徹夜
数日間にわたり魔獣の解体と革や骨の加工の指導をしたルルル。
ようやく加工をロクとライに任せられる状態になり、若いペンギン達の訓練を見にいった。
ササラとロドルが考えた訓練は効率的なものだった。
まずは体力をつけるための基礎トレーニング。次に各々の戦闘スタイルによる基本修練。
そして3羽一組になっての連携訓練。最終的に6羽が2組に分かれて模擬戦を行っていた。
ササラとロドルはルルルに教わった訓練をそのまま指導に活かし、後輩たちを育成しているようだ。
それを見てルルルは彼らに任せて問題ないと判断した。
(さて、俺は何をしようかな?)
革と骨の素材は確保できるようになった。訓練も順調に進み、戦いに参加できるペンギンも増えている。
ルルルが次に考えたのは戦闘せずに魔獣を撃退するための罠、そして魔獣の攻撃から身を護るための防具の作成だ。
戦闘に勝ったとしても傷を負ったり、仲間を失ったりすることは避けたい。最小限までリスクを無くしていかなければならない。
まずはライの元へ行き、話をする。
「ライ、作ってもらいたい物があるんだけどいいかな?」
ルルルはライに自分の構想を伝える。ライは目を輝かせながらルルルの話に頷き、すぐに無言で製作にとりかかった。
次はロクに話しかける。
「ロク、忙しいところ悪いけど、考えている事があって――」
ロクにも同じようにルルルの考えている内容を相談する。
「ルルルさん、それはいい考えですよ。俺はもう、最近楽しくて楽しくて――」
ロクは加工してものを作ることにやりがいを持ち、楽しくて仕方ないようだ。
(職人っぽくなってきたなぁ、2羽とも上達も早いしな)
「ロクもライもちゃんと休憩するんだよ。……あ、それとこの素材もらってくね」
そう言ってルルルはその場から立ち去った。
ルルルが手にしたのは羊の魔獣の曲がった角、ライが作成した頑丈な革の紐、そして狼の牙数本だった。
(何かを作るって楽しいんだよな、わかるよ。俺もチャレンジしてみよう)
ルルルは人気のない洞窟の隅に行き、ひたすら加工を始める。
初めてトライデントを作成した時のように試行錯誤を繰り返し作業に没頭した。
魔獣の角を適度な長さに切り、柔らかくしなる太さまで削る。
両端に細い革の紐を括りつけて――何度か調整し直したが想像に近い形の物が出来た。
出来上がったのは羊の魔獣の角で作った、短弓だった。何度か試し打ちしてみたが射程は15メートル程度。
弓を引く力はそれ程いらず速射ができるため、中距離の武器としては使えるほうだと思う。
「ルルルさん、寝ていないんですか?もう……俺だって徹夜したかったのに……ところで、何を作ったんですか?」
気が付けば朝になっていたようだ。起きたばかりのロクが話しかけてきた。後ろではライも興味津々な顔をして会話を聞いている。
「ああ、ごめん……休憩しろとか言っておいて、俺の方が夢中になってしまったみたい。作ったのはこれだよ」
ルルルは2羽に謝りながらも、自慢げに出来あがった短弓を見せる。
「???」ライが無言で首をかしげる。何に使うのか想像できないようだ。
「洞窟の外にでて実際に使う所を見せるよ。付いてきて」
ロクとライを連れて外に出るルルル。その姿を見てササラとロドルも興味が沸いたらしく、後ろからついてきた。
洞窟を抜けて、峡谷の入口に向かうルルル。
いつの間にかルルルの後ろには数羽のペンギンが集まっていた。
その中に、リリ達若いペンギンもいる。
「なんか、いっぱい集まってきたね……。そんな大したことするわけじゃないんだけどな」
照れながらルルルは羊魔獣の弓を持ち、狼の牙で作った矢を身構えた。
「見ててね」
十分に引き絞りしなる弓、そして右の翼で持った矢を離す。
シュッ!
気持ちの良い音と共に矢が峡谷の合間を飛んで行った。15メートル先まで飛んだ矢は失速して氷の大地に突き刺さっている。
「こういう武器を作っただけなんだ。ね、大したことはないでしょ?」
なんだか恥ずかしくなり、言い訳のようにルルルは集まったみんなに説明した。
「おおーー!凄いです。ルルルさん、俺にも作らせてくださいよ!」
「……うんうん……俺も作る……へへ、楽しいな」
興奮したロクが大きな声で絶賛する。ライも独り言のように何か喋っている。
ササラとロドルは弓を打ちたくてウズウズしている様子。
リリ達は何故か悔しそうな顔をしていた。
とりあえずは短弓をみんなが認めてくれたようで、ルルルは安心した。
洞窟へ戻り、ロクとライに作り方を教えるが、まずはお願いしていた物を優先するようにと伝えた。
気が抜けたのか、一気に眠気が押し寄せてくる。
(ああ、眠い。一睡もできなかったからなぁ……)
ルルルは洞窟の隅で寝転がり、静かに瞼を閉じた。
村のペンギン達はそんな疲れたルルルを見て、ゆっくり寝かせてあげようと気づかって作業をすることにした。
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