テント
狐の獣人ロンとココを一時的に仲間として迎えたルルルとササラ。
ロンとココはようやく気持ちが落ち着いたのか、涙を拭い顔をあげた。
「自己紹介がまだだったね、俺はルルルだよ。よろしくね」
「は~い、わたしはササラだよ~」
ルルルが丁寧に自己紹介をする、ササラも無表情のまま、片手は腰に片手は額の上に翼を当て、ポーズを決めながらの自己紹介をする。
彼女なりに場を和ませようとしているようだ。
「クスクス……ササラお姉ちゃん、面白いね」
ロンとココはそんなササラを見て、少し緊張がとけたようだった。
「ところで、ルルル兄ちゃん達はどこに向かっているの?」
「ん?俺たちは鳥人族の村を目指しているんだ。とりあえずは川を遡って原初の湖って呼ばれている場所を目指そうかと思ってるよ」
ロンの疑問に答えたルルルだが、それを聞いてココが少し首をかしげながら考えている。
「ど~したの、ココ?お腹空いた?」
「ううん、ササラお姉ちゃん。原初の湖って聞いたことがあるなぁ……って思ったんだ。ロン、覚えてない?」
ココは原初の湖という名前に記憶があったようだ。ロンにも記憶があるか尋ねるが、ロンは首を横に振った。
「とりあえずは二人とも濡れてしまったから、どこかで少し乾かさないと……」
ルルルがそう告げると、二人は少し離れた場所に移動し、ブルブルっと体を震わせ水気を振り落とした。
しかし、完全には水気が取れず、綺麗な白い毛もペタっとしぼんでしまっている。
ルルル達はそのまま歩き出し、日当たりの良い場所にを探した。大きく平らな岩に二人を座らせ、そこで湿った毛を乾かすことにした。
海から吹く風と日差しが二人の毛を乾かし、乾いた毛を二人が互いに整え合う。
そんな姿を見ていると、ルルルもササラも微笑ましい気持ちになる。
「あ、思い出した。原初の湖って結界がある不思議な湖だよね」
そんななか、突然ココが大きな声で話し始めた。
「そんなのあったっけ?」
「あったじゃん、大人達がここは大事な場所だって言ってたところだよ。6年くらい前に行ったじゃん」
「俺達まだ4歳だよ、そんなの覚えてないよ。ココは頭がいいからなぁ」
ココは記憶力に優れているようだった。子供の頃に父親たちと少しだけ通りかかった不思議な湖の名前をしっかりと覚えているというのだ。
「ココ、確かに原初の湖には結界がある場所だよ。でも、どこにあるかまでは覚えてないよね?」
ルルルはココたちが湖に行った事があるという情報だけでも、少し希望が見えた気がした。しかし、念のために聞いてみる。
「う~ん、確か……この川の上流の方だけど……いくつかに川が分かれていた気がするよ。行ってみないと思い出せないよ」
「ココ、すごいね~」
ササラがココの頭を撫でながら褒める。
しかし、ルルルも流石にここまで覚えているとは思ってもみなかった。
ココは本当に賢い子供のようだ。
おかげでルルル達の旅の道筋ははっきりと見えて来た。このまま川を遡って上流からの合流地点まで行く。
その後、ココが道を覚えていればその道を進む、覚えていなければ感に頼りながら更に上流を目指す。
不確かではあるが、少し前までの状況よりは良い方向に進んでいる。
「ありがとう、ココ。目的に少し近づいた気がするよ」
「ううん……でも、もし良ければ……」
ココは少し顔を下に向け、申し訳なさそうに話そうとしたが途中で話を止める。
ルルルはどうしたんだろう?という顔をするがササラは何かわかったようだった。
「ココ、お父さん達の事だね~。いいよ~、ルルルは優しいからね~」
ササラの発言でルルルも何を言っているかがわかった。おそらくココは、自分のお父さん達の行方を探して欲しいのだろう。
「ココ、まずはお父さん達と離れてしまった場所に行ってみないか?お父さん達も二人を探しているかもしれないよ」
ルルルが微笑みながらそう伝えると、二人は表情が明るくなり嬉しそうに頷いた。
「とりあえず、今日は眠れる場所を探そうか」
「うん!(はい!)」
ルルルの提案に二人は元気の良い返事をする。
彼らは上流へと歩みを進めながら、雪や風を防げそうな場所を探した。
川辺には小さな石が敷き詰められていて、とても寝心地が良いとは言えなそうだ。
川から少し離れて行くと小石はなくなり、雪原に出た。所々に氷柱木が生えているが、以前エレンシアと休憩したような大きな氷柱はない。
どうしたものかと悩んでいるとササラが背中に背負った大きな荷物を雪の上に下ろした。
「ササラ、どうしたの?」
「えへん、実はロクとライから良い物をもらった~」
なんだろう?とルルルやロン達が見守る中、ササラは大きな骨を雪に突き刺し作業を始める。
突き刺した骨の周りを雪で固めて動かないように固定する。他にも穴の開いた骨に革の紐をとおし色々と固定しているようだ。
次に大きな革の布を骨と結び付け周囲を囲う。おそらくこれはヒョウアザラシの革を継ぎ合わせたものだろう。
防水の効果もあったはずだ。
そこまでの光景を見て、ルルルはようやく理解した。
「あ、キャンプか!テントを作っているのか!」
ルルルが言い出した言葉の意味が解らなかったのか、ササラもロン達も不思議そうにルルルを見る。
「ああ……テントっいうのはね、野営するために設置する簡易的な寝場所のことだよ」
「おお~、流石ルルル~。よくわかった~。ロクとライが内緒で作ってたの~」
どうやら、ルルルの一羽旅には荷物になるしと悩んでいたロク達が、ササラも同行するならと持たせたようだ。
村のペンギン達もこんな便利な物を持っているササラを追い返したりしないだろう。と計画的に内緒に持たせていたようだ。
「ああ~。そういう事かぁ……。ガドルあたりが考えそうだよね。でも、確かにこれは便利だよ。俺も思いつかなかった」
そうしてルルル達は簡易的なテントを張り、ルルルとササラが交代で見張りをしながら眠る事にした。
明日の目的地は、ロン達が父親と別れた場所を目指すことだった。
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