出発
翌朝、探索へ向かう3羽。
家を出ると前回の探索の時と同じく村のペンギン達が待ち構えていた。
みんな魔獣と戦う3羽を見送ろうとしてくれたのだ。
村長は自分も行くと泣きながら訴えてきた。ルルルの力になりたかったようだ。
しかし、ササラの一言で心が折れたようだった。
そんな出来事がありながらも出発した3羽。今朝の話題で盛り上がっていた。
「しっかし、ササラ。親父に少し強く言い過ぎだよ。本気でショック受けてたぞ」
ロドルがササラに向けて、心配そうに注意する。
「だってー、ほんとのことだよー、付いてきても邪魔だし。迷惑だもん」
いつものように悪気もなくマイペースに話すササラ。
今朝、どうしてもついて行くと言ってきかない村長に対し、ササラは「邪魔だし、迷惑。お願い来ないでー」と無表情で言ったのだ。
村長はその場でがくっと崩れ落ち本気で泣いていた。流石に同情した村のペンギン達が一生懸命にフォローしていたが、ルルルは少し心配していた。
「ちょっと言い過ぎだったんじゃないか?帰ったら謝るんだぞ」
忠告するルルルに対してササラは相変わらずの返事だった。
「考えとく―」
3羽のペンギン達は緊張をほぐすように会話をしながら陸地に向かって進んで行った。
やがて陸地が近づいてくる。切り立った岩に氷がまとわりついた大地、その厳しい寒さを物語る光景だ。
彼らが進む方向は緩やかな傾斜になっているが、暫く進むと絶壁に変わりその下は小さな盆地になっている。
その絶壁の一部が洞窟となっていたのだ。
「このまま進むと絶壁で降りる事は出来ないんだ。迂回して反対側から回り込み峡谷を通り抜けたら洞窟のある場所に行けるはずだ。前回は迂回先で狼の群れと遭遇した、そろそろ魔獣が現れるぞ、みんな気を付けろ!いいな!」
ルルルはこの先の地形を他の2羽に説明する。そして、ここからが魔獣との戦いだという事を告げた。
「……はい、ルルルさん」
「ほーい」
ロドルは少し緊張しているがササラは相変わらずの返事だった。
(いい度胸してるな、ある意味大物だよ、ササラは……)
三羽は協力し合い、獣の姿がないか、警戒しながら進んで行く。
数日間の訓練の中でルルル達はこういった連携の練習もしていた。
他にも戦闘のパターンをいくつか作り魔獣の数や性質に合わせて陣形も考えたりした。
これも、みんなが無事に帰還するためのものだ。
少しずつ先に進んで行く3羽……すると遠くになにやら魔獣らしき影が見える。
ルルルは目を凝らす。
そして、小さな声で他の2羽に話しかける。
「ずっと先になんか大きな影が跳ねているのが見えた。多分、魔獣だと思うが……はっきり見えない。見えるか?」
ルルルがそう問いかけるとロドルが答えた。
「ルルルさん、あれは氷兎だと思います。村が襲われた時に見た事があります。後ろ足に強力な魔力が宿っているはずです」
「了解、じゃあ、俺がまず走って誘き寄せるから、その後はイワシ陣形で戦うぞ」
ルルルはそう告げると真っすぐ魔獣に向かって走っていった。
遠くにいた魔獣の影はルルルに気が付き彼の方に向き直る。そして、後ろ足を大きく蹴って跳ねながら向かってきた。
その姿がルルルにも見える距離まで迫ってきた。前方40メートルくらい先に体長1メートル、高さ50センチ位の巨大な兎が突進してくる。
後ろ足は強靭な筋肉で覆われており、跳ねる度に氷の地面が砕ける音がしていた。
(あの足は要注意だな)
兎の走る速さは狼に比べると遅い、接近までには少しの余裕がある。ルルルは動きを止め魔獣の接近に備えて集中した。
念のため、両方の翼には魔力を纏わせナイフも握っている。
兎の魔獣はルルルの前方10メートル位にまで迫ってきた。
ルルルは迫りくる魔獣に向けてナイフを投げた。
直進してくる身体の大きな兎の魔獣、周囲に障害物もなく良い的となった。ナイフは魔獣の前足の付け根に命中した。
「ぐぎゃー」
兎の魔獣は刺さったナイフの痛みにバランスを崩して地に転がった。
その瞬間、岩場に隠れていたロドルとササラが走り寄る。まずはロドルが魔獣の胸に短槍を深く突き刺す。
「お手てカッター!」
間髪入れずササラのお手てカッターがトドメを刺した。
魔獣は動く気配すらなく即死状態だった。
ルルルが魔獣の気を引いてロドルが攻撃してトドメはササラが行う。この陣形がイワシ陣形だった。
陣形の名前はササラが勝手につけた。意味はわからない。
イワシ陣形は魔獣が1体から2体位の時に有効な戦法だ。
今回は作戦通り上手くいった。初戦である2羽には丁度いい経験になっただろう。
「やったぁ、魔獣を倒したぞ!ありがとう、ルルルさんのおかげだ」
「うん、よゆー、よゆー」
ロドルは喜んでいる。当たり前かもしれない。今までは怯えて逃げるだけだった魔獣に立ち向かい撃退したのだ。
ササラはいつも通り余裕そうに振舞っているが少し顔がニヤニヤしているようだった。
(ロドルも、ササラも嬉しそうだな)
しかし、気を緩めるわけには行かなかった。これからは厳しい戦いになるかもしれない。
「さ、今回は最高の出来だった。しかし、毎回簡単にはいかないはずだ。気をひきしめるぞ!」
ルルルは気合を入れ直し3羽は更に先へと進んで行った。
読んでくださって有難うございます。
少しでも気に入っていただけたら★評価していただけると嬉しいです。
続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。
この話から陣形がいくつも出てきますが命名は全てササラ担当です。
魚の名前が主ですが気にしないでください。
きっとお腹が減っていたのだと思います。




