保管
熊のような大きな身体に狼のような鋭い牙をもった恐ろしい獣。
そんな獣を撃破したルルルは武器の確認をしていた。
熊狼の頑丈な身体をなんとか突き刺す事ができたトライデントであったが、一度の戦いで限界となっていた。
鋭利だったはずの岩の破片もボロボロになり、穂先と柄を固定していたロープもいつ切れてもおかしくない状況だった。
「せっかく作ったけど、これはもう使えないな……」
苦戦を強いられた強敵、熊狼の亡骸を見つめながらよく戦ったものだ、と改めて感じていた。
そんな時、思いついた事があった。
「この獣の骨や牙なら凄い武器になるかもしれない!」
ルルルは慣れないながらも獣の身体を解体する。
前世では料理が得意だったルルル、鶏くらいなら解体できるスキルは持っていた。
試しに巨大な獣の解体を行ってみたが要領は同じものだった。
獣の骨は非常に堅牢でその牙は特に鋭利で頑丈だった。彼はその素材の品質の良さに改めて確信する。
(これを使って新しくトライデントを作り直そう。)
さっそく獣の骨を削り形を整えた。その骨は驚くほど密度が高く金属の様になめらかだった。
徐々に形は整い、新しいトライデントの柄としての役割を果たした。
次に、彼は獣の牙を利用してトライデントの先端を作った。
その牙は非常に鋭利で加工の必要性はあまり感じられないほどの貫通力を持っていた。
この牙を新しいトライデントの穂先として利用した。
調整が完了し、トライデントが完成したとき、ルルルは喜びに満ちた表情を浮かべた。
「おお!これは様になってるよ。コツをつかめた気がする!」
自分で倒した獣の素材から、納得のいくトライデントを作ることができ感動した。
新しい武器を手に入れ、探索を行う準備が整った。
トライデントを手にとったルルルはすぐにその能力を試したいという衝動に駆られる。
(使い勝手を試したいな。でも……残った素材を放置するのは勿体ない。どこか保管できる場所を探さないと)
湖底洞窟では素材が運ぶ際に素材が濡れてしまうため、彼は洞窟への入り口周辺を探索した。
岸辺を歩きながら周りを観察する。
すると、湖のほとりに広がる雪原に大きな岩の塊がいくつも点在しているの事に気が付いた。
中にはいくつもの岩が重なり合っている場所もある。
その岩と岩の間に大きな隙間が広がっていた。
湖からの風が凍てつく中、岩の隙間には風も雪もそんなに入り込めない様子だった。
ルルルはその隙間に近づき内部を覗き込んだ。
湿気が多い事は難点だが湖畔からも近く、洞窟よりも保管に適した場所だと感じた。
(とりあえず、ここしかないかな)
彼は獣の骨や皮を岩の隙間に収め保管することにした。獣を倒した所から何度か往復し素材を運ぶ。
ただ獣の肉だけは食べられる気がしなかったため少し離れた岸辺に放置することにした。
(今は肉を食べたいって欲が全くないや。不思議だな。ま、ペンギンだもんな)
そんな思いを抱きながら彼は今日の作業を終える事にして、湖底洞窟へと帰っていった。
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続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。
3/19少し読みにくい部分を修正しました。