加工
ヒョウアザラシの魔獣を撃退したルルルはその牙を抜き取り、皮を剥いだ。
他の魔獣と違い、ヒョウアザラシの身体はあまりにも巨体すぎて、ペンギン達の小さな身体では運ぶことができなかったからだ。
「みんな、この湖で休みたい気持ちはわかるが、今回のような強敵がまだいるかもしれない。一旦、村へ帰ろう」
戦利品を獲得したルルルはペンギン達に提案する。
「はい、ルルルさん」
返事をする若いペンギン達のルルルへ向ける視線は、明らかに変わっていた。
以前のような畏怖の念から従っているのではない。
ルルルは自分の命を懸けてまで仲間を救ってくれた。また、ヒョウアザラシという強敵を苦戦しながらも撃退した。
その強さと勇敢さ、仲間への思いを若いペンギン達は感じ取った。
彼らはルルルをペンギン族のリーダーとして認め、従うことを選んだのだ。
ペンギン達の群れは村へと帰り着いた。今回の探索は無事とはいえないかもしれない。
しかし、若いペンギン達の成長、周辺の魔獣の把握、素材の獲得。
目的はすべて達成された。結果的に成功といえるだろう。
ちなみに湖に飛び込んだ2羽のペンギンはメスがペル、オスはギルという名前だった。
この件をきっかけに2羽は互いに意識し合うようになり、番いになったそうだ。
ペンギン達が村に帰り着き、一日の探索の疲れを癒している頃。
ルルルと魔獣の戦いがあった、あの湖には多くのヒョウアザラシの姿があった。
彼らは縄張りを広げるため、少し離れた川の付近へ遠征に出かけていたが、日暮れと共に住処へ戻って来ていたのだ。
群れのほとんどが疲れを癒し、魚を食べている中、群れのボスはかなり苛立っていた。
住処に残していたナンバー2の実力を持つ部下が、無残な姿に変えられて湖に浮かんでいる。
皮を剥され、牙を抜かれた部下の姿、明らかに自分たちの群れに敵意を示し、挑発している誰かの仕業だ。
「ヴオオォォォ~ン!ヴオオォォォ~ン!」
全長3メートルはあるボスの巨体が怒りの感情をおさえきれず、大声で叫ぶ。
その瞳は憎しみに満ち溢れ、復讐に燃え盛っていた。
休んでいた配下達がボスの怒りの鳴き声に恐怖で震える。
ボスは群れの3頭のアザラシを呼びつけ、一つの指示を出した。
指示された3頭は休憩を止め、雪原を滑るように進みながら湖から離れて行く。
この日からヒョウアザラシの魔獣の群れの行動が変わる。
群れを挑発した敵に復讐をするため、湖周辺の警戒と復讐相手の痕跡を辿る事に専念し始めたのだ。
探索を終えた次の日、村のペンギン達は探索で獲得した大量の素材の加工に大忙しだった。
「この羊の角はどの辺りから切ればいいのですか?」
「牙はこれくらい尖らせればいいっすか?」
「余った、肉はどこに捨てればいいですか?」
「ルルル~、一緒にイワシたべよ~」
リリ達、討伐部隊も加工に加わり、ルルルに色々と質問をしてくる。
「ああ、角は短弓に使うからこの辺りからお手てカッターで――。牙はできる限りでいいから細く尖らせて、長さは均一にね。肉は――」
彼らの質問に答えながらもルルルはある素材の使用法に悩んでいた。
今回の探索での一番収穫はヒョウアザラシの素材についてだった。
その太く丈夫な牙は色々な武器の加工に向いてそうだ。
そして、何よりも素晴らしい性質を持っていたのは皮だった。
ヒョウアザラシの皮は弾力性に優れているうえ、簡単には破けない。部位によって固い部分や柔らかい部分もある。
硬質な車のタイヤのようなゴム素材から、輪ゴムのような柔らかい部分まであり色々なものに使用できそうだ。
(ゴムがあれば色々な物が作れるな。捕獲用の網のような物もいいし、罠も作れそうだし、何がいいだろう――)
村のペンギン達に作業指示をだした後、素材の使い道について考え込んだルルル。
悩んだ末に、手に入れたヒョウアザラシの皮を武器に変える――それが一番良いと決断した。
今回の探索でルルルは気になっていることがあったからだ。
「ヒョウアザラシの魔獣がたった一頭だけなんて考えられない。どこかに群れがいるはずだ。対策は考えておかないと……」
ルルル達の何倍も体の大きいヒョウアザラシ。得意な水中でも敵わないペンギン族の天敵。彼らに対抗できそうな武器を懸命に考えるルルル。
ふと、手に持っている短弓を見た時、頭の中に一つの武器が閃いた。
(あれなら倒せるかもしれない!)
前世のゲームや物語などで防衛に良く使われていたあの兵器だ。
「ルルル~、イワシとってきたよ~」
早速、ロクとライを呼び、3羽で細かい部分まで打ち合わせをする。何故かササラもついてきた。
ルルルの話を聞きながら、目を輝かせ饒舌になるライと興奮して大声になるロク、イワシに噛り付くササラ。
それぞれの担当する部品を決め、作業を開始する。
ライはヒョウアザラシの皮の固い部分と柔らかい部分の加工。
ロクは他のペンギンを何羽か伴って骨を削って形を整えていく作業。
今回作成する武器は、大型のヒョウアザラシの骨や革、そして牙も全てを使う事になる。
「今回の探索で感じた事が現実になれば必ず役にたつはずだ」
「ルルルも食べよう~」
「さて部品が完成するまで組み立ては出来ないな。俺は短弓をもっと多く作成しておこうかな」
部品作成はライとロクに任せる事にして、ルルルは羊の魔獣の角を使って短弓の作成に取り掛かった。
普段、魚を狩にいってくれる成鳥のペンギン達にも扱え、安全な距離から攻撃ができる短弓は多くの数が必要だった。
「そろそろ、ササラも手伝ってね」
「わかった~」
こうしてルルル達は数日をかけ武器や盾、スパイクの作成に明け暮れた。
読んでくださって有難うございます。
少しでも★評価していただけると有難いです。
続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。




