河口
朝起きると隣でササラが気持ちよさそうに寝ていた。
「え?もう行くの~?」
ササラは翼で目をこすりながら答える。
「ササラ、どうしたんだよ。ついてきたのか?」
「ん?わたしはルルルのお世話しないといけない~」
呆れて何も言えないルルル。ここから帰ってもらうにも丸一日かかるし、ササラだけで帰すのも気が引ける。
「みんなは知ってるのか?」
「ん、みんな知ってる~。ルルルにバレない様に気をまわしてくれた~」
どうやら、村から1羽くらいは同行者をつけたかったがルルルは断るだろうとガドルが思ったらしい。
村のペンギンが総出でササラを隠し、こっそりとルルルに同行させたようだった。
「なるほどなぁ……それで誰に聞いてもササラの居場所を教えてくれなかったのか……」
たしかに変だった、今考えればササラがどこにいるかわからない。そんな答えばかり返ってきても誰も心配していなかった。
「でも、ササラ。これから何が起こるかわからないし、凄く危険かもしれないんだぞ。いいのか?」
「ん~、ルルルと一緒なら何があっても平気~。ついてく~」
表情にあまり変化もないままだけど、ルルルにとって嬉しいことを言ってくるササラ。
正直ルルルは、この旅が自分1羽である事に少しだけ不安を感じていた。2羽なら寝る時も交代で見張りをできるし、戦闘も楽になる。
食料に関してだけは大変になるが今回は川沿いを移動する予定だ。
魚にはそれほど困らないだろう。何より、ササラはルルルにとって大きな存在となっていた。
何度も熱心に看病してくれるササラ、自分に懐いていつも側にいてくれるササラ。
ルルルは村のペンギンの中でもササラを一番身近な家族のような存在に感じていたのだった。
「わかったよ。正直、一緒に付いてきてくれると助かる。話し相手もできて良かったよ。よろしくなササラ」
「おお~、ルルルがデレた~。もっと甘えていい~」
急に笑顔になり、喜ぶササラはルルルを抱きしめ頭を撫でる。しかし、身長に差があるためどう見てもササラが甘えているようにしか見えない。
「甘えてるのはササラだろ……もういいから、魚獲ってから出発するぞ。河口を探して遡るからな」
「は~い、ルルルが照れて可愛い~」
ササラとルルルの2羽は海に潜り魚を大量に捕まえた。
ササラはイワシを多く捕まえ、ルルルは白身魚を中心に捕まえる。
捕まえたイワシはその場で食べて、白身魚は背開きにしてヒョウアザラシの革を編んで作ったネットにぶら下げて持ち歩く。
「ルルル~、何それ~」
そもそも調理などの概念がないササラはルルルの行動に疑問を抱き、尋ねる。
「ああ、これからは海の魚もあまり食べれないからな。歩きながら簡単な干物を作るんだよ」
「へ~、干物は美味しいの?」
干物という存在をササラは知らない。
「美味しいのもそうだけど日持ちするんだよ。ここは寒いし5日くらいは食べれると思うよ。少し塩辛いかもだけどね」
「たのしみ~、タイもキスも大好き~」
ルルルがネットに並べた小さなタイやキスの背開きを見てササラは期待に目を輝かせていた。
「ササラはほんとに食べるの好きだよな」
「うん、ルルルと同じくらい好き~」
旅の準備を整えた2羽は海岸線を歩き始めた。
荷物が少なければ泳いだ方が早いのだろうが長旅ではそれも叶わず、あまり得意ではない徒歩での旅となる。
周囲を警戒しながらも適度に会話もながら、日が高くなるまで歩き続けた。
岩場だった地形も段々と砂利浜のような地形に変わり、見通しも良くなってきたころ、2羽はとうとう河口を見つける事ができた。
「おお~、初めて川をみたよ~。陸から水が流れてる~」
ササラが感動している。初めて海をみた。という話は前世で何度も聞いたことがあるが初めて川を見たとは聞きなれない話だった。
「川なんて珍しくないだろ?」
「う~ん。珍しいよ……みんな魔獣が怖くて遠くには行けなかったから。村の周辺しか遊びに行けなかったんだよ~」
確かにそうだ、とルルルは思った。今では羊も兎の魔獣も苦にせず撃退できるし、狼だって隊を組めば倒せるだろう。
そんなペンギン達もルルルと出会う前は違った。
そのころの彼らにとっては、ここまでの道のりは耐えきれるものではなかっただろう。
「とりあえず、川を遡って進んでみよう。
「りょ~かい~」
河口付近は細かい砂利のような小石が敷き詰められている。
その小石の上を2羽はそろって歩いて行った。
川の流れは緩く、少し深いようだった。対岸までは20メートル位だろうかそこそこの距離がある。
暫く歩いているとササラが立ち止まり遠くを眺めるように目を凝らしている。
「ルルル~、見て~、あそこに何か動いてた~」
ササラの翼を指す方向に目を凝らす。静かに流れる川の岸辺に確かに何かが動いている。
「魔獣?」
「う~ん、わからない~」
ササラもはっきりとは見えないようだ。
ルルルは嫌な予感がして、少し急ぎ目に走り出した。
するとぼんやりだが何かが争っている姿が見え始めた。
「ササラ!見て、獣人が魔獣に襲われているようだ!急いで助けにいこう」
ルルルとササラは小石に足を取られながらも小走りで先を急いだ。
少しすると、はっきりと争いの光景が見えてくる。
白い綺麗な毛に包まれた獣人が2人、固い氷のトゲに覆われたトカゲのような魔獣に襲われていた。
2人の獣人はまだ子供のようだ。一人は魔獣を近寄らせまいと河原の小石を拾い、力いっぱいに魔獣に投げていた。
しかし、投げられた小石は魔獣の固い氷のトゲに当たり「カン!」という音とともに弾かれていた。
もう一人は走り疲れたのか河原に片膝を付き、肩で息をしている。
ルルル達から見る限り、かなり厳しい状況のようだった。
魔獣は飛んでくる小石を固い氷のトゲで守りながら、二人が疲れるのを待っていた。
少しずつ獣人との距離を詰めていくトカゲの魔獣。獣人の子供も小石を投げるのに疲れ果て、息を切らし始めている。
「ルルル~、間に合わないかも~」
ササラのいう通りトカゲの魔獣は、防御のため丸めていた体を真っすぐに伸ばし、急速に獣人達に走り寄って行く。
「川に飛び込め!!」
ルルルは大きな声で二人の獣人に向かって叫んだ。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
ブックマークもしていただいている方も重ねて感謝いたします。
GWは仕事が忙しく、なかなか更新できない状況となり数日間更新が止まっていました。
申し訳ありません。
少しペースは遅くなりますがGW中も合間を縫って投稿いたします。
引き続き読んでいただけるとありがたいです。
少しでも面白いと感じたら★評価をしていただけると嬉しいです。
これからも宜しくお願いします。




