探索
魔力を翼に宿し、水を纏うことができるようになったルルル。
この魔力でできた水を使って試したい技があったのだ。
ルルルが翼で空を切り裂くように素早く横に振る。すると纏った水が彼の前に刃のような弧を描いて現れた。
「できた!想像通りだ」
「兄さん、何いまの!?」
そこには驚いた顔をしたササラが立っていた。
「居たんだ、ササラ。気づかなかったよ、ゴメンね。何か用?」
短槍の素振りと魔力の技の練習で集中していたルルルは、ササラの存在に全く気づいていなかった。
「夕ご飯の時間だから迎えにきたんだよー、そしたら夢中で何かやってるし、ってか今の凄すぎ!ちゃんと教えてよ」
いつものやる気のなさそうな顔と違う、真剣そうなササラの顔を見て、思わずルルルは笑ってしまった。
「ははは……ササラ、驚きすぎだよ。そんな顔もできるんだね……あれは、魔力を自分なりに応用して攻撃技にしてみたんだよ」
ルルルに笑われたササラは、「うう!なんか、むかつくー!」とほほを膨らませた。
そうして二羽は家へ戻っていった。
帰宅の最中にルルルは明日から村周辺を探索して、どんな魔獣が生息しているか調べることを伝えた。
(え、本気なの……?)
ササラが魔獣の駆除をお願いしたのは、半分は冗談、半分は本気で困っていたからだ。
魔獣の被害は深刻だ。だが、魔獣に立ち向かうことのできるペンギンなどいないと思っていからだ。
しかし、今日のルルルを見て思った。
(この兄さん、本当に凄いペンギンなのかも……)
翌日、ルルルは探索に向かうため朝早くに村を出ようとした。
村長の家を出ると、そこには何羽ものペンギンが集まっていた。
「ルルル様、どうかお気をつけて下さい。無理だけはなさらないように……」
昨日、村長には探索に行く話をしていたがひどく心配された。他のペンギン達も同様に心配してくれたのだろう。
彼らは何故か自分を敬ってくれるのだ。
「兄さん、私もついて行こうかー?」
ササラがからかってくる。
「いいよ、邪魔だし」
どうせ、冗談だし適当に返答した。
「うぅぅ……気を付けるんだよぉ……」
いつもだったらケラケラ笑いながら、ムカつく―とか言いそうなササラがいつもより大人しい。
(あれ?心配してくれてるのかな?)
村のペンギン達に見送られながらルルルは探索に向かった。
まずは、陸地に渡り周囲の地形を確認するところからだ。
20分位歩くと陸地が見えて来た。村からそこそこの距離はあるようだ。
氷河の氷と繋がる陸地の海岸はいわゆる磯場という地形だった。
元の世界と異なるのは磯にある荒波に削られた岩の全てが凍り付いている事。
この地域の気温がかなり低いことが伺える光景だ。
ルルルは凍った岩の陰に隠れながら、少しずつ周辺を探索した。
彼はまだイノシシの魔獣との戦いに敗北したことをしっかり覚えている。
ルルルは自分の実力がまだまだ未熟である事を理解していた。だからこそ、慎重に行動した。
しばらくすると断崖に囲まれた盆地のような場所を発見した。崖の上から盆地の様子を探る。
(ん?突き当りの崖の下に洞窟のようなものが見えるぞ)
洞窟にたどり着くためには崖を大きく迂回しなければならない。
「帰りが少し遅くなりそうだけど、仕方ないな」
岩場の斜面をゆっくり下り、崖の反対側へ向かおうとしたその時、
「ウォォォオオオン、ウォォォォオオオン」
遠くで何かの鳴き声がこだまする。
(やばい!魔獣か!)
慎重に行動していたつもりが魔獣に見つかってしまったようだ。
必死になって海岸へ走るルルル。しかし、足場は非常に悪く進む速度は遅い。
「ウォン!ウォン!」
さっきより近くで魔獣の鳴き声が聞こえてきた。一匹ではないようだ。
魔獣との距離が詰まっているのだろう。このままでは追いつかれてしまう。
(後ろから襲われる位なら戦うしかない!)
ルルルは覚悟を決めて振り返った。
視線の先には水色の毛皮を纏った狼の魔獣が7匹ほど、20メートル位先の距離から岩場をものともせずに跳びながら迫ってくる。
瞬時に片方の手に短槍を握りしめ、もう一方の翼には魔力を纏わせる。
狼に背を向けないように、前を向いたまま足場の良い位置に移動する。
ルルルの戦闘の準備は整った。と、同時に狼達も10メートル位の距離まで迫っている。
(さて、どう戦うべきだろうか?流石に数が多い)
ルルルはここまで多くの魔獣と戦う経験はなかった。
一匹ずつに集中すれば、撃破できる自信はある。
だが、多数となるとどうだろうだろうか?心に不安が募る。
(何とかするしかない、獣の習性や行動を読み取るんだ)
今までの戦いでも、ルルルは魔獣の弱点や行動を予測する事で危険を回避することに成功してきた。
今回もそうするしかない、と狼を観察する。
幸い、狼達もルルルを強者と認めたのか安易には襲ってこないようだ。
少しずつ包囲するようにルルルの周辺に散らばって彼を取り囲み始めた。
(完全に囲まれるのは不味いな、早く策を考えないと……)
焦るルルル。しかし、思いついたことがあった。
(これしかない!今がチャンスだ!)
突然、前方へ走り出す。
狼達はルルルの突然の行動に意表を突かれたようだった。
周辺を回り込むように移動していた狼は、驚きにビクッ!と身体を振るわせて判断を遅らせた。
だが、正面にいた狼だけはルルルに真っすぐに狙いを定め、迎え撃とうとする。
その結果、ルルルと正面の狼が一対一で向かい合うこととなった。
ルルルの接近に牙を剝き威嚇しながら備える狼。
短槍を前方に突きだしたまま走り、長いリーチを演出するルルル。
お互いが攻撃の射程距離に入る。
ルルルは走り出した勢いのままに短槍を3回連続で突き出す。
シュッ!シュッ!シュ!
素振りの時と同じように風を切り裂く音が響く。
しかし、狼はその攻撃をジャンプで躱し、ルルルを飛び越え彼の後ろに着地する。
そして、すぐに体制を整えると牙で首元を切り裂こうとルルルの背後から飛び掛かった。
ルルルは振り向くこともせず、急に地面に仰向けになるように倒れる。
自分の上を牙を向きながら飛び越える狼、ルルルは魔力を纏った翼を切り裂くように横に振った。
狼は仕留めたと思った獲物が急にいなくなり焦ったが、真下に彼が倒れている事に気づく。
空中では方向転換はできないが、腹を見せて横になっているルルルを見て勝利を確信していた。
そんな中、狼は突然腹に痛みを感じた。鋭利な爪で引き割かれたように激痛が走った。
そのせいで着地した後の行動ができずその場にうずくまる。
一方、魔力で狼の腹を切り裂いたルルルはすぐに立ち上がっていた。
自分が狙った狼は7匹の中では一回り大きく、おそらくこの集団のボスだろう。
(こいつはしばらく動けないはず……!)
まだ勝利には程遠いのだ。相手は一匹ではない。こいつを倒してもまだ残りがいる。
そう考えたルルルは次の行動を取る。
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