作成
ルルルは美しい氷晶花が咲く、この静かな湖畔で危険な獣が生息している事実を知った。
異世界転生……ラノベやアニメならチート級のスキルや魔法なんかを所持している事が多い。
しかし、ルルルにはそんなものもないし、「ステータス」と口にしてみたが何も起こらない。
他にも「ファイアボール」とか「アイテムボックス」とかも叫んでみた。
やっぱり何も起きないし、自分にそんな良いスキルがある実感もない。
結局はこの世界で自分は、何も持っていない普通のペンギンであることを知った。
しかし、ルルルは落胆なんてしない。ペンギンが大好きだからである。
自分にチートなんてない事を知った。
それからは危険な獣に見つからない様にするため、静かに行動することにした。
周囲を警戒しながら、ゆっくりと慎重に探索する。
どうしても恐怖心はある。しかし、何もしないわけにはいかないだろう。
恐怖心に負けずに探索しながら、何か良い策はないかと考えていた。
(まずは静かに行動する事、いざとなったら迷わず水中に逃げる。水中ならペンギンの方が早いにきまってるし)
(ただ、危険は排除しないと常に怯えて暮らすことになってしまう……何か方法を考えないと)
しばらく探索を続けながら考えた結果、たどり着いたのは戦う事だった。
いざという時は獣と戦う!その覚悟を決め、手段を色々と思い浮かべてみる。
自身の安全を一番とするのために長い射程で攻撃でき、一撃で標的に重傷を負わせることができる武器を前世の知識を元に考えてみる。
候補は色々あるが作成する知識や技術が足りない。
(ならば、この身体も活かした方向性で……水の中で戦う者のイメージといえば……ポセイドン?となれば武器は……え~っと、トライデント!!)
すぐに彼は行動に移った。水辺に集まった素材を集め、慎重に製作を始めた。
適切な長さの頑丈な獣の骨を見つけ、その骨を使ってトライデントの柄を作り始めた。
そして、先端になる鋭利な物を見つけるために岩場を探した。
最終的に硬質で鋭利な岩の破片を見つけ、それをトライデントの先端に用いることに決めた。
(柄と穂先をどうやって固定しようか……柄に穴を空けてから海藻のツタでロープをつくって……)
次に、柄と穂先をロープで固定するために柄の部分に穴を開ける必要があった。
磨いた岩を使って慎重に力を込め、岩を回転させ摩擦で一端に穴を開けた。
穴が開けられた後、ルルルは柄の一端に穂先を取り付ける作業に取りかかった。
穴にロープを通し鋭利な岩の破片を柄に固定することでトライデントが完成した。
「やった!本当にできた!これは上手くつくれたぞ」
ルルルはそのトライデントを手に取り、誇らしげに構えてみる。手になじむ良い感覚だった。
これで、ルルルは水中で安全を確保しながら標的を攻撃できる武器、トライデントを手に入れる事ができた。
異世界に憧れていた彼が前世で学習していたわずかな知識。
そして、獣と戦う!という覚悟によって生み出された、この世界に来て初めての創作物だった。
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3/17読みにくいところを修正しました。