敵襲
洞窟内に朝の光がわずかに差し込む。
ルルルはわずかな休憩を終え立ち上がった。
周りを見渡すとみんな疲れた表情をしている。岩の上に寝転がり、仮眠している者もいる。
そんな中、村長のガドルがルルルに近づいてきた。
「ルルル殿、みんな疲れてはいますが戦う気持ちは失っていません。ルルル殿に出会う前は魔獣からは逃げるばかりの生活でした。逃げる事もできない
年老いたペンギンや運びきれない卵は全て、魔獣の餌となりました。……そんな日々も終わったのです。我々は例え犠牲を出してでも魔獣と戦います」
ガドルは固い決意を込めた瞳でルルルを見つめていた。
「そうだね!でも、誰も失ったりさせない!全員で勝利を勝ち取ろうよ!」
何もかもが吹っ切れたようなルルルの表情を見てガドルも強く願った。全員が無事で、戦いが終わることを。
バシャン、バシャン、バシャン!
「来た!敵襲だ!みんな起きろー!」
ガドルとルルルが会話をしている最中に襲撃を知らせる警告の音がした。
仮眠しているペンギンもすぐに目を覚まし、短弓や短槍を手にもって持ち場へ向かう。
「ガドル!やるぞ!」
「はい!ルルル殿!」
ガドルとルルルの2羽も所定の位置へついて準備を整える。
いよいよ、ペンギンの村の存亡をかけた戦いが始まった。
警告の浮袋を鳴らしたペンギンが湖岸に戻ってきた。
ロドルが近づいて尋ねる。
「数は?」
「分かりません……10頭位はいるように見えました」
「そうか……やはり多いな……」
答えるペンギンだが、流石に何頭いるかを数えている余裕はなかったようだ。
ロドルはルルルのいう通りの多さにがっくりとするが気持ちを切り替える。
「何頭いようが諦めず、最後まで戦い抜くぞ!」
大声で気合を入れるロドル。
「おお!」「おお!」「やるっす!」
その気合に後押しされ、全員が覚悟を決めた。
そして、水面が揺れ最初のヒョウアザラシが姿を見せ始める。
「ヴォヴォヴォヴォ!」
水面に顔をだすと同時に大きく唸るヒョウアザラシ。
「撃て!撃て―!」
リリも負けじと大声で指示を出す。
一斉に放たれる短弓の矢が風を切り裂く音と共にヒョウアザラシの体に突き刺さる。
ヒョウアザラシは痛みに叫び声をあげながらも湖岸に体をのせる。
スパイクが体を引き裂き、傷だらけになりながらもペンギン達に向かってくる。
リリがバリスタの銛を放とうとするがルルルが制止した。
「リリ!まだだ。1頭目は短弓で倒すぞ!」
リリは頷いて戦況を見守る。
1頭目のヒョウアザラシがスパイクに引き裂かれながらもペンギン達の近くまで進んできた。
そして、2頭目のヒョウアザラシ、3頭目のヒョウアザラシが姿を現わした。
今のところ全てのヒョウアザラシは体長1.5メートル程で偵察部隊と同じ大きさだ。
ルルルは3頭ならこのまま押し切れると判断する。
2頭目、3頭目が現れたことにより短弓の標的をどこに向けるか迷うペンギンも出てきたようだ。
「1頭目に集中攻撃!!」
状況を即座に理解したリリが的確な指示を出した。
「はいっす!」
短弓を持つペンギンが一斉に1頭目のヒョウアザラシに攻撃を集中させた。
「ヴォ―!」
1頭目のアザラシが苦しみの悲鳴をあげながら真横に倒れ込み動かなくなる。
「3頭目に集中!2頭目は私がやる!」
リリの次の指示に従い短弓の標的は3頭目に集中した。
3頭目のヒョウアザラシに矢が降り注ぐ中、水面からは4頭目、5頭目、6頭目のヒョウアザラシも姿を見せ始めた。
「いけー!」
新手の3頭が現れるのと同時にリリがバリスタの銛を解き放った。
凄まじい音と共に銛は2頭目の体を突き抜けた。
2頭目のヒョウアザラシは声すら出せないままに後ろに倒れるようにして湖に落ちていった。
「装填!」
「おお!」
リリがすぐに銛の装填を指示すると、ガドルを含めた4羽のペンギンが強力な弾性をもつバリスタの弦を引っ張った。
しかし、バリスタの弦は非常に固い。だからこそ威力は大きいのだが、それだけが難点だった。
3頭目のヒョウアザラシがスパイクの敷かれた湖岸を渡り切ろうとしている。
体中に矢が刺さり苦しそうな表情で叫びながら、ペンギン達へ向かう。
鋭い冷気を帯びた牙、白い息、短弓を構えるペンギン達は恐れのあまり思わず後ずさる。
(このままじゃ、まずい!)
ルルルがそう思った時、大きな声でロドルが叫ぶ。
「俺が行く!道を開けろ!」
スパイクの湖岸をわたり切ったヒョウアザラシに向かってロドルが駆けていく。
短槍を握ったその翼には魔力が宿り、その槍の穂先には氷でできたトゲが生えていた。
「みんな!恐れるな!俺たちは負けないぞ!」
叫び声と共にロドルが短槍を突き立てる。
短槍の先から伸びた氷のトゲはヒョウアザラシの胸に刺さり、弱り切ったヒョウアザラシの命を絶った。
こうして、ペンギン達は3頭のヒョウアザラシの撃退に成功した。
しかし、そのころには3頭のヒョウアザラシが湖岸のスパイクの上を進んでいる。
更に後方にはもう3頭が無傷のままペンギン達を睨みつけ、凶暴な唸り声をあげていた。
ルルルとササラはここが正念場だと感じ、自らの翼に魔力を込め始めていた。
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続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。




