でも……」
「ちょ、ちょっと君! 危ないわよ!」
エルシィさんが止める。
危ない……?
ああ、そうか。
絶対切断、ここで使ったら、シーケンさんたちに当たっちゃうかもだもんね。
しかたない。僕は大人しくしておくか。
それにしても……。
「えい! だぁ!」
キンキンッ!
「くっそ、すばしっけーな!」
かきん、きん!
「【裂破斬】、うおぉおおおお!」
戦闘……ながっ!
無駄に長いなぁ。なんだか飽きてきちゃった。
最初はさ、ファンタジー世界のバトルだ! ゲームみたい!
って思ったよ。でもねぇ、長い。
30分くらい経っても、まだ倒せないでいる。
「ふぁ~~~~~……」
『ながいのぉう。何やってるんじゃあやつら』
「ほんとねー。もぐもぐ」
『あー! ケースケずるい! ひとりだけ菓子パンたべてるー!』
「ちぇ、ばれたか」
『我にも一口一口~♡』
「はいはい」
ややあって。
「ぜえ……はあ……はぁ……」
「や、やった! 倒せた! やったぜ!」
前衛の二人とも、大汗かいていた。
その場にどさ、っと倒れる。
エルシィさんは安堵の息をつくと、二人に近づいていく。
僕は浄眼を解いた。
「お疲れ二人とも! すぐ治療するから待ってて!」
エルシィさんが座り込み、目を閉じる。
治療するっていってるのに、なんで寝てるのこの人……?
「し、しんどい戦闘だった……」
「ああ……やばかったなあれ……」
「というか、ケースケ君。ありがとう。君が見えない敵を見えるようにしてくれたから、勝てたよ」
「ほんと……あんたがいなかったら不意打ち食らって死んでたわ。マジ助かった……」
二人から感謝される。
悪い気はしないけど、うーん。
格下の人から褒められてもなぁ。
てゆーか。
「ねえスペさん、この人たち弱くない?」
「「「…………!」」」
『そうじゃな。雑魚もいいところじゃな』
「「「ぐっ!」」」
「あんな敵に30分もかけるなんてさ」
『まあ、しょうがないじゃろう。弱いしのこやつら』
三人ともなんだか不服そうだった。
事実を言っただけなのに、なんで怒ってるんだろう。
「先に進みましょうよ」
僕はさっさと地上へ行き、オタクさんに会いたいんだからさ。
「ちょ、ちょっと休憩を……チビチックはケガもしてるし」
あ、ほんとだ。
左腕を深く斬られてる。
てゆーか、牛さんのときもそうだったけど、カメレオンも動きがちょースローだったよね?
あんな斬撃よけられないなんて、もう、鍛錬が足りないんじゃないの?(←※神眼の動体視力が凄いだけ)
まあでも、疲れてる人たちに早くしろって言うのは、ちょっと酷か。
なんか嫌なやつみたい。
「これ飲んでください」
僕はカバンから、黒い箱を取り出す。
ぱかっ、と蓋を開けて、それをチビチックさんに渡す。
「は? なんだよこれ?」
「まあまあ、ぐいっと」
「ええー……こわー……飲むけどさ」
のむんかーい。
この人結構素直だよね。
ごくん……。
パァアアアアアアアア!
「う、うぉおおおおお! す、すげえええええええ! 傷が一瞬でなおっちまったよ!」
腕の傷が瞬時に回復。
ぎょっ、とシーケンさん、そしてエルシィさんも驚いてる。
あれぇ?
このファンタジー世界に、ポーションとかないの?
回復薬なんてありふれたもの、ここでもうってそうなんだし、飲んだら傷が治るのなんて、見飽きてるんじゃないの……?
「や、ヤバすぎるぞこれ! あり得ない!」
「お、おれにも一口……うぉおおお! 疲労が一瞬で消えた!? すごすぎるぅううううう!」
……あれ?
もしかしてだけど……。
僕が思うより、この人達……弱い。
というか、まさか駆け出し冒険者なのかな……?
きっとそうだ。
回復薬も買えない→金持ってない→貧乏。これだ。
ああ~……なるほど。
それなら、あんなカメレオンなんて、弱そうな敵倒すのに30分かかってしまうのも、当然か。
「すごいわケースケ君! あなた……何をしたの? 魔法?」
「いえ、ストックしてた【(一瞬でケガも病気も全部)回復 (する)薬(的サムシング)】をつかっただけですけど?」
「ただの、回復薬? いやいや! そんなわけないでしょっ? だって……」
エルシィさんがツッコもうとすると。
『おい女。また主に楯突く気か? ん? 消すぞ? ビームで』
スペさんが凄む。
「ひぃい! すみませんフェンリル様!」
何はともあれ、魔神水(※ケガも病気も全部回復する薬的サムシング)で、二人が元気になった。
「さ、先へ進むぞ皆! ケースケくんがいれば、おれたちは無敵だ!」
無敵だって?
大げさな。強い人はいっぱいいるよ、スペさん(※七大魔王)とか、ミサカさんとか(※神眼の大勇者)。
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