トカゲ
簡易的なテントで眠むりについた翌朝。
ルルルはテントから差し込むうっすらとした朝の日差しで目が覚めた。
テントの下に敷いてある革は2枚重ねになっており、下はヒョウアザラシの革で防水仕様となっていて、雪原の上にそのまま敷いても平気な造りになっていた。
その上には羊の魔獣の毛皮がしいてあり柔らかく温かいまま眠りにつくことができた。
ルルルの隣ではココとロンが気持ちよさそうに寝息を立てている。
「ココ、ロン。朝になったぞ、起きろ」
ルルルが二人をそっと揺さぶって起こす。
「ん……ルルル兄ちゃん。ごめん、起きれなかった」
最初に起きたのはココだった。ココは目覚めると、隣でまだ眠っているロンを力強く揺さぶって起こす。
「ロン!ロン!朝だよ!」
「……うぅぅぅ。このテント気持ちいいよ~、もっと寝てたいよ」
ここにいる誰もがロンの気持ちを理解している。普通に村の洞窟の中で寝るよりも、このテントで寝るほうが遥かに寝心地が良かったからだ。
「ロン、ゆっくりしている時間はないぞ。もうすぐ出かけるぞ」
「うん、わかったぁ」
ルルル、ロン、ココはテントから出るとそこではササラが岩に腰をかけながら周りを警戒しているところだった。
「ササラ、おはよう」
「ルルル~、おは~」
ルルル達はテントを畳み、出発することにした。再び川辺へ向かい、上流に向かって川を遡っていく。
暫くするとルルルがロン達に尋ねた。
「ロン、ココ。二人がお父さんたちと離れてしまった場所に心当たりはある?」
ロンは少し頭を捻って考えたが答えは出てこない。
それを見たココが代わりに答えた。
「もう少し上流に遡っていくと川の向こう岸に氷柱木の林があるんです。林の中には岩場が多くあって、そこに小さな隠れ場があって……」
暫く話すとココが少し悲しそうに下を向いた。
代わりにロンが話を続ける。
「その隠れ場所に固まって隠れながら過ごしていたんだ。そしたら、さっきのトカゲの魔獣がいっぱい集まってきて。お父さんたちは僕たちを逃がすために囮になってどこかへ走っていったんだ。それからは必死にトカゲから逃げてばかりで……」
最初は普通に話してくれたロンも、徐々に声が小さくなっていく。悲しいというよりは何もできなかった自分に悔しい、という気持ちがあるように感じられた。
「ありがとう、二人とも。じゃあ、まずはその林の中の隠れ場所を探索しよう」
「そだね~、行こう~」
ルルルがそう告げるとササラも後から気楽に続く。そんな2羽にロン達は不思議そうな顔をした。
「お兄ちゃん達、魔獣が怖くないの?」
ココが不思議そうに尋ねるがルルルは素っ気なく返す。
「相手によるかな」
そうしてルルル達は更に上流へと歩みを進めていった。やがて川の向こう岸に氷柱木が見え始める。
ルルルが一度足を止めて向こう岸を眺めるがココが一言口にする。
「お兄ちゃん、もう少し先だよ」
「ココは本当に記憶力がいいなぁ」
ルルルに褒められたココは、少し嬉しそうに照れ笑いしている。
更に先に進むとココのいう通り、氷柱木は林のように数が増えていき、点々と岩の姿も確認する事ができた。
「この辺りの向こう岸がトカゲの魔獣に襲われた場所だよ」
ココは切なそうにその場所を教えてくれた。
ロンは歯を食いしばり拳を握りしめ、悔しそうな顔をしている。
ルルル達は向こう岸に渡れそうな川幅が狭く浅い場所を探した。
すると一羽で先に進み始めたササラが丁度良い場所を見つけたようでルルル達に伝えた。
「ルルル~、こっちの水は浅いよ~」
ササラのいる場所は水深が浅くなっており、荷物を上に掲げて持っていけば塗れずにすみそうな深さだった。
「よし、あそこから向こう岸にわたるぞ」
まずはササラが荷物を頭の上に載せ、川を渡り始める。次にルルルも同じように続いて行った。
ロンとココは共に手を繋ぎ恐る恐る川をわたり、全員が無事向こう岸にたどり着くことができた。
その時、ロンが急に下を向き、小刻みに尻尾を揺らし始める。
ササラはその明らかに不自然な様子が心配になり、尋ねる。
「ロン、ど~した~?」
「う、うん……。多分だけど……。魔獣が近づい来てる」
ロンはそう告げると、少し不安そうにルルルの顔を見上げた。
「わかるのか?」
「うん、何故か急に尻尾が反応し始めたの」
「わかった、とりあえず撃退する。ササラ!」
ロンはパッと顔を上げ、驚きの表情でルルルを見つめた。
(え?子供の僕に探知能力があるはずないのに……信じてくれるんだ)
疑いもせず、自分の言う事を信じてササラに指示をだしているルルルの姿をみて、彼への信頼がさらに深まっていった。
ロンの話を聞いたルルルは、彼が自分を信頼し始めてくれた証だと考え、嬉しく思っていた。
(成長の加護によって、何かしらの能力に目覚め始めたのかな?俺を信頼し始めてくれてるんだね)
そして、信頼に少しでも応えるためにも全力を尽くそうと気合をいれる。
「やるぞ!」
「りょ~かい~。ココとロンは下がっててね~」
即座に返事をしたササラは、さっと素早く前に出て、目を細めながら林付近を警戒する。
しばらくすると、氷柱木の林の中から背中を氷のトゲに覆われた、トカゲの魔獣が3体姿をあらわした。
トカゲの魔獣は先日、ロン達を襲っていた魔獣と同じくらいの大きさで、体長は120㎝くらい幅は80㎝くらいだろう。
頭をと尻尾を左右に大きく振りながら、少しずつルルル達に近づいてくる。
背中を覆っている氷のトゲは、武器もなく手で触れようものなら即座に凍りついてしまうほどの冷気を纏っていた。
「ササラ、背中のトゲに気を付けて、頭を狙って!」
「は~い、私は右のやつをやっつけるね~」
ルルルはササラに戦闘の注意点を伝えると、ササラは了承の返事をして右手奥側の魔獣の元に走っていった。
ササラの両翼にはすでに魔力が纏われている。
「じゃ、俺は左の2体をやつけるよ。後続もいないようだし、一気にやるぞ!」
ササラが走り出した後も林付近を確認していたが、後続の気配はない。
ルルルもササラ同様に両翼に冷気を纏わせ、1.5メートル近くの長い細剣のように翼を変化させていた。
ロンとココは身長より長い剣を両手に携えたペンギンが魔獣に向かって走いく、不思議な光景を見て目を丸くした。




