再戦
10頭以上の羊の魔獣に襲われたルルル達。
8頭の魔獣は足止めもしくはトドメを刺した。
ルルルが残った魔獣の数を確認しようとした、その時。
「メェ~、メェ~、メェエ~~~~~~~~ギョギョギョギョ」
投げナイフで動きを封じられ地に横たわっている羊の魔獣の一頭が、不気味な鳴き声を上げる。
すると……ルルルの体に霜が纏わりついてきた。その冷たさでルルルの動きが鈍くなっていく。
危険を感じ、咄嗟に皮袋からナイフを取り出して鳴き出した魔獣に向かって投げつけた。
ナイフは喉に刺さり、魔獣は息絶える。
「ロドル!あの鳴き声は危険だ。鳴く前に倒そう!」
「はい!俺も体の動きがおかしいです」
ルルルとロドルの2羽は前進し、羊の魔獣の群れへと向かって行った。
残る魔獣は無傷の4頭と地面に横たわっている2頭。
無傷の4頭の魔獣は近寄るルルル達に向かって必死に抵抗する。
首を前後に振り、短い角で威嚇してくる。
2頭が必死で牽制し、もう2頭がルルル達の隙を狙っている。
均衡状態が続いていた。
「メェ~、メェ~、メェエ~~~~~~~ギョギョギョギョギョ」
「まずい!ロドラ!無理やり行くぞ!」
あの怪しげな鳴き声が聞こえてきた。
このまま、更に動きを鈍らされてしまったら完全に厳しい状況となる。
そう判断したルルルは無理にでも先へ進む事にした。
牽制する2頭の魔獣に向けて強引に水の刃を放つ。
一頭の額に直撃するが傷は浅い。もう一発、更に水の刃を放つと、その一頭は力尽き地面に倒れた。
ロドラも牽制するもう一頭に対して苦戦しているが、何とか胸に一撃を食らわせて撃退できたようだった。
しかし、彼らの隙を狙っていた2頭の羊の魔獣が狙いを定めたように頭を振り上げ、ルルル達の体に短い角を突き刺した。
ルルルは咄嗟に角を掴み、致命傷を避ける事ができた。
「ロドル!大丈夫か!?」
ロドルは攻撃を躱そうとしたが避けきれず、その肩を角に突き刺されていた。
ルルルは咄嗟に翼に魔力を纏い、水の刃を目の前の魔獣に解き放つ。
近距離で攻撃された魔獣は即座に切り裂かれ息絶えた。
そして、すぐにロドルの元に向かおうとするが……
(体が重い……)
先ほどの羊の魔獣の鳴き声による効果が現れ始め、足の付け根に霜がこびりついていた。
短く繊細な羽毛に覆われたルルルの身体でも魔力を帯びたこの冷たさからは逃れられないようだ。
ロドルは肩を角で切り裂かれながらも利き翼でない方の翼で短槍を持ち、追撃しようとする魔獣を牽制していた。
しかし、利き翼でない力の弱さを見切った魔獣は勢いを付けてロドルに襲い掛かる。
(間に合わない!)
ルルルは自分の力不足を悔やむ。
「お手てカッター!」
誰もが諦めかけた時、魔力を回復させたササラが走りより羊の魔獣を撃退した。
ササラは更に走り、地に伏せている2頭の魔獣も切り裂いた。
「助かった、ササラ。今回はほんとにヤバかったぜ」
ロドルはササラに礼を言う。
とりあえず、命に関わる怪我ではなさそうだ。
「ササラ、ありがとう。間一髪だった。それに、俺の力が足りないせいで2羽をかなり危ない目に合わせた。ごめんな……」
ササラに感謝をすると同時にロドルとササラに謝罪をするルルル。
「ルルルさん!怒りますよ!俺らだって覚悟を決めて来たんですからね」
ロドルは少し怒っていた。
「ルルル~、私たちはもう仲間~。助け合いは当たり前ー」
(確かにササラの言う通りだ。俺たちは対等の仲間だな)
「悪かった。ありがとう、目が覚めたよ」
ルルルはそう言って霜で少し鈍った体をほぐしていたが何かの気配を感じ周囲を見回した。
「みんな、狼が来る……」
ルルルは猛烈な殺気を感じ取った。以前にも感じたことのある強い殺気。
「ははは、流石にピンチですね」
ロドルも弱気な発言をする。
「だいじょーぶ、ルルルはつよい」
ササラだけはポジティブ発言だ。
狼は全部で5頭、そのうち一頭は群れのボス狼だろう、あの時の傷は癒えている様子だった。
ルルルは必死で考える。どうしたらこの状況を乗り切れるか。
(正攻法だとどうやっても乗り切れない……この方法にかけるしかない)
ルルルは意を決した。
「撃退マグロ陣形で行く!ササラはロドルの護衛、ロドルは利き腕でなくてもいい、ここぞという時だけ攻撃だ」
「え!マグロですか!?ルルルさん、危険です!」
「ルルル~、信じてるー」
ルルルは作戦を伝えた。ロドルはかなり動揺しているがササラはルルルを信じて従う事にした。
「行くぞ!」
ルルルはロドラの動揺を構わずに狼の群れに突っ込んだ。
ボス狼から命令を受けた配下の狼は、羊の魔獣の群れを追い立ててルルル達の方に誘導した。
作戦通り、ルルル達と羊魔獣の群れは激突し、ルルル達はかなりの被害を受けた。
彼らはもう、油断はしない。あのペンギンは狡猾で恐ろしい思考の持ち主だということを知っている。
ボス狼と合流し、弱ったルルル達を襲おうと近づく。油断せずにルルルに一斉に襲い掛かろうとした。
しかし、彼らは驚いた。
狡猾なあのペンギンが無謀にもたった1羽で自分たちに突撃してくる。
これは、もう勝ったも同然だ。と、全員で飛び掛かろうとしたその時。
「ウォン!」
ボス狼が吠える。
配下の狼達は我に返った。あのペンギンには策があると……慎重に仕留めるべきだ。
ルルルは狼の群れに突っ込んだ。陣形マグロは本来、強敵に対してルルルが単独で突っ込み、その間に残った2羽を逃がす、という作戦だった。
それは、絶対に敵わない相手に情報だけは必ず持ち帰るという最終手段。
もちろん、ササラが名前をつけた作戦だ。
ただし、今回は撃退マグロ陣形。2羽は逃げるのではなく撃退を目指す、という変則型だ。
ルルルが近づくと狼達は一斉に飛び掛かろうと身体を低くして身構えた。
(よし、飛び掛かったところに水の刃を至近距離で打ち込んで2頭は倒せる)
ルルルも霜の取れ切れていない足で必死に走りながら準備をする。
「ウォン!」
ボス狼の一吠え。すると、狼達はゆっくりと円を描くように広がりルルルをその中央へと導く。
(今回は油断も隙も無いってことか……)
狼達の動きは完全に統率が取れている。それは前回と違い、ボス狼がルルルを強敵と認め、配下たちに細かい指示を与えているに違いなかった。
読んでくださって有難うございます。
少しでも★評価していただけると有難いです。
続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。




