敬礼
若いペンギン達に恐れられたルルル。
彼らの態度に疑問を持ちながらも峡谷周辺の探索へ向かう事にした。
探索へ向かったのはルルル、ササラ、ロドル。そしてリリ達若いペンギンであった。
リリを除いた若いペンギンの数は8羽で構成され、4羽ずつのチームが2組である。
1チームは前衛に置き盾と短槍を持ったペンギン、中間に短槍を持ったペンギンが2羽。
一番後ろがトドメ役のお手てカッターが得意なペンギンで構成された、菱形のサンマ陣形だった。
これは今までの訓練の経過を見てロドルが決定した。リリは全体の指示役と後方からの遠距離攻撃係となる。
ルルル、ササラ、ロドルの3羽は今回は基本的に戦闘には参加しない。
探索の目的は若いペンギン達の育成、峡谷周辺の魔獣の種類や数の調査、それと討伐による素材確保だった。
ペンギン達が探索へ向かったこの峡谷周辺は、羊の魔獣や兎の魔獣が非常に多く生息する場所であった。
羊や兎の魔獣は魔獣の中では弱者の部類であり、他の凶暴な魔獣たちにとって絶好の餌でもあった。
この地域は狼の魔獣の群れをはじめとして様々な種類の魔獣が縄張りを張り巡らしている。
魔獣たちは今まで自分たちの縄張りを広げようとしても互いの存在が邪魔になり、絶妙な均衡が保たれていて縄張りを広げる事ができなかった。
しかし最近、その均衡が少し崩れた。原因はルルル達ペンギン族の存在である。
ルルル達が倒した狼の達の縄張りは、他の魔獣の縄張りよりも少し範囲が広かった。
それが最近は縄張りの中にに姿を現わさない。最初は警戒していたが、他の魔獣達も少しずつ警戒を緩め、狼達の縄張りに侵入するようになっていた。
そんな現状に気づくはずもなく、ペンギンの群れは探索を続けていた。
若いペンギン達が緊張に満ちた表情で進んで行く中、ルルルは岩場の陰をチラチラと確認している。
「ルルル~、さっきから何かさがしてる~?」
ササラが不思議に思い質問した。
「う~ん、ロクに狼の牙を使った罠を作ってもらったんだよ。昨日のうちに岩場の陰に何か所か設置しておいから獲物がかかってないかなぁ、ってね」
ルルルはロクに狼の牙でスパイクを作ってもらっていた。
羊の魔獣の肉をスパイクの周辺にばらまいて他の肉食の魔獣を撃退できないか試していたのだ。
「へ~、罠ってよくわからないけど~。面白そうだね~」
ササラは良くわからない事は深く考えないタイプだ。罠の概念が理解できなかったのだろう。
「ルルルさん、本当に僕らは手を出さないんですか?」
若いペンギン達の身を心配するロドルが尋ねる。
「う~ん、手を出さない訳じゃないよ。危ない時には躊躇しないで参加するつもりだけど。彼らが成長するためには見守る事も必要だと思うんだ」
「なるほどです!」
ロドルも良くはわかってないのだろうがルルルの考える事に間違いないと信じ切っている。
「おっ!ほら、あそこに羊の魔獣の群れがいるよ」
ルルル達が何気ない会話をしていると遠くに魔獣の群れがいる事に気づいた。
(リリならもう気づいてるはずだな)
「前方に羊の魔獣の群れを発見、みんな警戒しながら近づくよ!前衛は魔獣が走ってきたら盾を設置して!陣形はこのままサンマを維持」
リリがみんなに指示を出す。ルルルの予想通り彼女は魔獣の存在に気が付いていた。
「リリ~、たのもしい~」
ササラがリリに感心する。
その間にも魔獣との距離を詰めていくリリ達。
50メートル程で羊の魔獣の群れもリリ達に気が付いた。
「メェ~メェ~メェ~」「メェ~」
群れの魔獣が恐ろしい唸り声でリリ達を威嚇する。
「うう、リリさん。怖いっす!すげぇ、迫力っす……」
若いペンギンの何羽は羊の威嚇に体が震えている。
しかし、リリはみんなを一括する。
「みんな!ルルルさんに比べればあんな羊、怖くないよ!不甲斐ないところ見せる方がヤバいよ!」
(なぜ?俺?何かしたっけ?)
「はい!がんばるっす!」
リリの掛け声でみんなに気合が入る。
「前衛は盾を用意して!中衛は前衛のサポート!私が短弓で何頭か牽制するから弱った魔獣を確実に倒していくよ」
「はい!」「はい!」「はい!」
リリが的確に若いペンギン達への指示をだしている。彼らもリリの指示に従い素早く行動する。
「うん、リリはやっぱ成長しましたね。流石ルルルさんです!」
そんなリリを見てロドルはルルルを絶賛する。
そして、魔獣はリリの短弓の射程に入り、何頭かが矢の餌食になっていく。
そのまま突進する魔獣も置き盾に食い止められ、一瞬動きが止まる。
前衛が足を薙ぎ払い、中衛が胸を短槍で刺す。トドメとばかりに「お手てカッター」の声が鳴り響く。
「お手カッター!」
最後の攻撃の声が鳴り響いた後、辺りは静かになった。
羊の魔獣は全部で6頭、数は多くはなかったが彼らにとっての初陣は完璧な勝利で締めくくられた。
「やったっす!」「やったぁ!」「俺が魔獣を……」「お手てカッター気持ちいい!」
若いペンギン達もそれぞれが魔獣を倒した感動に浸っている。
ルルルはリリの方を向いて彼女を見ると、とても満足そうな表情をしている。
(うん、リリの自信にも繋がっただろうな)
「みんな!魔獣を洞窟まで運んでから、また出かけるぞ!帰りも油断しないようにな!」
「はい!」「はい!」
ルルルがそう告げるとペンギン達は一斉に畏まり、敬礼をした。
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