朝
ヒョウアザラシの襲撃を乗り切った夜。一頭のヒョウアザラシが姿を現さないことからルルルは一つの考えにたどりついていた。
ルルルは村長、ペン、ロク、ライ、ササラ、ロドル、リリの村の主だったメンバーを集めて話をした。
「みんな、今日は魔獣の襲撃の対処、お疲れさま」
ルルルは、今日の襲撃を乗りきったみんなに労いの言葉をかけた。
「おつ~」
ササラが気の抜けた返事をするが、他のメンバーは真剣な表情だ。
(改めてこの面子を集めたのは何かがあるからだ)
ササラ以外の面子は同じ事を考えているが、言い出せないようだった。
「ルルルさん、何か伝えたい事があるんですよね。しかも、かなり重要なことですね?」
ロドルが他のメンバーの考えていることを口にする。
「そうなんだ、ロドル。今回の魔獣は3頭いたはずが1頭は逃げて、まだ姿が見えない」
「3頭いたのは間違いないですよ」
ルルルの話の後、すぐにペンが続けた。
「いや、ペンさんの言うことを疑ってるわけじゃないんだ。ただ、そうすると今回の魔獣はいつもより賢いやつじゃないかと思うんだ」
みんな何故?という表情で顔を見合わせる。
「なんで~?」
ササラがいつもの口調で質問する。
「そもそも魔獣たちが、ペンさん達をその場で襲おうとしなかったのは、何故だと思う?」
「なるほどぉ、ルルル殿のおっしゃる通りですね」
村長のガドルが納得のいったように答える。
「あ、そうか。我々の住処を見つけ出そうとしてた、ということか」
ペンがはっと気づいた。
「そう、ということは最初の3頭は偵察部隊だったってことになる。3頭も偵察を出せるってことは群れは少なくともその倍以上はいると思うんだ」
ルルルの発言にその場の全員の顔が一気にひきつった。
「ちょっと待て、倍以上って事は6頭で……逃げた奴も含めると7頭はいるって事か!」
焦った口調でロクが質問する。ライは隣で頷いている。
「2頭はなんとかなったけど7頭は厳しいっすよ!ルルルさ~ん、どうするんすか?」
半泣きの表情でリリが訴える。
「ルルルがいれば、だいじょ~ぶだよ。リリ~」
ササラはここまできてもマイペースだ。
「いや、最低7頭だから、正直言ってもっとヤバいな。そこで今回は魚狩り班も村長達も全員で対応しないと勝てないと思うんだ」
「ルルル殿の指示にみんな従いますよ。なんでも言ってください!」
ガドルがそう答え、話し合いは続いていった。
結局作戦は総力戦でいくこととなった。
村のペンギン達を班に分け、各班が協力しあって魔獣の撃退を目指す。
まずは魚狩り班。彼らは交代で水中の偵察をしてもらう。魔獣が現れたら浮袋の警告装置を動かし全員に襲撃を伝える。
偵察をしていない者は短弓係として待機してもらう。
「慣れない短弓を扱うのはちょっと怖いけど、そんなこと言ってられないですね。さっそく皆に話をしてきます!」
ペンはそう言ってこの場を去っていく。
次に村長たち支援班。成鳥のなかでも魚狩り班に属していない者が主だった。
彼らにはバリスタの装填係となってもらう。今回は多数の敵の襲撃が予想されるため、バリスタの連撃がどうしても必要になる。
そのためには多くのペンギンの力が必要なため、彼らにその役割をお願いした。
「ルルル殿、任せて下さい。なんならルルル殿の盾役にだってなりますぞ!」
「いや、ガドル……それはやり過ぎだから…‥はは」
ルルルの役に立てると思い、喜ぶガドル。一方ルルルは苦笑いで答える。
ロドルは横ではしゃいでいる父親を見て、ため息をついていた。
そしてリリ達、撃退班。彼らには短弓での中距離攻撃、近接での短槍、「お手手カッター」での撃退、できる全てを行ってもらう。
リリにはバリスタの操縦と短弓の攻撃指示。ロドルには短槍での近接攻撃と「お手手カッター」係へのトドメの指示だ。
「ルルルさん、ササラ姉さん、がんばります!見ててくださいね」
張り切るリリ、ロドルは気合十分の表情で翼を握りしめていた。
ロク、ライには先ほど倒したヒョウアザラシの牙でバリスタの銛の増産をお願いした。
巨大なヒョウアザラシの牙よりは威力が落ちるが今回のヒョウアザラシの牙でも十分な威力の銛が作れるだろう。
ライは無言で頷き、ロクも気合を入れて直ぐに作業の準備を始めた。
そして、ルルルとササラ。ルルルは自分とササラを遊撃部隊とした。
今回の戦いは何が起こるか予想ができない。
もしもの時に迅速に対応するには、十分な戦闘力をもつペンギンが必要だったのだ。
それぞれが班長となるため、村のペンギン達に作戦を伝えに散っていった。
その場に残ったのはルルルとササラだけになる。
「ルルル~、だいじょぶそう?」
ササラは少し不安そうな表情でルルルに問いかける。
「うん、こればかりは未知数だけど、ヒョウアザラシさえ撃退できれば海の安全は確実だから。頑張るしかないね」
「ルルルが先頭に立つんだから、わたしはついてくからね~、みんなも同じだよ~」
ササラの言葉を聞いて少しだけ気持ちが軽くなったルルル。
「ありがと……」
その日は班ごとに交代で休憩しながら一夜を過ごした。
誰もが緊張した面持ちで過ごしてはいるが、誰1羽として戦いから逃げようとするペンギンはいなかった。
彼らは逃げて元の生活に戻る事もできはずだ。しかし、ルルルの指示に従い、絶望的とも思われる戦いに挑もうとしている。
みんなが自分の決断についてきてくれる。そう思うとルルルは目頭が熱くなり涙がこぼれ落ちそうになった。
(エレンシア……ごめん、約束は守れないかもしれない。この村からは離れられないよ……)
そう思い始める程に、この村のペンギン達はルルルにとって大きな存在になっていた。
そして、朝がやってきた。
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