ササラ
村での最後の夜を楽しく過ごした日の翌朝。
ルルルは朝早くに目覚め、旅の持ち物を皮袋に詰め込んだ。
「昨日の夜からササラの姿が見えないんだよな……ササラには特に良くしてもらったから会いたいんだけどなぁ」
昨日の夜もササラを探したが、全く姿を見かける事ができなかった。
ロドルやガドルに聞いてもよくわからないと言われ、仕方なくササラ抜きで最後の夜を楽しんだ。
ササラには2度も看病をしてもらったばかりか、村で過ごすほとんどの時間を自分の近くで過ごしてくれた。
村で新参者だったルルルを心配してくれて、なるべく側にいてくれたのだろうとルルルは考えていた。
出発の時間が過ぎてもササラは姿を現わさなかった。
「みんな、俺は鳥人族の村を探しに度に出てくる。でも、必ずここに戻ってくるよ。それまで絶対に元気でいるんだよ」
村のペンギンがほぼ全員、ルルルを見送りに洞窟の入口に集まっていた。
「ルルルさんも決して無理はしないで、それと俺たちはいつでも待ってますからね」
涙をいっぱいに貯めながらロドルがルルルに告げる。
そんなロドルや他のペンギン達の顔を見ると、ルルルも瞳いっぱいに涙が溢れ、決心が鈍ってしまいそうになった。
「ロドル、みんな。ありがとう。もういくよ」
「ルルル殿……やっぱり私もついて行きますぞ!」
「いいから、親父は村の村長だろ!」
泣きながらルルルの翼を引っ張るガドルをロドルが止める。
「ガドル、村は任せたよ、じゃ、いくね。」
そう言ってルルルは峡谷の方へ歩いて行った。
村へ流れ着いてから数か月、危険もあったが楽しい日々でもあった。色々な思いを巡らせながらルルルは村を出て行った。
村の外に出るとルルルはまず、海に向かって歩き始めた。
「俺はおそらく川から海に流されて村にたどり着いたはずだから――」
頑丈なイノシシの魔獣に襲われた当時のルルル。彼は必死で抵抗したが崖から川に落とされた。
そして、おそらく川を流され、海にたどり着き、当時村のあった氷河付近でササラに発見されたのだろう。
その逆を行けば、原初の湖付近に辿りつけるはずだとルルルは考えていた。
地図もないこの世界で北も南もわからない。そんな中、たどり着く方法はこれしか思いつかなかった。
海に着き、海岸線を歩き続けるルルル。
海岸線は切り立った崖や岩場が多く、歩きづらい地形だったが雪原と違って魔獣もあまり近寄ってこない。
風が強く吹き付け、時より大きな波が岩を打ち付け水しぶきが体にかかる。
魔獣もいない中を孤独に歩き続ける中、先ほどの事を思い出す。
海岸にたどり着くまでの雪原に数頭のひつじの魔獣を見かけたが、彼らはルルルの姿を見かけると少し警戒した後、怯えたように逃げ去ってしまっていた。
「はは、弱い魔獣もペンギンの姿を見かけるだけで逃げてしまうようになったんだな……」
ついこの前まで羊の「メェ~」という鳴き声が恐ろしいと怯えていた若いペンギン達も、最近では素材を集めるために必死に狩りまくっていた。
そんな姿を思い出し、苦笑いするルルル。
ロドルとササラ、3羽で狼の魔獣と戦った事、リリを連れまわして訓練をしたこと、ロクやライと加工について色々話て盛り上がった事。
海岸線を歩きながら村での生活を色々と思い出し、また涙がこみ上げてきた。
「楽しかったな……いつか、必ず帰ろう」
ついつい、村の事を考えてしまうルルル。特にササラと別れの挨拶ができない事は後悔していた。
何度か足を止め、戻ろうか?とも思ってしまうが、また進見始める。
そうやって、気が付けばかなり遠くまで歩いていた。
日もくれ始めて来た頃、一晩を安全に過ごせそうな洞穴や岩陰を探す。
「あ!あそこがいいかな」
海岸の切り立った崖に切れ目のような隙間を見つけた。
「風も凌げそうだし、ここなら敵からも発見されないだろうしな」
その隙間は丁度ペンギンが3羽ほど入れる程度の切れ目だった。
海からの風の方向さえ悪くなければ完全に風を防げる。しかも、潮風によって魔獣から匂いで感づかれる事もないだろう。
そう思い、隙間に身体を納め少し休憩をした。
「目の前が海だし、魚でも獲って食べたいけど……昨日いっぱい食べたからなぁ」
いつもなら暗くなる前に魚を捕獲して、腹を満たしておきたいところだったが昨晩の宴会で食べ過ぎたせいかお腹が空かない。
ルルルはゆっくりと目を閉じ、考え事をした。
この先、本当に原初の湖にたどり着き、鳥人の村へ再び向かう事ができるのだろうか?
原初の湖の結界が消え去り、湖周辺は今どうなっているだろうか?
エレンシアは今も無事だろうか?
新しい旅立ちとともに最近考えていなかった色々な事が頭に浮かんでくる。
そんな風に長い時間を過ごしていると何やら近くで物音がするのを感じた、
「魔獣か!?」
ぱっと置きあがり隙間から顔を覗かせ、周囲を伺う。
もう、周囲は暗くなりしっかりとは見えないが、月明りに照らされた海岸の岩場には特に変化はない様子だった。
「気のせいか?」
特に異変がないまま時が流れ、ルルルはそのまま眠りについた。
「眩しい……え、朝!」
早朝の海岸のルルルが休んでいる崖の隙間にちょうど朝日が差し込んでいた。
「ちょっと、仮眠するつもりだったのに……え!」
少し仮眠するつもりで目を閉じたルルルであったが、気が付けば朝まで寝てしまったようだった。
しかし、驚くことはそれだけではない。ルルルが寝ている隙間に気持ちよさそうに寝息を立てている、もう1羽のペンギンが居た。
それは、間違えるはずもない。のんびりマイペース屋のササラだった。
「ササラ!?どうしたんだ!」
「……ん?もう行くの~?」
寝ぼけながら翼で目をこすりながらササラが気だるそうに答える。
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続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。




