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ペンギンの転生者  作者: 北の国のルルル
旅立ち
39/58

恐怖

意図せずにリリの心を恐怖で支配したルルル。

それからも2羽は周辺の探索を続けた。


リリに短弓の使い方を教え、厳しい戦闘を経験させた。

ルルルが魔獣の注意をひきつけてからリリが短弓で魔獣を射る。

倒し切れない魔獣はルルルがトドメを刺した。

最初は急所に上手く当てる事ができずに、魔獣の意識がリリに向かい、危ない事が何度かあった。

あの気味の悪い鳴き声によって、ルルルとリリの動きが鈍り、リリが魔獣に食われる寸前まで追い詰められた時は流石にルルルも胆を冷やした。

しかし、後半は順調でリリも随分と短弓に慣れてきたようだった。


「リリ、そろそろ帰ろう。倒した魔獣を一頭ずつ持ち帰るよ」

ルルルはそう言って倒したばかりの羊の魔獣の足を引きずって歩く。

「はい!ルルルさん!」

リリは従順だった。ルルルの怖さを知ってから、逆らう事や強がる事を完全にやめた。

(はぁ、もう少しで解放されるわ~。魔獣だろうが何だろうが引きずってでも、早く帰りたい)


そうしてルルルはリリとの信頼を深めることに成功した。


(うん、リリとも仲良くなれた。信頼してくれるようになった気がする。これでリリにも加護の効果があるかもな)

ルルルはそう思いながら羊を引きずり洞窟へ帰っていった。


その日の出来事は、リリから他の若いペンギンへ伝わっていく。

ルルルに逆らってはいけない。若いペンギン達は誰もがその事を心に刻み付けた。




次の日もルルルはリリと峡谷の外へ出る。まずは昨日倒した羊の回収からだ。

洞窟と峡谷周辺の岩場を何度も往復し、全ての羊を回収した。

その間にも何頭かの羊の魔獣が姿を見せたが、リリを中心に魔獣を狩っていった。

リリの指示は徐々に的確になっていき、少数の羊の魔獣程度では恐れることもなくなっていた。

「リリ!良くなったよ。今日の調子で指示を出せば明日は絶対に大丈夫だ!今日はゆっくり休むんだぞ」


ルルルはずっと考えていた。自分は村に長い期間滞在するわけにはいかない。

やがてはエレンシアのいる鳥人族の村を目指し、旅立つつもりなのだ。

ただ、その前に同族が暮らすこの村の安全だけは確保したかった。

この村はルルルにとって、故郷といっても過言ではない程、大事な存在になっていた。

ルルルが不在になったこの村の防衛は、ササラとロドルだけでは荷が重い。

リリ達、若いペンギンの成長は村の安全にとって絶対に必要だった。

(明日の魔獣討伐で良い成果が出たら、俺は村を出よう……)


そんなルルルの気持ちを知らないリリは、ルルルに褒められて、嬉しそうな顔をした。

「ルルルさん……ありがとう。あなたのお陰で強くなれた気がします」

そう言って照れるように洞窟へ走っていった。


その後、ルルルはロクの元へ行き、依頼していた物を受け取った。

大量に何かを抱え、再び峡谷の外へ出かけて行く。

村へ帰るころには夜になり、他のペンギン達は眠りについている。

ルルルもこっそり、寝床に横になり眠りについた。




そして、翌日。若いペンギン達が魔獣討伐へ出かける日となった。

他のペンギン達より少し遅めに目が覚めたルルルは、まずはライの元へ向かった。

「ライ、例の物は出来上がった?今日は魔獣討伐にいくから使いたいんだ」

ルルルがライの作業場で呼びかけると、ライは革でできた大きな盾を持ってきた。

その盾はとても大きく、ササラやリリ達など体の小さなペンギンならば充分に隠れる大きさだった。

盾の下部には狼の骨を尖らせて作った杭のような物がついている。いわゆる置き盾というものだった。


「おお、かなり良い出来だね。いい感じだよ」

ルルルは予想以上の出来栄えに驚き、ライを褒めた。

「うん……皮を張る前に羊の角で土台を作った……革も何枚も重ねて強くしたし、乾燥すると固まる海藻の汁を何回も塗ったんだ。それから……」

ライは普段は無口だが、自分の加工品の説明となると夢中になって話し続ける。

しばらくライの熱心な説明を聞いたルルルは、その大きな置き盾を持って洞窟の外へ向かった。


洞窟の外にはすでに準備を終えたペンギン達が集まっていた。

ルルルはロドルに置き盾を渡し、使い方を説明をする。

そんなルルルにササラが近づいてくる。

「ルルル~、リリ、変わった~。なんかしたの~?」

この2日間でリリは随分と逞しくなったし、成長もした。ササラもそれに気が付いたのだろう。

なかなか後輩をしっかり見ていると感心する、ルルル。

「う~ん、リリと一緒に魔獣をいっぱい倒したんだ。自信がついたんじゃないかな?」

そう言ってルルルは他の若いペンギンと談笑しているリリの方に体を向けた。


その時、一瞬でペンギン達の会話が止まる。

ルルルの視線に気づいた若いペンギン達は、ルルルの方へ規則正しく向き直り、その翼を額に折り曲げるようにかざし、敬礼の姿勢をとる。

「おはようございます!」「おはようございます!」「おはようございます!」

一斉にルルルに礼儀正しい挨拶をする。

(確かにリリには敬礼を教えた気がするが……なぜ?)

若いペンギン達の態度に驚くルルルだったが、ササラは小さな声で「ほら、変わった~」と呟いた。

読んでくださって有難うございます。

少しでも評価していただけると有難いです。

続きもマイペースにですが書いていきます。

懲りずに読んでいただけると幸いです。

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