素材
倒した魔獣を洞窟の入り口に放置して、疲れ切った体で洞窟の奥へ向かうルルルとロドル。
洞窟の奥へたどり着くと、そこには村中のペンギンが勢ぞろいしていた。
(村の中でもこんな光景みたことないや……)
成鳥のペンギン達は湖に潜り、魚を狩っている。
若くて力のあるペンギンは、洞窟内で大きな岩を転がし整地作業中。
子供達は卵と雛鳥を見張りながらキャッキャとはしゃいでいる。
これが活気のある村の光景ってものだろうか。ルルルは少し嬉しく感じていた。
「ルルル様、こんなに良い土地を魔獣から奪い取っていただき、ありがとうございます」
洞窟内を眺めて立ち尽くすルルルに村長のガドルが話しかけてきた。後ろにはササラも付いてきている。
「いえいえ、村長。ササラから話は聞きましたか?ここに村を移転してはどうかと思ったのですが」
この光景を見ると村のペンギン達はこの場所を気に入ったようであるが、一応確認するルルル。
「もちろん、有難く提案に乗らせてもらいます。ただ、魔獣からの防衛などについてはご指導いただきたいと思っております」
「はい、しばらくは俺もここに残って防衛に協力するつもりですし」
ルルルがそう答えると村長は少し暗い顔をするが、すぐに表情を戻しルルルに頭を下げた。
「ルルル~どこいってたの~?」
ササラが首を傾げながらルルルに聞いてきた。
「ああ、昨日倒した魔獣の亡骸をロドルと一緒に洞窟の入口まで運んでいたんだよ。角とか皮とか色々使えそうだからな」
ルルルがそう答えると、若いペンギン達が魔獣を見たいといって集まってきた。
洞窟の入口に置いてあるから奥まで運んで欲しいと彼らにお願いする。
すると何羽もの若いペンギン達が我先にと入口に向かって走っていった。
「ルルル~お疲れ~。魚たべてゆっくり休んで~。ロドルもついでに休んで」
「ついでってなんだよ!}
もはやネタか?と思うような和やかな会話の後、ルルルとロドルはゆっくりと岩に腰を掛け、休憩することにした。
しばらく休んでいると……。
「うわぁ~!」「ぎゃー!」
洞窟の入口から先ほどのペンギン達の叫び声が響いてきた。
ルルルとロドルは勢いよく立ち上がり、入口に向かって走る。ササラも同じように走りながらついてきた。
ようやく入口にたどり着くと……腰を抜かした若いペンギン達が地面に座り込んでいた。
どうやら彼らは倒した魔獣は1頭か2頭だと思っていたらしい。
だが、そこにあったのは、17頭もの魔獣の死体。
しかも、凶暴な狼の魔獣までもが牙をむき出しにして倒れている。
「みんな~、なさけない~」
ササラが若いペンギン達に相変わらずのテンションで言う。
「ササラねーさん、この数はないっす!ぱねえっす!」
若いペンギンのリーダーらしき娘が反論した。
(ま、彼女の言う通りだよな――)
ルルルもこの数の魔獣を放置したのは、ちょっと失敗だったと反省した。
「リリ~、こんどルルルに鍛えてもらうといいよ~」
この娘はリリという名前らしい。身長60センチ位で目の上にオレンジの飾り羽がついている。
「くっ、姉さんがいうなら仕方ないっす……でも、うちらは姉さんしか認めてないっす!」
リリがそう告げると、腰を抜かしたまま他のペンギン達も頷いている。
(うん、腰を抜かしたまま言われても迫力に欠けるな)
ルルルはそう思ったが口には出さなかった。
それよりも、ササラが若いペンギン達に慕われているようで少し安心した。
リリ達が立てるようになるまで待ってから、魔獣を引きずり、みんなで洞窟の奥へ戻って行く。
小さなペンギン達が魔獣を引きずって洞窟へ入っていく姿はとてもシュールな光景だった。
洞窟の奥へと運ばれた魔獣の亡骸は、ルルルが解体しようと考えていた。
しかし、全部で17頭もある。
考えたルルルはペンギン達から解体を覚えたい者を募り、その中からまずは2羽を選んだ。
1羽目はロクという名の成鳥のペンギン。村長よりは若くルルルの作った短槍やナイフに興味をもっていたようだ。
2羽目はライという名前の若いペンギン。リリ達のグループには入っておらず、一人で黙々と作業するのが好きらしい。
まずはルルルが手本を見せる。といってもルルル自身もそれほど詳しくはない。
羊の魔獣から皮を剥いで肉をうまく削げ取り、魔獣の固い骨で叩いて柔らかくして海水で洗う。
それを雪解け水に付けて塩気を抜く。
あとは風通りの良い場所で干したりして、何となくだが革っぽいものが完成した。
魔獣の骨は尖った岩や固い氷で形を整えて、柔らかい石を見つけ包丁を研ぐようにして刃をつける。
正直いって前世の職人たちからしたら駄目だし満載だろう。
そんな加工ではあったが、ペンギン達にとっては斬新だったようだ。
ロクは骨の加工が気に入った様子で、魔獣の骨や牙、爪を楽しそうに加工している。
ライは革の加工が好きなようで、黙々と革を作ってはベルトやら紐やらを作成している。
(うん、ここは任せても問題ないだろう)
数日にわたり解体や加工に明け暮れたルルルは、リリ達を訓練しているササラとロドルを確認するために洞窟の外へ歩いて行った。
ササラとロドルは、リリ達若いペンギンの訓練をしていた。
洞窟内では卵や雛ペンギン達に怪我をさせてしまうかもしれないので、訓練は外で行われることになった。
久しぶりに外の空気に触れ、眩しい光に目を細めるルルル。
少しずつ眩しさに慣れてきたルルルはその訓練風景を眺め、そのまま洞窟へ戻っていった。
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